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京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。
食を巡る第19弾は「MANDARACHA 曼荼羅茶」を紹介します。創業者のニコラウ・アレクサンダーさんはフランス出身。日本各地を周って厳選したお茶を通して、素敵な時間と空間を提供しています。
「フランス人が提供するお茶?」
京都・清水五条駅から徒歩5分の場所に、2020年に開業した「MANDARACHA- 曼荼羅茶」。創業者のニコラウさんは「『フランス人がお茶?』とまず皆さんびっくりされます。この意外性によって徐々に口コミが広がっていきました」と笑顔で語ります。
さらに面白いのは、デザートのペアリングというフランスのスタイルを取り入れていることです。例えば、ローヴィーガンケーキはフレッシュなベリーの酸味が、特に緑茶に合うように、フルーツシャーベットは緑茶、ほうじ茶の豆乳アイスクリームは紅茶とペアリングを考えられています。また、すべてのデザートはヴィーガンで、日本の食材が使われています。
「ティーバッグやペットボトルではない本当のお茶は、フレッシュで美味しく飲みやすいため、デザートとのペアリングも面白いものです。お店にこうしたオリジナリティがあることはすごく大切です」
一般的なお茶のパッケージは、生産地などの詳しい情報がわかりづらいものがあります。しかし、曼荼羅茶で販売しているお茶のパッケージデザインは、生産地などの情報が簡単にわかるようになっています。
お茶はありのままの自分でいられるもの
2000年にフランスを出て、海外で仕事を始めたニコラウさん。日本には2011年から住み始め、2019年まで飲料メーカーに勤務。京都には当時の職場の関係で2014年から住んでいます。
「サラリーマンの頃から心がけているのは、失敗を気にせず、イノベーションを起こしつづけること。お茶とデザートのペアリングや、独自のパッケージデザインなど、お店をする上でもイノベーションを大切にしています」
ニコラウさんにとって元々趣味の1つだったというお茶。飲料メーカーのエンジニアとして飲料や食品を取り扱っており、興味を持っていたものの、お茶に関して知らないことのほうが多かったといいます。
その1つがお茶の生産や製造にあるたくさんのプロセス。品種、場所、土、栽培スタイルなどによって違うお茶になることを知って驚いたそうです。
「私は最初、紅茶・緑茶・プーアル茶は違う植物だと思っていたんです。でも実際は同じ植物で、製法が違うだけ。そのことを知って、お茶はこんなに面白いものなんだと、勉強を始めました」
お茶は日本では800〜1000年、中国では2000年以上の歴史があり、伝統のあるものです。しかし最近は、ティーバッグやペットボトルで気軽に飲めるようになりました。ニコラウさんは「正しいお茶の飲み方や注ぎ方を知っている人は少ないですが、これらには生活スタイルや文化が表れているんです。その部分に価値があると考えています」と話します。
曼荼羅茶では、心配事を店の外に置いてきて、家でもバルでもない、ここだけの休憩ができる場所を作ろうと心がけているのだそう。だからここにいると、まるでお寺にいるような気持ちになり、時間が止まったように感じるのです。
「人がお茶を飲む理由は、健康、栄養、時間です。中でも時間が一番重要で、お茶は大切な時間を過ごすためのコミュニケーションツールなんです。昔から日本では、大事な話をするときには茶室でお茶を点てていました。他の飲み物で考えても、コーヒーやジュースにはこのようなセレモニーはありません。お茶を用いたコミュニケーションは建前を作る必要がなく、最初から本音で語ることを促してくれます」
今回、お茶をいただきながらインタビューして、まさにその効果を実感しました。
日本に対して利他的でいる
ニコラウさんは、2004,5年頃に3週間ほど日本に旅行に来た時に、初めて京都を訪れ、その時感じた京都の街の特別なエナジーを覚えているといいます。「特に龍安寺の庭園をみたときの感動は今でも覚えています。4月だったので桜が咲いており、本当にきれいでした」と目を輝かせます。
これから京都に移住しようと考える外国の方に向けて、ニコラウさんはこう語ります。
「一番大事なことは日本や日本に住んでいる人たちに何かしてあげるという考えです。これができる、あれがしたいとかを考えると思いますが、まずは貢献しようとすることが大事です」
日本や日本人に対してニコラウさんが持っている利他の心が伝わってきます。また、「京都はクローズドな街なので、友達を作るのは難しいこともあります」と話すニコラウさんですが、祇園祭に毎年参加して、京都のコミュニティを感じていると写真と共に語ってくれました。
新型コロナウイルスの影響で100%の営業ができない、そんな中でもお店に音楽家を招いてお茶と共に音楽を楽しむイベントの開催は反響があったそうで、京都のブランドとコラボも提案されているとのこと。
今後挑戦してみたいことはなんでしょうか。
「この場所を本店として、小さい規模で他の場所でもお店をしてみたいですね。お茶を伝えられる場所を増やしたいです。個人的には、オリジナルのブランド茶も作ってみたいです。先日のテレビ出演をした際、放送のすぐ後に『高齢になって使っていない茶畑があるのでどうですか』というご連絡をいただいたので、今度現地に見に行きたいと思っています」
最後に読者の皆さんにニコラウさんからメッセージをいただきました。
「日本の皆さんは自分たちの歴史と文化を忘れないでください。京都はすごくエナジーを感じます。生きていることを感じられる特別な場所です。それを存分に感じながら誇りを持ってください。店の前にも掲げていますが、『Lighthouse For Hope and Eternity』をコンセプトに営業をしています。日本の素晴らしい歴史と文化を本物のお茶を通じて感じてほしい、曼荼羅茶で自分だけの時間を過ごしていただけたら嬉しいです。皆さんがいらっしゃるのを待っています」
執筆:かいふ とうい
編集:藤原 朋
曼荼羅茶HP https://ja.mandaracha.com/
instagram https://www.instagram.com/kyoto_mandaracha