2023.04.03

地域と人に寄り添う。まちの図書館を運営する不動産屋さん「Roomie」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

東山の山々を横目に見ながら、風情ある今熊野商店街を歩いていく。焼き物の町として栄えたこの地は、当時の雰囲気が今も残っています。途中、後白河法皇によって創建された新熊野神社も鎮座していて、奥ゆかしい雰囲気も感じます。

商店街の途中、横道の路地に入っていったところにあるのが、今回取材した「Roomie(ルーミー)」です。

2021年の12月、私設図書館を併設した不動産事務所として、小原亜紗子さんが設立しました。

小原さんが、「欲しいまちの形をともに考える、まちづくり&不動産屋さん」として、地域の人からも愛されるような場づくりを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「roommate」から生まれた「Roomie」

「京都がちょうど良すぎて、出たことないんですけど」と話しはじめた小原さん。伏見区に生まれ、学生時代から今に至るまでずっと京都で生活してきました。

大学卒業後は、実家を離れ、シェアハウスで1人暮らしを始めたそう。あえて京都市内で1人暮らしを始めた理由については、「そろそろ独り立ちしといたほうがいいかな」という思い付きからだったそうですが、「親には言いづらいような将来のことを、お酒を飲みながら熱く語れるルームメイトとの関係性が心地よかったですね」と言います。

この経験がのちに、単なる不動産屋とお客さんという関係ではなく、ルームメイトみたいな関係性を大切にする「Roomie」のコンセプトに繋がることになります。

もともと陶芸工房だった空き家をリノベーションした「Roomie」は、一階に不動産事務所を構え、カウンターや受付がなく、気軽に訪れやすい雰囲気になっています。

従来の不動産スタイルとは違い、お客さんとの気軽な関係性を重視し、日々物件探しのお手伝いをしている「Roomie」ですが、どのような思いで立ち上げられたのでしょうか。

私らしいキャリアに向けて

小原さんが不動産業に出会ったきっかけは、大学卒業後、最初の転職で不動産会社の事務職に就いたこと。もともと人と関わることが好きだったこともあり、事務の仕事にやや物足りなさを感じた小原さんは、空き時間を見つけて宅建の勉強を始めました。

その後、見事合格。しかし、当時の職場では取得した資格を生かせる場はありませんでした。

「いつか、宅建の資格を生かして不動産業をしよう」

そんな思いを胸の片隅にそっとしまい転職しますが、結婚・妊娠・出産・育児と様々な転機が重なったこともあり、仕事と生活のバランスを取ることすら難しくなりました。

そんな折に、京都移住計画と出会います。

現在は、不定期で京都移住計画の不動産紹介をしているほか、まちに携わる仲間として、
京都移住計画のメンバーとさまざまな接点がある小原さん。

「会社員を辞めて、フリーランスでやっていくか迷っていたときに、京都移住計画で不動産担当のメンバーを募集しているのを見つけました。あの出会いが今に繋がっているんです」と小原さん。

その後「Roomie」という屋号で2019年にフリーランスになり、京都移住計画代表の田村篤史の​​紹介でDIYのワークショップを手がける「KUMIKI PROJECT」に関わるようにもなりました。

Roomieの事務所も「KUMIKI PROJECT」によってリノベーションされ、その時の写真が飾られています。

京都移住計画やKUMIPROJECTなど、様々な縁で、フリーランス生活もある程度順調に進んできた頃、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行。

案件そのものの減少や保育園の休園等で受けていた仕事を断らざるを得ない状況となってしまいます。

そういった背景から「受け仕事に頼りっぱなしではなく、自分の仕事を作ろう」と感じた小原さんは、長年温めてきた目標である不動産業を始めることにしました。

不動産屋のもう一つの顔、ルーミー図書館

小原さんには不動産業のほかにもう一つ手がけている事業があります。それが「東山区まちじゅう図書館プロジェクト」の企画・運営です。

事務所の二階には図書館が作られ、地域の人たちがふらっと立ち寄ったり、子どもたちが勉強したりできる場になっています。

このプロジェクトを始めたきっかけは、近所のおばあちゃんやママ友と始めた絵本の貸し借りだったそう。

「コロナ禍の外出自粛期間に、子どもと家で絵本を読む時間が多くなりました。家にある絵本を読み尽くしてしまったので、近所の方やママ友同士で絵本を交換するようになったんです」

ふわっと始まった本を通した交流に、「閉鎖的な毎日の中、気持ちの面でも助かった」という小原さんは、この関係性を地域で広めたいと考えました。

そうして生まれた「東山区まちじゅう図書館プロジェクト」は、家の前に小さな図書箱を置いて、図書の貸し借りをするという、まちの図書館コミュニティに。

その旗艦店として「Roomie」の二階を「ルーミー図書館」にしました。

ルーミー図書館の壁面本棚を作る際は、KUMIKIPROJECTのDIYワークショップとして広く参加者を募り、近隣に住む総勢55名もの参加があったそう。

また、図書館プロジェクトの活動中に出会ったママさんたちとは、「ひがしやマママ」というチームを結成し、東山区内でのプチマルシェやイベントの開催を手掛けています。

「自分の暮らしと仕事が、じわじわとグラデーションを描いて交わりだしてきた」と話す小原さん。図書館事業を通して、忘れかけていた人々の交流を、連れ戻してきているようです。

最後に、Roomieの今後についてこのように話してくれました。

「Roomieがまちづくりの起点になる場として認知されるようになったら嬉しいです。また、学生さんにとっても開かれた場所、何かチャレンジできる場としてどんどん活用してほしいです。1日館長をしながら落語会や読書会、個展を開くなど、自由に使ってもらえたら」

心休まる場所として、東山での新たな挑戦の場として。

今日もRoomieは、東山を優しく包み込む存在であり続けています。

編集:藤原朋
執筆:山際聡一郎


『Roomie』
住所:京都府京都市東山区今熊野椥ノ森町1-10
TEL:075-203-0748
営業時間:9:30〜17:00(営業日はSNSでご確認ください)
ホームページ:http://room-ie.com/
Instagram:https://www.instagram.com/higashiyama.machitosho1/

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