2018.03.22

京都・洛西で進展する団地再生 vol.1。子育て世代にフィットする暮らしがそこに

京都移住または京都市内での住み替えを検討中のみなさん、「団地」に住むのはいかがですか?そう勧められて、二つ返事で飛びつく人が多くないことはわかっています。
ですが、昔ながらの団地のイメージを持ったまま敬遠しているのだとしたら、はっきり言って、もったいない! 昭和生まれの団地は今、旧来のよさを保ちつつ、古い・狭い・住みにくいといったマイナスイメージを払拭するほどの「再生」を遂げているんです。


その実例として今回ご紹介するのは、京都市西京区の洛西ニュータウン(以下、洛西NT)内にある洛西竹の里団地。UR(都市再生機構)が管理・運営する築30年以上のファミリー向け賃貸住宅で、近年は子育て世代を想定したリノベーション住戸や割引制度を多数設けている注目の団地です。
現地では募集住戸の内覧も随時行われていますが、住まいたるもの、実際に暮らしてみなければ本当の良し悪しはわからないものです。そこで、同団地のリノベーション住戸に入居中のご家族をたずね、入居の経緯や住み心地、子育てのしやすさなど、団地住まいのリアルなお話をたっぷりと聞かせていただきました。

夫の“地元愛”が団地移住の原動力

洛西エリアの物件に詳しいUR職員の佐々木茜さんの案内で向かった先は、2016年から洛西竹の里団地のリノベーション住戸で暮らしているという金藤さんのお宅。この時は金藤明斉さん・裕美さん夫妻とお子さんの3人暮らしでしたが、桜の咲く頃には2人目の子どもをもうけ、4人家族になる予定です。

金藤さんと裕美さんはもともと京都の大学在学中に知り合い、卒業後は揃って関東で就職。そのまま仕事や住まいを変えずに結婚する道もありましたが、二人の思いは一致していました。“結婚したら京都で暮らそう”。

京都は二人が学生時代を過ごした思い出のまちであるだけでなく、金藤さんの生まれ故郷でもあります。岡山県出身の裕美さんも、実家との距離感や子育て環境を考慮すると「京都のほうが断然いい」と感じ、移住の提案を受け入れました。

ちなみに金藤さんの実家は、まさに今、一家が住んでいる洛西竹の里団地内の隣の棟。つまり、金藤さんは洛西竹の里団地で育ち、関東での生活を経て、再び同団地に舞い戻ったUターン組なのです。Uターン後、実家近くに居を構える人は少なくありませんが、団地以外の形態を選ぶ余地はあったはずです。さまざまな選択肢があるなかで団地に行き着いた理由をたずねました。



「一番の理由は、僕が子どもの頃に所属し、大学生になってからもコーチとして関わっていた地元の少年サッカークラブを支えたかったから。年々子どもの数が減り、チームの活気がなくなってきているという話を聞いていたので、京都に戻ったらコーチに復帰して、もう一度チームを盛り上げたいと思っていたんです。団地に住めば、気軽に練習場に通えるし、練習以外の時も近所の子どもたちを見守ることができる。楽しい子ども時代を過ごさせてもらった地元への恩返しの意味も込めて、団地を選びました」

子育て世帯対象の割引制度をフル活用

また、「URの割引制度も団地を選んだ決め手の一つでした」と金藤さん。URの賃貸住宅には、入居者の年齢や家族構成などに応じて月々の賃料が減額されるプランが複数あり、ご実家の近くにお住まいの金藤さんは「近居割」という割引制度を活用することにしました。

「うちは子どもがまだ小さくて共働きが難しいので、一定期間、家賃を抑えられるのは非常にありがたいです。実際に団地に住むかどうかは別として、どんな割引が受けられるかだけでも、一度チェックしてみるほうがいいですよ」
と、ここでURの佐々木さんからこんなアドバイスをいただきました。

「洛西竹の里団地の家賃相場は7〜10万程度ですが、割引を使えば最大20%オフに抑えることができます。割引制度の概要はホームページやパンフレットなどでご覧になれますが、どのプランが適しているのか迷われることもあるかと思います。そのような場合は、洛西NT内のUR洛西サービスセンターまでお越しください。ハウジングアドバイザーがお客様と直接お話して、最適なプランをご提案いたします」

入居を決定づけた、リノベーション住戸とは?

地元愛とお得感、さらにもう一点、金藤さんの団地暮らしを後押ししたものがあります。それは、間取りも設備も一新された子育て世代向けのリノベーション住戸。
URと京都女子大学による洛西NT団地リノベーションプロジェクトから生まれたもので、2013年のプロジェクト開始以来、毎年住戸の募集を行っています。そんなリノベーション住戸のモデルルームを初めて見た時、金藤さんは大変な衝撃を受けたそうです。



「僕の実家もそうですが、昔の団地って部屋と部屋がバチっと区切られていて、開放感とか一体感があまりないでしょう。それを一から見直すことで、こんなにも明るく開放的になるのかとびっくりしました」

金藤さん夫妻は3種類のモデルルームを見て回り、「整える暮らし」というコンセプトのもと、旧3LDKを2LDK +ウォークインクローゼットにつくり変えた現在の住まいを選びました。「子どもに目が行き届く広めのリビングと、ゆとりのある収納スペース」に魅力を感じたそうです。
入居から約2年、実際の住み心地はどうなのでしょうか?特に、住まいのメインユーザーとも言える裕美さんの感想が気になります。



女性目線でつくられているだけあって、家事や育児がしやすいように細かな配慮が行き届いているなと感じますね。ベビーカーを畳まずに置いておける広々とした玄関や、外から見えにくいように工夫された収納スペースなど、入居前から気に入っていたポイントのほかに、家事動線の無駄の無さなど後々気付いたよさもあります。たとえば、玄関ホールと直結したキッチンドアのそばにパントリーや冷蔵庫置き場があり、買い物後の片付けがしやすいようになっていたり、そういう小さな気遣いが住み心地のよさにつながっています」
以上のコメントからもわかる通り、「満足度はかなり高め」。そのうえで、「実はちょっと不満もあって……」と、暮らしながら気づいた短所も明かしてくれました。

「お風呂の浴槽の高さがもう少し低ければなぁと思いますね。特に今は妊娠中ということもあって、足を高く揚げて入るのが結構しんどくて。高さがあるせいなのか、沸かしたお湯が冷めやすいような気もします」
裕美さんの指摘を受けて、「やはりそうですか」と佐々木さん。「実はお風呂周りはご不満の出やすいところで、私たちも課題として認識しています。構造上、難しい面もありますが、今後も改善に向けて努力してまいります」とのことでした。

ほかにも、エレベーターが設置されていない棟があるなど、団地にはリノベーションでは解決しがたい問題が残っているのも事実です。入居を検討する際には、暮らしていく上で不都合なところがないか、あった場合は許容できるかどうかを考え、最終的には実際に住戸を内覧しながら検討すべきでしょう。

洛西NTは暮らしの「便利」が詰まったまち

さて、団地の中もさることながら、団地の外側、つまり周辺環境も「住みやすさ」を左右する大事なポイントといえます。まずアクセス面について、四条烏丸のオフィスまで通勤している金藤さんにうかがいました。

「通勤時間はドアtoドアで40分くらい。京都市の西のはずれなので1時間以上かかると思われがちですが、阪急洛西口駅まで行けるバスの本数が多いので、意外とスピーディなんですよ。洛西口駅を少し行くとJR桂川駅があり、JR沿線に職場がある人にも好都合だと思います」
洛西NTはバス便が豊富で、JRと阪急の2線利用が可能なため、京都や大阪市内に出るのにも不便を感じないようです。

一方で「わが家も含めて、休日は車を使っている家が多いです」と金藤さん。「必須とまで言いませんが、子どもや高齢者のいる家庭なら、あったほうが便利」ということです。なお、洛西NT付近には国道9号線や京都縦貫道といった主要な道路が走っており、市街地や遠方へのアクセスも比較的スムーズです。



続いて裕美さんにたずねたのは、買い物をはじめとした日常生活の利便性。商業施設や金融機関、行政機関などは生活圏内に揃っているのでしょうか?

「団地から歩いて5分くらいのところにラクセーヌという大型商業施設がありますし、その近くには西京区役所の支所や郵便局、銀行なども揃っているので、買い物ついでに用事を済ませています。保育園や小学校も徒歩10分圏内にあって、団地の子はだいたいそこへ通っています。小児科や歯医者さんなどの医療機関もひと通りあるので、何かあったらどうしよう!みたいな不安はないですね」

子育てのしやすさは京都一⁉︎

京都の市街地と比べても遜色のない機能を備えたまちでありながら、「自然がたくさんあるのがうれしい」と裕美さん。外で遊ぶのが大好きだというお子さんを連れて、近くの川辺を散歩したり、どんぐりを拾ったり……自然とふれあうひと時を大切にしています。そして、日々の食卓にも自然の恵みを取り入れているそう。



「洛西といえば特産のタケノコや柿で有名ですが、他にもいろんな野菜を育てている農家さんが多くて、新鮮な野菜が手に入りやすいんですよ。私はもっぱら毎週木曜と日曜の午前中に郵便局の近くで催される朝市を愛用しています」

豊かな自然環境に加えて、裕美さんの満足度を高めているのが「子育て支援の充実ぶり」です。「近くの児童館や地域の集会所などで子育てセミナーがあったり、乳幼児が集えるイベントがあったりと、市内でも子育て支援の取り組みがさかんな地域だと思います」と、洛西NTの子育て環境を高く評価。
イベントの日程など子育てに関する情報は、西京区役所洛西支所に置かれた告知チラシや、京都市が無料提供する「子育てはぐくみアプリ」で入手しているそうです。

「夫の両親以外、知り合いがほとんどいない地域での子育てにはじめは不安もありましたが、イベントなどへ足を運ぶうちに解消されていきました。子どももお友達ができて楽しそうにしているので、できるだけ連れて行ってあげたいですね」

そう話す裕美さんの隣で金藤さんは、「子育てのしやすさは本当に申し分ないです。ただ、もうちょっと地域の大人と子どもが触れ合える場があればいいんだけどなぁ」とぽつり。聞けば、自治会の高齢化や子どもの減少により、昔に比べて団地内の交流が深まりにくい状況にあるそうです。

「洛西竹の里団地ではURさんや京女さんのご支援で、『たけのこカフェ』という集いや夏祭りなどが行われていますが、もう少し時間や頻度を増やせないものかと。要望を出すだけじゃなくて、同世代の人を巻き込みながら自分もできるだけ協力していきたいと思っています」

将来を見据えた、それぞれの団地暮らし

子どもと大人が集う機会を増やすことで、地元・竹の里をさらに元気にしていこうとやる気を見せる金藤さん。ということは、この先もずっと団地で暮らし続けるおつもりなのでしょうか。今後の暮らしについてたずねると、少し意外な答えが返ってきました。

「将来的には団地を離れる可能性もあります。子どもが2人になりますし、その子たちが大きくなるにつれて、今の2LDKでは手狭になると思うので。引っ越すといっても洛西方面ですね、絶対。住みやすいし、何と言っても僕の地元ですから(笑)」



洛西竹の里団地には、金藤さんのように5年から10年のスパンで住み替える世帯もあれば、より長く住み続ける世帯もあり、家族構成やライフプランによって展開はさまざまです。
「なかには結婚したてで将来プランが定まっていない方もいらっしゃると思います。入居後すぐのお暮らしだけでなく、5年後10年後もイメージできるように将来の住み替えも含めたご提案をさせていただきます」と佐々木さん。相談の段階から入居後まで、手厚いサポートが受けられるのもUR物件の強みといえるでしょう。

都市の利便性と豊かな自然が同居する、子育て世代にやさしいまちと団地。金藤さんの暮らしぶりを通じて、洛西NTおよび団地のイメージは少なからず変わったのではないでしょうか? 新たな生活の舞台として「アリ」だと感じたら、ぜひ一度現地へ足を運んでみてください。もちろん、お問い合わせも歓迎です。


京都・洛西で進展する団地再生は全3回連載です。
こちらもお読みください。
京都・洛西で進展する団地再生 vol.2

執筆:岸本千佳
写真:もろこし

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