28歳、あの日の僕らに会いに行く 自分の仕事をつくる一歩の踏み出し方

地元に帰りたい。

もっと自由に働けたらいいのに。

好きなことを仕事にできたらいいな。

今の生活や仕事に過不足はないけれど、「もっとこうだったらいいのに」と思うことがあなたにもあるかもしれません。

現在、京都でまちづくりの仕事を行う、東信史さんことまっくすさん、そして京都移住計画の田村篤史も28歳の時、そんな”願い”を抱いていたと振り返ります。

 

「自分の仕事をつくりたい」。

その”願い”を現実にするため2人が選んだのは、京都への移住でした。

自分の仕事をつくると決めたあの日。彼らはどんな思いを抱えて、その一歩を踏み出したのでしょうか。28歳から34歳までの軌跡を対談形式でお届けします。

左:田村、右:まっくすさん

プロフィール

東信文(ひがし・のぶふみ)

有限責任事業組合まちとしごと総合研究所 代表

1985年生まれ。佐賀県出身京都在住。大学卒業後、㈱リクルートにてスクール事業の広報・経営戦略に関する企画営業に従事する。同時に、NPO法人である福岡テンジン大学greenbird等で企画コーディネーターを行う。個人でも、カフェなどの飲食店の個性を活かしたイベント企画・コミュニティ形成を年間70本ほど運営。2013年に転職しきょうとNPOセンターに参画。京都市未来まちづくり100人委員会運営本部祇園祭ごみゼロ大作戦運営事務局をはじめ京都の複数の大学でファシリテーションやコミュニケーション、広報をテーマに講師を務める。2015年4月より現職。現在は、和歌山県有田川町の地方創生事業「有田川という未来」に携わりながらポートランドと連携した住民主体のまちづくりに参加。また、各地を回りスペース運営のアドバイザーやファシリテーションの講師を行いつつ放浪している。

http://machigoto.org/

 

田村篤史(たむら・あつし)

株式会社ツナグム 代表取締役/京都移住計画 代表

1984年 京都生まれ。立命館大学在学中、APUへ交換留学、NPO出資のカフェ経営に携わる。その後休学しPRや企画を行うベンチャーにて経験を積み、卒業後は海外放浪の末、東京の人材系企業に就職。会社員の傍らシェアハウス運営なども行う。2012年4月に退職し京都へUターン。「京都移住計画」を中心に、町家活用や商店街活性といった地域に関わる仕事や、キャリア支援のNPO fullbloomの設立、大学のキャリアデザイン授業の外部講師、企業の採用支援・組織活性などを行う。

http://tunagum.com/

リクルートからNPO、そして起業

田村:京都に戻って来た時期も似ていて活動領域も近しいけれど、二人でじっくり話すことって、あまりなかったかも。

まっくす:そうかもしれないね。よろしくお願いします!

田村:まっくすは、もともとリクルートで働いていたよね。どういうきっかけで京都に来たんだっけ?

まっくす:長年働いた福岡から大阪に異動になって、どこで誰と何して働くかを考えるようになり、次の仕事先を探すようになって。まちづくりを仕事にできたらと転職先を探していたら、職場のメンバーから「きょうとNPOセンター」を紹介されたのが最初かな。当時は京都が好きとか、縁とかもなく。観光や修学旅行で行ったことがあるくらいだったな。

それでまずは職場見学に行って、ついでに福岡でスペース運営をしてたのでコワーキング巡りもしていたら、たまたまタナカユウヤさん(※京都移住計画のメンバー)のイベントに参加して。話すと共通の友人がたくさんいることがわかり、ユウヤさんから「京都来たら?」って言われて(笑)なんだか面白そうだなと思ってノリで京都に移住したんだよね。

田村:なぜまちづくりを仕事にしたいと思ったの?

まっくす:福岡のリクルートで6年働いていたうち、後半の3年は街全体をキャンパスに見立てて学び合う「福岡テンジン大学」の運営に関わっていて。街の人たちとプロジェクトをしたりするのが楽しかったから、町に関わることを仕事にできたらいいなというのがベースになっているかな。

田村:きょうとNPOセンター」では、1年半くらい働いたんだっけ?

まっくす:うん、そうだね。公共施設の管理運営をした後、京都市が主催する「京都市未来まちづくり100人委員会」の運営メンバーとしてプログラム運営を担当して。

田村:そこから2015年に独立して「まちとしごと総合研究所」を設立するわけだけど、何が決め手だった?

まっくす:「きょうとNPOセンター」はNPOの支援をするための団体だけど、地域や企業や大学、社会福祉法人など多様な団体からも相談が多くなって。センターとしても別組織を作りたいねと考えていたみたいで。当時のNPOのメンバーと一緒に「まちとしごと総合研究所」を作って、地域という文脈で新しいビジネスモデルを作るシンクタンクを目指そうと動き始めたんだよね。

田村:そうだったんだ。僕が個人事業から株式会社化したのも2015年、起業したのも同時期だったね。

町に点在する人・もの・ことを繋ぐ

田村:独立して3年経った今、どんな仕事に取り組んでいる?

まっくす:「京都市未来まちづくり100人委員会」の仕事から派生して、2016年から京都市が取り組む「”みんなごと”のまちづくり推進事業」という京都がもっと住みやすくなるまちづくりの取り組みを募集し、実現するためのプログラムを運営している。他には大学や企業研修でファシリテーションを年30回ほど教えることもあるし、大学の講師として学生のマイプロジェクトづくりを応援することもあるね。

田村:まっくすが関わって生まれたプロジェクトってどれくらいあるんだろう……!

まっくす:京都市の事業の他にも大学の授業で生まれるプロジェクトもあるから、続いているかは別にして100個は超えてるかな。

田村:まっくすプロジェクト博覧会ができそう!たくさんのプロジェクトが生まれる瞬間に立ち会ってきたわけだけど、印象的なプロジェクトはある?

まっくす:一番大きかったのは「祇園祭りごみゼロ大作戦」だね。2013年の宵山(※)では60トンもの燃えるごみが出ていて。ゴミを減らすためにリユース食器を導入したいと、環境NGO「地域環境デザイン研究所エコトーン」の方からご相談いただいて実施したプロジェクトで、翌年34トンまで減量させることができた。

それまで様々なNPOやまちづくりに関わる人とのネットワークを築いたり、個々のプロジェクトをサポートしたりはしていたんだけど、町全体で何かすることはなくバラバラの動きだったんだよね。でも祇園祭は京都のシンボリックな行事だから、NPO、企業、飲食店など今まで繋がらなかった人たちが繋がって町が動くという経験ができて。エコに関心がある人もない人も、NPOやまちづくりに関心がある人もない人も、業界や立場を超えて繋がる醍醐味があったね。

※宵山・・・祇園祭本祭の前日(前夜)に行われる祭りのこと

まっくす:最近では京都で90年続く八百屋「西喜商店」さんがブログで「食材廃棄をどうにかしたい」とブログで書かれていてたことをきっかけに、「廃棄野菜を使いきるフードロス対策」プロジェクトをスタートして。代表の近藤貴馬さんの課題感をヒアリングして整理するところから、プロジェクト設計まで伴走した。

みんな気になっているんだけど誰も手を挙げていなかったり、集まる機会がなかったりする課題に対して、今まで繋がっていた人たちが一緒に協力しあえる機会をつくれたことがよかったな。

”課題”と認識されていないみんなの”願い”を応援したい

田村:6年間で100を超えるプロジェクトを支援してきたわけだけど、まっくすはどういう思いでやっているの?

まっくす:みんながやりたいなと思うことを、もう一歩進められるようにサポートしたくて。

街に関わることや関心ある物事に携わる入り口づくりとして、様々なイベントをやっていて。そこでNPO職員、経営者、デザイナー、学生など多様な人との出会いが生まれ、課題解決するために必要な人材を集めておく人材バンクのような位置付けになっていて。

いざ課題解決にチャレンジしたい、事業として進めていきたいという人が出てきた時に、僕のネットワークを活かして必要な人を繋げられるような動きをしている感じかな。

田村:具体的に解決したい課題を持った人とその実現に協力したい人を繋ぐ役割を果たしているんだね。

「まちづくりを仕事にできたら」と初めはぼんやりしていた理想が、「誰かのやりたい気持ちを応援したい」と具体化するまで、まっくすの中でどんな変化があったのか気になるんだけど、どうだった?

まっくす:リクルートで広告営業をしていた時は、「御社の課題を解決するために、こんな企画・コンテンツがあるので導入しませんか?」という動きをしていたけれど、一個の会社で課題解決するよりも、イベント企画ができる人、デザインができる人などいろんな人たちが繋がって課題にアプローチする方が、届けたい人にリーチしやすいなと思っていて。まちづくり分野は、他の組織に頼らずみんなが自立してやっているイメージだったから、それを仕事の軸にできたらいいなと思った。

まっくす:まちづくりを仕事にしていくうちに、みんなが集まって課題を解決するにはどう設計したらいいか、どう問いかけたらいいかということに関心が移っていって。振り向いてもらうためには、みんながやりたいなと思っていることやチャレンジしたいなということを引き出して、動き出す準備が必要だと気づいて。今は伴走型のサポートを中心にしている。

田村:うんうん。出来上がったサービスや商品を提案するよりも、課題を皆でどうやって解決するかを共に考えながら、必要な人やものやことを繋いでいく感じだよね。

まっくす:色々なプロジェクトに関わってたくさんイベントをしているんだけど、根っこには価値があるのに多くの人が無価値だと思っていことや、やりたい気持ちはあるのにうまくいっていないプロジェクトを応援したいという気持ちがあって。これからは特に、課題とは認識されていないようなことにチャレンジしたい人を応援していきたいと思っている。

誤解を恐れずに言うと、「子どもの居場所が大事」とか「高齢者の支援が必要」とかってみんながわかっていてすでにチャレンジしている人がいるから、彼らのことは公的施設が支援したらいいやと。僕はもっと自分の身近にあること、例えば「夫婦で働くこと」とか「家族のお金のこと」とか、社会的な課題というよりも自分の生活に密着しすぎて逆に声を上げずらいようなことを、解決していけるように支援できたら。

田村:まっくすの言う”課題”は、”願い”に近いのかなと聞いていて思った。課題ってみんなが認識しているものだけど、まっくすの言う”課題”は「こうだったらいいな」なのかなって。「親の介護と両立が難しくて働けない」のは”課題”、「週3日で働きたい」は”願い”みたいな。

僕も京都移住計画を、「京都に帰りたい」という”願い”から始めたから。地方の人口減少とか東京の待機児童問題とか課題からアプローチすることもできるけど、自分の「こうしたい」を大切にしたいと思って。

まっくす:”課題”と”願い”は表裏一体なんだろうなと思う。若い時って「やりたいことがない」と悩む人も多いだろうし。みんなの「○○したい」を見つけるお手伝いができたらいいよね。

自分の仕事をつくる”願い”の見つけ方

田村:まっくすは今やりたいことを仕事にしているわけだけど、「○○したい」という”願い”をどうやって見つけたの?

まっくす:原点は社会人2年目の時に、「まっくすカフェ」を始めたことかな。会社と家を往復してホカ弁を食ベて生きていたんだけど、もっと外に出たいと思ってカフェに行きだして。そこで月1回自分でイベントを企画して、場をつくるようになったんだよね。

好きなことをやっているだけなのに人が繋がって、繋がった人どうしからまた新しいことが生まれていく経験をして。それがすごく嬉しくて。自分の好きなことややりたいことで集まりをつくるといい循環が生まれることに気づいたんだよね。それから自分でも50くらいプロジェクトを立ち上げてるかな。

まっくすさんの原点となった「まっくすカフェ」

田村:そうした自分の嬉しかった状態を仕事でやっているのが今ってことか。僕も似たような経験があって。社会人2年目の時に、生き方や働き方を考えたり、したいことを実験できるシェアハウスしていたんだけど、その活動は今に繋がっているなとまっくすの話を聞いていて思った。

当時は会社員という”ライスワーク”の横にある”ライフワーク”だったんだけど、今は”ライフワーク”で飯を食えている感じがあるね。

まっくす:”ライスワーク”と”ライフワーク”って言ってたね。こうやって振り返ると、28歳からやっていることは変わらないんだね。

会社を飛び出す。その経験もあなたの武器

田村:28歳ってキャリアの中で一つの節目だよね。東京の転職エージェントで働いていた時に僕は「30歳という数字は転職市場で見られる数字だけど、30歳まではどうとでもなる」とキャリア面談に来る方に伝えていて。

起業したりフリーランスで働いたりする経験をして、もしうまくいかなかったり自分に合わないなと思ったりしても大丈夫。経験したことがある業界なら数年ブランクがあっても戻れるし、会社の外で得たことは会社に戻った後も自分の糧になる。働き方は生きたい人生を送るための手段だしね。

ただ30歳になると結婚したり子供が生まれたりする人も増えて。背負うものがあることは挑戦を諦めることの言い訳にもなるから、身軽なうちに挑戦するのがいいんじゃないかと思っている。

28歳からの数年間は、自分の仕事をつくる為のモラトリアム期間じゃないかな。僕も28歳の時に会社を辞めて、最初は週3日の契約社員で中途採用の人事担当をしつつ、京都移住計画などの地域に関わる仕事を始めたから。

まっくす:2017年に変化の多い30代をどう生きるか?をテーマに、「ライフデザイントーク」というイベントをしたんだけど。ゲストの多くが、「会社でできることは28歳までにある程度やってきて、クライアントは変わるけど仕事のベースは変わらない。だから30歳になる前に自分のやりたいことでチャレンジして、数年後にはスキルの掛け算で新しいことができるようになった」と言っていたのが印象的だった。だから今の会社でできることはやったなと思っている人は、28歳くらいで一歩踏み出してみるのもいいんじゃないかな。

田村:うん、自分の28歳を振り返ってみてもそう思うな。人材関係で培った採用支援や転職支援というスキルを、ローカルというフィールドに掛け算している感じがあるし。

まっくす:会社で働いている時も、僕は会社の外でいろんな人と繋がって、イベントなど何かしらの仕掛けをしながら動くことを大事にできたらいいなと思っていて。それが今は仕事として実現できた。28歳の時、会社を飛び出したからこそ今があるんだよね。

田村:今28歳くらいの人の中には、6年前の僕たちと同じような願いを持っている人がいるんじゃないかな。そういう人たちのお手伝いもこれからはできたらいいよね。

まっくす:そうだね。僕にとっての「まっくすカフェ」や田村さんにとってのシェアハウスみたいにすでに自分で何かをしている人は、あともう一歩踏み込めたら、ライフワークとライスワークを一致させることができるんじゃないかな。

田村:うん。僕らが28歳だった頃のような動きを今している人とは相性良さそう。人に関わることや、誰かを応援するような場づくりや仕組みづくりが好きで、それを仕事にしたいと思っている人がいたらぜひ声をかけてほしいな。

人と人を繋げることや、誰かのやりたい気持ちを応援することが好きならば、一度2人に会いに行きませんか。「自分の仕事をつくりたい」というあなたの”願い”をきっと後押ししてくれるはずです。

<お知らせ>

7月21日(土)東京から京都に移り住むことはもちろん、転職や独立、起業や事業継承といった自分の人生を生きる為の選択を、仲間と共に考えていくコミュニティ<十人十話>。昨年に引き続き、二期メンバーの募集に向けた体感型説明会を開催します。

7月21日(土)上記イベントと同日ツナグムとまちしごと総合研究所共催の「京都の小さな会社達の合同説明会」を開催します!僕たちの仕事に興味をお持ちの方はぜひお越しください。(※7/17更新:応募者多数につき締め切りました)

★7月21日(土)の各種説明会への参加が叶わない方は、8月から始まる半年間のプログラムの詳細ページをご覧頂き、エントリー下さい。プログラム内容にご不安がある方はその旨をお知らせ頂ければ、オンラインで事前に簡単な面談も実施致します。

 

記事の作成に関わってくれたクリエイター