2023.06.16

木桶で仕込む白味噌は、日本で唯一。亀岡「片山商店」

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京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。

食を巡る第22弾は、亀岡で味噌の製造・販売を行う「片山商店」。

豊かな湧き水や自然環境に恵まれ、冬には11時ごろまで太陽が隠れている日もある「霧のまち」としての側面がある亀岡で、湿潤な気候を活かした味噌づくりを行っています。

創業当初から木桶での味噌づくりにこだわり、特に木桶で仕込んだ白味噌は希少。そこで、京都の食卓に寄り添う味噌を造り続けている片山商店の二代目・片山宏司さんにお話を伺いました。

お客様の要望に応えて、数十種類のラインアップに

創業1968年。亀岡の大動脈・9号線沿いに店舗を構える片山商店は、店舗販売のほか京都の老舗料亭などにも味噌を卸しています。

「できるだけ添加物を使用せず、孫にも食べさせられるような安心安全な味噌を目指しています。そんな昔ながらの味わいを楽しんでもらいたいですね。全てはお客様に喜んでもらうため。おいしいと思ってもらうために、自分たちは味噌を造っています」

右が二代目・片山宏司氏、左が先代の片山秋雄氏

そう話す片山さんが手がける味噌は、お客様の要望を加えていくうちにどんどん派生していき、現在では数十種類を超えるラインアップに。どんなときでもお客様の声に耳を傾け、さまざまなタイプの味噌を造り続けてきました。

店舗で購入できるのは食卓で使いやすいスタンダードな味噌10種類ほど。特に人気を集めるのは麹味噌や白味噌、丹波の黒豆を使用した黒豆味噌で、亀岡市内のスーパーマツモトや道の駅「ガレリアかめおか」・「京丹波 味夢の里」でも販売しています。

大小20以上の木桶で味噌を仕込む

片山商店が手がける味噌は木桶で手づくり。木桶で仕込むことで、木桶に住みついている菌が味噌の発酵を手助けし、よりまろやかで芳醇な味わいに仕上がります。

贅沢に真ん中だけ!おいしさがつまったトロ味噌

さまざまな種類の味噌を手がける片山商店ですが、特筆するべきは白味噌。というのも、片山商店で仕込む白味噌の多くが、日本で唯一木桶で造られているのです。

京料理に欠かせない白味噌。その歴史は古く、平安時代に誕生したといわれています。都として栄えた京都で、貴重な米を贅沢に使用して造られ、主に貴族たちの間で食されてきました。

赤味噌や淡色味噌と比べると色が白っぽく、口当たりがまろやかで、甘みのある味わいが特徴です。京都や大阪、和歌山などの関西地方ではお正月に食べるお雑煮に使用されています。

片山商店は創業当初から白味噌を手がけていましたが、当時は白味噌の製造は一年に一度、お正月のときだけ。しかし、時代の流れとともに白味噌は日本全国へと広まり、一年を通して製造されるようになりました。

ただ、木桶で白味噌を仕込むには難しいポイントがあるといいます。

「木桶で白味噌を仕込むとどうしても木桶に触れている箇所がくすんでしまうので、トロ味噌と呼ばれる真ん中の部分だけを抽出して販売しています」

片山さんの話す通り、販売されている白味噌はどれも淡い白色。白味噌として店頭に並ぶのは木桶で仕込んだごく一部で、そのほかは店舗で西京漬用の味噌として販売されています。

実はたくさんある白味噌のおすすめ活用法

関西に住んでいる人でも、お雑煮のほかに白味噌をどのように使ったらいいのかわからない方も多いはず。そこで片山商店のスタッフの方に白味噌のおすすめ活用法を伺いました。

グリーンカレーや麻婆豆腐など料理の隠し味に

ココナッツミルクの代わりに白味噌を加える

白味噌は料理の隠し味に加えるとまろやかな味わいに仕上がります。片山商店がおすすめするのはタイ料理でお馴染みのグリーンカレーや、中華の定番である麻婆豆腐に白味噌をちょい足し。

白味噌のまろやかさと甘みがグリーンカレーや麻婆豆腐の辛味を緩和し、やや和風の料理に大変身!辛さが苦手という方にもおすすめの一品です。

クラッカーに白味噌を載せておつまみに

自宅でも簡単にアレンジでき、白味噌の味わいを堪能できるのがこちら。白味噌をそのままクラッカーにのせて味わうのはもちろん、刻んだクルミを入れたりブラックペッパーと混ぜ合わせたりしても◎。ちょっとしたおつまみとして重宝します。

木桶で仕込む白味噌を、世界に。

木桶で仕込む白味噌は日本で唯一片山商店だけ。つまり、世界でここだけ。片山さんはこれからの展望について教えてくれました。

「世界でうちしか造っていない木桶の白味噌をもっと色々な人たちに知ってほしい。海外にどんどん発信して、日本の伝統食品・白味噌が世界で使われたら嬉しいですね」

私たちの生活に欠かせない味噌。特に白味噌は京都の人々にとって欠かせません。平安時代から続く白味噌をこれからも守り続けていくために。木桶で仕込む日本で唯一の白味噌をもっと世界の人々に知ってもらうために。これからも片山商店の歩みは続いていきます。

編集:藤原朋
執筆:むなかたりょうこ

CHECK OUT

私の中で発酵食品ブームが訪れた際に、片山商店の木桶味噌の存在を知りました。しかも、日本で唯一木桶で白味噌を仕込んでいるなんて!「これは行くしかない」と思ったことがきっかけで、今回の取材に至りました。白味噌はもちろん、麹味噌や黒豆味噌も優しい味がして大変おいしいです。亀岡にお立ち寄りの際には、ぜひ購入してみてください!

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