2015.08.05

京都暮らし術(基礎編)京都人の気質と長ーいお付き合い

暮らしを旅する「京都暮らし術【基礎編】」を迎えて。
 

先日こちらのコラムでお知らせしていた京都の旅行会社ビューティフルツアーの京都の美を追求し学ぶ旅を提案する「まなびとたび」。
 

その新たな企画として7月から京都移住計画も協力させていただき、京都の暮らしを学んで旅する「京都暮らし術」(全3回)がスタート。(詳細は「ちゃんと知って、好きになる「京都くらし術」ツアーはじまります」をご覧下さい。)

今回は、7月25日に開催した「京都暮らし術【基礎編】」をレポートします。会場は、上京区西陣。「京都桐壷庵」という歴史ある京町家に、様々な想いを抱えた方が集まっていました。

コラム① 

今回の案内人としてお迎えしたのが、上京区に居住300年余という鳴橋家を受け継がれている鳴橋明美さん。祗園祭の山鉾の房紐や組紐をつくられている伝統工芸士のご主人と一緒に、ご身も組紐でアクセサリーなどを手がける一方、上京区で地域情報のWEBサイトの取材担当として京都の文化を伝えるといった地域活動などもされています。

コラム② 

生粋の京都人の心を動かした出逢い

鳴橋さんが今回の案内人をはじめ、地元の人と移住されてきた人(外の人)をつなげる活動をはじめられたのは、取材を通じて知った物事や人々との出逢いがきっかけだったそう。 

取材をしていくうちに、京都の伝統あるものを「ちゃんと残していかないといけない」という気持ちが強くなっていきます。さらには、関わる市民レポーターのほとんどが、移住者(外の人)であることに気づき、彼らが一生懸命に京都のことを知ろうとする姿をみて、自分たち(京都の人々・中の人)の生活を伝えて「もっと歩み寄らなくてはいけない」という想いにさせられたのだそうです。
 

今回の会場となった「京都桐壺庵」は元々鳴橋さんの生家でしたが、現在は住居としてではなく、「京都の文化を伝える場」にされたとのこと。京都の歴史や昔の面影や生活風習を色濃く残すの一つである上京区で生まれ育ったまさに”生粋の京都人”である鳴橋さん。どんなお話が聞けるのか、スタッフも興味津々で迎えた第1回目。鳴橋さんの自己紹介につづき4つのキーワードを元に、それぞれ自己紹介へ。

コラム③

①出身地
②今住んでいるところ
③京都の良いイメージ
④京都の悪いイメージ
 

外からみる京都、中からみる京都
 

今回の参加された方としては、関東から移住された方も多く、東日本大震災がきっかけだったり、転勤、老後の暮らしを考えてなど、きっかけは本当に様々。現在京都には住んでいないけれどこれから住む予定、週末だけ京都で過ごしているというような方もいらっしゃいました。
 

「京都の良いイメージ」としてあげられたのは、観光名所がたくさんあり、京都の街並をただ歩いているだけでも楽しめるところ、交通の便がよく街もコンパクトで動きやすい、祗園祭などのお祭りや地域の行事が盛んで面白いところがたくさんある、自然もあり人が都会的である。といった意見が聞けました。 

しかし「住む」となると、周りの人から京都人の噂を聞くことも多く、4つ目の「京都の悪いイメージ」につながっていくようでした。本音と建前(裏表)が気になったり、言われる事を素直に受け取るべきなのか、とにかく掴みどころがなく接し方に戸惑うこと、馴染むまでに時間がかかってしまう、プライドが高い人が多く閉鎖的。といったネガティブなイメージもあれば、実際に住み始めた実感としての悩みも少なくないよう。
 

参加者の方々のほとんどが感じ、噂にもよく聞く京都人の独特な気質。京都の人はなかなか本音がみえない、プライドが高いなどと言われるのはどうしてなのか、本当は何を考えているのか、移住者にとって特に気になるところ。鳴橋さんのお話によるとそれには、京都の歴史と深〜い関係があるということでした。

コラム④
 

生き残るための歴史が育んだ京都人の気質
 

まずはさかのぼること、平安京の時代。その頃の大陸からの影響など様々な観点から、まさに「京都人の高いプライド」が生まれ、根付いた理由を知ることができました。

コラム⑤ 
(鳴橋家に残されていた大正時代はじめ頃の京都の地図も登場する場面も) 

コラム⑥
 

応仁の乱以降、常に命がけの選択を強いられる時代を生きた京都人が、さらには安土・桃山時代、江戸時代、織田信長や豊臣秀吉などの権力者から学んだこととはなんだったのか、私たちがよく耳にしたり、参加者の皆さんの多くが感じているという、まさに京都人の「独特な気質」が語られました。
 

京都の人がただ単にいけずとか、難しい人が多いということではなく、京都人にとって曖昧な表現や裏表があることは、その時代時代を生き抜くための処世術だったのかもしれない。そして、それらは1000年以上の歴史の積み重ねの上にあるものだから、ちょっとやそっとでは変わらないし、変えられないものだといいます。京都人の気質は歴史と共に根深いものだということ。そう考えるとなんだか少し理解できるような気がしませんか。 

コラム⑦ 

少し余談かもしれませんが、ご当地検定で有名な「京都検定」。実はそのこども版があり、小学生の京都の歴史に対する受け止め方の解説がありました。京都人の「京都愛」が育まれているということが分かります。京都の歴史と人々の性格との深〜い関係、これを知って理解することが、京都の地元の方々と上手に付き合っていく近道かもしれません。

住所と京ことばから学ぶ京都
 

京都の独特なもののひとつは、住所表示の仕方としての通りの名前の言い方。暮らすにあたって避けることのできない日常表現ですが、実は京都だと同じ場所の伝え方が何通りも存在するということ。これがまたややこしくて複雑で、迷われる方も多いはず。

コラム⑧ 

例えば、Aの場所はどちらの表示が正しいでしょう?

①千本丸太町上ル
②丸太町千本上ル

正解は①

まずその基本的ににその場所がある通り名を先に示します。
その次の「上ル」は北へ、「下ル」は南へという意味。 

これは京都の地形が北へ行くにつれて高くなっていることから北へいくのは坂を上がる、南へ行くのは下がるというような解釈でいわれています。南北は、上ル、下ル。東西は、西入ル、東入ルという表示をします。
 

参加者の方もおっしゃっていましたが、京都に移住してきて住民登録する際、どの通りを基準にするかで何通りも住所の表現がある為、いくつかの候補から選べたりするのです。本来京都以外の地域だとお隣さんとは番地が違うだけというのが普通ですが、京都だとお隣さんなのに全く住所表示が違うなんてことがあったりもします。

京ことばテストもみんなでやってみました。ちなみに告知のパンフレットにもクイズで取り上げていた「サンライズ」とは、、、、「メロンパン」のことでした。

コラム⑨

みんな必死に考え中。

コラム⑩
 

年中行事でつながるご近所付き合い
 

実際に住むとなると気になるのが、ご近所さんとのお付き合いや町内会の当番など。どんな当番があるのか、どんな役員があるのか、町内会ごとに色々と違いはあるそうですが、特にどの地域にもあるのが掃除当番。役員や係を見るだけでも、その多さに驚きますが、まずはこれらを知っておくことが大事。地域の役を経験した人曰く、やり方が分からなくて、困ってしまったエピソードがありましたが、鳴橋さんの心強いアドバイスをお聞きすることができました。

コラム⑪ 

また年中行事についても春夏秋冬、様々な京都らしい習慣がありますが、やはり京都の一大行事、祗園祭の話題へ。たまたま家の近くが祗園祭の山鉾の地区であった為、色々と手伝いにいくことで地域の方とも仲良くなることができた。という方もおられ、とてもいい経験となったそうです。

しかし、毎年たくさんの人で賑わう華やかな祇園祭であるものの、引き継ぐ人たちがいないという深刻な問題を抱えていることも知ったのだそう。その方以外にも山鉾がある地区に住んでいるけれど、外から来た者が突然手伝えるものなのか?と考えてしまい、参加できずにいるという方もいました。
 

鳴橋さんがおっしゃるには、地域全体が高齢化しており、本当はもっと若い世代の方に手伝って欲しいという気持ちはあるはず。決して受け入れたくないのではなく、その状況をうまく伝えることができずに、地域の年配の方が人手不足ながらも続けている状況だそう。もしやりたいという気持ちがあれば、自分から少し踏み込んでいくと、とても喜ばれることが多いそう。
 

そういう担い手が不足しているからこそ、ご近所さんの輪の中に入ることが難しい場合は、町内会や地域のイベントは、地元の人の中に入り込みやすくなるチャンス。参加することでご近所さんのことを知ることもでき、仲良くなれるきっかけになるのでは。

コラム⑫

行事の呼び方でよく間違いがあると言われる「五山送り火」。よく耳にする「大文字焼き」という言い方は、実は間違いなので京都に住むなら気をつけた方が良いこと。呼び方に関わらずこうした年中行事などの知識があれば、京都人と話した時の印象も違い、ご近所さんとの話も弾みやすいそう。年中行事と地域との関係、これも独特なものであることが分かりました。
 

もちろん複雑に考えすぎる必要はありませんが、せっかく京都に住むなら、もしくは住み始めると決めたなら、地域としっかり向き合うことが大切。「京都の文化に触れずに暮らすこともできるけれど、それでは寂しいし勿体ない」と鳴橋さん。歴史ある文化を多くもつ京都を心から楽しんで暮らしていきたいものです。

普段聞きたくても聞けなかった京都人の声や、地元の人にしか分からない考え方や想いなど、移住検討中の方から質問されても、うまく応えれる自信がないものもあったので、移住計画メンバーも身を乗り出して聞いてしまっていました。

ひとつ知ることで、またひとつ楽しみが増え、踏みこめば踏み込むほど、奥深い魅力に出逢える京都。まだまだ知りたいことがいっぱいです。京都の人々、歴史、地域についてなどを学ぶことができた今回の【基礎編】、ここからさらに掘り下げて京都の日常について知っていこうというのが次回の【応用編】です。

用編では「裏と表と地蔵盆」をテーマに京都暮らしの中で誰もが失敗する可能性がある、家にお客さんとして伺った時の対応や返答の仕方、ご近所さんとの付き合い方等、京都の日常を取り上げながら学んでいきます。またこの日は地蔵盆当日ということもあり、鳴橋さんと一緒に町内を歩いたり、地蔵盆の雰囲気を感じて頂く予定です。

京都暮らしをもっと自分らしく楽しむ為にできることを一緒に考えていきましょう。

8月22日(土)「京都暮らし術【応用編】〜裏と表と地蔵盆〜」

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また、翌日23日(日)は京都移住茶論が開催予定ですので、合わせてお楽しみに下さい。
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