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京都には、季節ごとの行事やならわし、風物詩がたくさん存在しています。このコラムでは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」にあわせて、京都移住計画に関わる人たちの等身大の京都暮らしをお伝えします。
きっかけは、家の更新だった。
当時京都市内に住んでいた私は、家の更新に迫られていた。2022年の夏の終わり。コロナが落ち着いて、観光客が京都に戻りつつあったころ。人混みが苦手な私は、新しい住処を探していた。
いくつか理由はあるけれど、亀岡に移住する大きな決め手となったのは、自然の豊かさだった。京都駅から電車で揺られること約30分。京都市内の喧騒とは対照的に、亀岡には穏やかでのびのびとした大地が広がっている。話題のパンケーキや大きな本屋さんはないけれど、大気中の酸素を思いっきり肺の中に閉じ込めて、季節の匂いを全身で感じることができるのだ。
亀岡に移住して1年半ほど。春、夏、秋、冬と移り変わる亀岡の四季を一通り味わい、そしてまた春が来た。桜の花びらをめいっぱい身にまとった木々は、地面にその花びらを落として。少しずつ緑色の葉っぱを身につけ始める。太陽の光をたっぷり浴びて、これからやってくる夏が待ちきれんとばかりに、すくすくと育っていく。
あっちは薄い緑色、こっちは濃い緑色……山々を形づくる木々の色合いはさまざまで、そのコントラストが美しい。まるで抹茶のように色づく景色を見て、つくづく思う。緑色の種類はこんなにもあったのか、と。
亀岡に移住してから、ご縁があって「保津川下り」の受付で働いている。亀岡を流れる保津川から嵐山までの、全長約16キロにも及ぶ舟下り。日本最古の川下りとして知られ、国内外から多くの観光客が訪れる。ユーモア溢れる船頭さんたちの話を聞くために、わざわざ遠くから来る方もいるのだとか。
最近では、お客さんの多くが外国人だ。台湾や韓国、中国などの近隣諸国に始まり、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツにフランス、アメリカ、カナダ……挙げたらキリのないほど、さまざまな国籍の人々が訪れている。亀岡にいながら、さながら外国のよう。
私は、この場所で彼らと話すことが好きだ。英語の勉強になるのはもちろんだが、彼らは日本を心から楽しんでいる。「保津川下りが恋しくて、再びタイからやってきた」「日本は美しくて飽きない」「今回の旅行で日本を訪れるのは3回目なんだ。もちろんまた来るよ」など、日本人の私に嬉しい言葉をかけてくれる。普段忘れてしまう日本の魅力を、外国人の彼らから教えてもらっている気がする。
夏のように暑すぎず、春のように肌寒くない今の季節に、保津川下りは心地よい。繁忙期ほど人でごった返すことはなく、ゆったりと、のんびりと。風に吹かれてやってくる自然の香りを吸い込んだり、大空を仰ぎ見てみたり。川の流れに身を任せながら泳ぐ鴨の親子や亀、魚など、自然で暮らす動物たちとの出会いも保津川下りの魅力の一つ。
亀岡初心者の私。きっとこれからも、亀岡に好きな場所が増えていくのだろうな。そんなことを考えながら、今日も保津川のほとりにあるベンチで、休憩時間を過ごしている。
執筆:むなかたりょうこ
編集:藤原 朋
むなかたりょうこ
会津若松市出身。転勤族で、北海道・新潟・埼玉・宮城を転々とし、現在は亀岡市在住。お酒好きが転じて、前職はお酒全般を扱う会社に就職。退職後は、フリーのライターに。人と話すのが好きで、取材も行う。食べることと飲むことが好き。