2022.01.24

料理を通じて、京都の食文化を楽しむ。河原町御池『美食倶楽部』

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京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。

2020年11月、河原町御池にある京都信用金庫のビル「QUESTION(クエスチョン)」の8階にコミュニティキッチン「DAIDOKORO(ダイドコロ)」がオープンしました。それから約1年の間に、京都北部丹後地域と協働で開催した「丹後FES」や、食にまつわる勉強会や産地ツアーなどいくつものプロジェクトが立ち上がり、食を通じて事業者の連携や地域の活性化に取り組んでいます。

食を巡る第16弾は、株式会社Q’s(以下Q’s)が運営する「美食倶楽部@QUESTION」をご紹介します。美食倶楽部は「京都のまちにもうひとつの台所を」というコンセプトのもと、会員制のコミュニティキッチン「DAIDOKORO」で活動しています。これからの時代に、食を通じて私たちができることとは。取締役の近藤貴馬さんとマネージャーの前原祐作さんにお話を伺いました。

左:取締役の近藤さん、右:マネージャーの前原さん

京都のまちにもうひとつの台所を

美食倶楽部は、スペインのバスク地方にある会員制のキッチンスペース「ソシエダ(和訳:美食倶楽部)」がモデルになっています。そこでは100年以上前から、人々が夜な夜な集まり、自分たちで料理をして食事を楽しむ文化がありました。

「僕たちの美食倶楽部は、いわば“公民館”のような場所を目指しています。会員とその友達が自由に集まり、シェフとお店で出会うのとは違った形で出会える。通常、飲食店であればシェフとお客さんという関係ですが、美食倶楽部ではその境界を飛び越えて一緒に料理を楽しみます。普段の役割を脱ぎ捨てた関係性が生まれれば良いなと思っています」(前原さん)

「料理したい人は料理して、飲みたい人は飲む。みんなの調理している雰囲気を見て、楽しむのもよし。材料を持ってきた人が、必ずしもそれを調理する必要もない。一時的に役割は存在するけど、入れ替わってもいい。それがこの美食倶楽部での在り方なんです」(近藤さん)

一対一の関係で出会える場所ではあるけれど、みんなが同じことをしなければならないということではない。自由に味わい、楽しめる空間であることが美食倶楽部の良さかもしれません。

あたたかい食卓がある地域社会をつくる

美食倶楽部では、食を通した自由な関係性を大切にしていますが、「単にコミュニティづくりを目的としているわけではない」と前原さんは言います。

「集まった人たちと、一緒に食べたりつくったり。シンプルに楽しい体験が、魅力的な食材や地域の食文化について知るきっかけになることを目指しています。そういったアプローチをすることで、より多くの人に地域の魅力を感じてもらえる気がしています。食を楽しむことで、自然にコミュニティや地域とのつながりができていく。それが僕らの目指す形です」

Q’sのメンバーの方々

京都大学の学生と美食倶楽部のマネージャーの二足のわらじを履く前原さん、本業は八百屋を営む近藤さん以外にも、美食倶楽部のチームメンバーは多彩な顔ぶれです。メンバー各々の活躍するフィールドや、得意なアプローチによって、より多くの人が巻きこまれていく。そういった自然に発生するつながりによって輪が広がっていくのも、美食倶楽部ならではの関係性の築き方なのかもしれません。

「食を楽しむ」ための多彩なアプローチ

そうした「食を楽しむ」という多様なアプローチ方法の1つに「使えるギャラリー」があります。「株式会社和える(あえる)」とのコラボレーションによりはじまった器のギャラリーで、清水焼の窯元と京都の伝統を次世代につなぐことを目的として生まれました。なんと、見るだけでなく清水焼の器を自分が作った料理の盛り付けに使うことができるのだそう。

「めっちゃかわいいですね!」と、あまり工芸品に馴染みのない方にも楽しんで使ってもらえているそうで、工芸品に対する理解を一歩後押しできたような気がして嬉しかったと前原さんは言います。

京都の食文化の未来とは

美食倶楽部に関わるお二人は、京都の食にまつわる課題や未来をどのように考えているのでしょうか?

普段八百屋を営む近藤さんが感じるのは、「消費者と生産者の距離が遠い」という課題です。

一方、その課題を解決するために、京都は絶好の地であるとも考えています。

「日本の中では京都が一番やりやすいんじゃないかな。まちがコンパクトで人が集まりやすく、若者が多い。消費者も生産者も一定数いる。そんな京都だからこそ、あと一歩、消費者が生産者のことを知る場所があれば良いなと思っています。美食倶楽部のサービスを通じて、農家が育てた野菜、酪農家が育てた牛乳、漁師が捕った魚など、食材の魅力をしっかりと消費者に届けたいと考えています」(近藤さん)

生産者の顔が見える食材を自ら調理できるコミュニティキッチンは、その価値や可能性を最大に感じることのできる、数少ない場所になりうる可能性を秘めています。

みんなでワイワイしながら料理をする

京都で暮らし働き、京都の文化を愛する前原さんはこんな思いを熱く語ってくれました。

「店に入ったときの香りや、コップ一つひとつにまでこだわるシェフがいる一方で、変わったことは何もしない、いつもと変わらない日常をずっと究め続ける喫茶店もあります。『そんなところまで?』と驚いてしまうくらい、こだわりを持っている方々に出会うことができる、それが京都の魅力ですね」

世の中では、メニューをQRコードで読み込んで注文したら食べたいものが席に届くというように、食にも利便性を求める流れがありますが、美食倶楽部は非効率で非日常な体験をすることも重要だと感じています。

「みんなで食材を選んで、ワイワイしながらつくって、一緒に食べる。効率は悪いかもしれないけど、そういう営みが文化をつくるのだと思うんです。僕自身もこの場を通して、もっと京都の食文化を体験したいし、多くの人に感じて欲しいですね」

コップ一つひとつの特性について学ぶ前原さん

「未来の大衆食フェス」を開催!

そんなお二人が企画運営に関わるイベント「未来の大衆食フェス」が2022年1月24日から2週間、開催される予定です(本イベントは終了しました)。このイベントは、未来のために”食”にできることはまだあるんじゃないか ーー。そんな問いから、生まれました。

京都の名店が「未来の旨いメシ」をテーマに作った限定ランチや、100種類のコップから好きなものを2つ選んで違いを楽しむ体験型カフェなど、盛りだくさんの内容になっています。

「まずはおいしく食べて、楽しんでほしい。その後に、なんでこんなにおいしいんだろうというところまで考えを深めていただけると嬉しいですね」(前原さん)

美食倶楽部がスタートしてから約1年。新型コロナウイルスによって思うように稼働できない日々がつづきました。だから今年こそは「料理を通じて人々が出会い、全く新しい豊かな関係性を築く面を増やしていきたい」と二人は語ります。

料理を通じて、京都の食文化を楽しむ空間を創り続ける美食倶楽部に、これからも目が離せません。

執筆:山際 聡一郎

お知らせ

▼未来の大衆食FES in 京都(本イベントは終了しました)
未来の大衆食を体感する2週間!限定ランチイベントや体験型カフェ企画など。みんながよく知る名店が登場します。限定ランチは完全予約制なので、この機会にぜひご賞味ください。
※コロナウイルス感染状況にて変更が生じる場合がございます。

期間:2022年1月24日(月)~2月5日(土)
場所:QUESTION(京都信用金庫)
詳細:大衆食FES Webサイト

▼美食倶楽部
Webサイト:美食倶楽部

▼DAIDOKORO
コミュニティキッチンDAIDOKOROでできることはこちら

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