2023.08.08

UIターンや二拠点生活。丹後ちりめんの織元でのプロボノが、新しい生き方への一歩に

これまでの経験やスキルを活かしながら、京都ローカルと関わるきっかけを作りたい。近い将来のUIターンを見据えて、地域で新しい仕事や働き方を見つけたい。

そんな人たちに向けて、2020年度より実施している「京都ローカルワークステイ」。京都府各地でユニークな取り組みをしている企業やプロジェクトの魅力を知り、副業・兼業・プロボノなど京都ローカルとの新たな関わり方を見つけ、深めていく伴走型のプログラムです。現在は2023年度の参加者を募集しています。

2022年度のプログラム受入企業と参加者の皆さんに、プログラムの振り返りやそれぞれの生き方・働き方の変化について、お話を伺いました。

地域に開かれた場を目指して

今回訪れたのは、京都府北部の与謝野町で伝統織物・丹後ちりめんの製造を手がける丹菱(たんりょう)株式会社です。丹菱は工場内の空きスペースを利用して、2021年にファクトリーショップ&交流スペース「MARUTAN」を、2022年には天橋立を一望できるデッキテラス「あまのはしだてテラス」をオープンし、地域に開かれた工場を目指しています。

丹菱では、緯糸の糊付けから撚糸に機織りまですべての工程を自社で行う
ファクトリーショップ&交流スペース「MARUTAN」

代表取締役の糸井宏輔(いとい・こうすけ)さんは、新たに設けた場についてこう語ります。

糸井さん

機屋としての従来の業務だけでなく、これからは積極的に地域に開く取り組みをしていきたいという思いがあり、交流スペースとしてこの場所を作りました。その後、予約制でのスペース利用や工場見学の受け入れなどは行っていましたが、もっと多くの人に来てもらうためには、どのようにこの場所を活用していったら良いのかという課題を感じていました。

糸井さん

ローカルワークステイの運営メンバーとして携わっている株式会社ローカルフラッグの高橋友樹(たかはし・ともき)さんは、MARUTANのプレオープンイベントの企画・運営に関わった縁で、糸井さんに声を掛けたといいます。

高橋さん

「MARUTANの使い方に悩んでいる」という話は、糸井さんからずっと聞いていましたし、この場がもっと活用されていくといいなと個人的にも思っていました。そこで、ローカルワークステイのプログラムとして、地域外から来た人たちと一緒に活用方法を考えてみませんかと提案したんです。ここは景観がとても良いし、丹後ちりめんは丹後を代表する産業ですから、ローカルワークステイのプログラムにもしっかりマッチすると思いました。

高橋さん

こうして、交流スペースのさらなる活用を目指してスタートした丹菱のプログラムには、関東から4人の女性が参加しました。参加者の皆さんは、どのような思いを持ってローカルワークステイにエントリーしたのでしょうか。参加した松坂千亜記(まつざか ちあき)さん、DJ Mihoさんにもお話を伺います。

松坂さん

東京での便利な暮らしに慣れてしまって、全く自然に触れていなかったので、一度生活を改めてみようかなと思い、移住を考えるようになりました。生まれは京都市内なんですけど、丹後のことはあまりよく知らなくて。東京でローカルワークステイのイベントに参加した時に、自然豊かな丹後に興味を持って、プログラムに参加することにしました。

松坂さん

DJ Mihoさん

これまで東京に住んでいたのですが、昨年、別荘かリタイア後の住まいに使う目的で京都市内のマンションを購入しました。でも、現地を見たらすぐに住みたくなり、また、東京でのテレワーク生活に飽きてきたタイミングだったので、京都へのIターンと出社可能な勤務先への転職を考えはじめました。その時、ちょうど京都移住計画の存在を知り、ローカルワークステイにエントリーしました。東京に住んでいた時も、たまに山梨にある友人の畑を手伝うなど、かねてよりローカルに興味がありました。

取材時はオンラインで参加してくれたDJ Mihoさん

プログラム受入企業の中から丹菱を選んだ理由について、2人はこう話します。

松坂さん

東京で丹後のイベントがあった時に、丹後ちりめんの歴史や機織りの様子を紹介する映像が流れていて、織物に興味を持ったのがきっかけです。実は2つの企業に希望を出していて、同じ与謝野町にある砂後建設さんのプログラムに参加することが先に決まっていたんですが、事務局から「丹菱さんにも参加しませんか」と声を掛けていただいて。せっかくの機会だし良いチャンスかなと思い、2つのプログラムに参加することにしました。

DJ Mihoさん

ローカルワークステイのオンライン説明会に参加した時、「あまのはしだてテラス」で地元のDJがイベントをしたとの話を聞いたのがきっかけです。趣味でDJをやっているのですが、都会だと屋外のテラスで音を出せるような環境もなかなかないので、私もぜひここでプレイしてみたいと思いました。

みんなのアイデアを詰め込んだイベントが実現

丹菱のプログラムは、2023年1月に3日間にわたって行われました。ポリエステルやレーヨンといった化合繊を使った丹後ちりめんを手がける丹菱の自社工場だけでなく、正絹を取り扱う他社の工場も見学し、化合繊と正絹の違いを学んだり、丹後ちりめんを使ったつまみ細工のワークショップを行ったりして、丹後ちりめんについて広く知った上で、MARUTANやテラスの活用方法について考えるという内容。最終日には地域住民向けに、プログラム参加者の皆さんがプレゼンテーションを行いました。

プログラム参加時の様子

松坂さん

外から人を呼び込むよりも、まずは与謝野のまちの人たちが元気になれる、みんなが一緒に楽しめる場所にしたいという提案をしました。地域の人たちを巻き込んで、いろんな人の力を借りながらこの場所を活性化していけるような、コミュニケーションを取れる場にしたいと思ったんです。

DJ Mihoさん

私はDJイベントを提案しました。他にも、プログラムを通して丹後ちりめんについてたくさん学んだので、インテリア分野での展開など、製品にまつわるアイデアもいくつかプレゼンしました。

丹菱オリジナルのアパレルブランド「TRIP 1」シリーズ

それぞれの興味や得意分野を生かして考えたさまざまな提案に、地域の方々をはじめ、町長や府会議員の方も耳を傾けたプレゼン発表会。さらに、プログラム修了後も、オンラインでの打合せを何度も重ね、5月にはMARUTANとテラスを使ってイベントが実現しました。

糸井さん

丹菱の目の前にある公園で、毎月第2日曜に行っている阿蘇シーサイドピクニックというイベントがあって、僕も関わっているんです。この日に丹菱でもイベントをすれば、相乗効果が生まれるんじゃないかと考えて、ローカルワークステイの参加者の皆さんのアイデアを盛り込んだイベントを開催することにしました。

5月のイベントでは、DJ MihoさんによるDJや松坂さんの星読みなど、さまざまな催しを用意。残念ながら雨予報だったため、阿蘇シーサイドピクニックは中止になりましたが、公園でキッチンカーを出す予定だった飲食店に声を掛け、MARUTAN内で出店してもらうなど、地域の人たちとも協力し合いながら無事イベントを終えることができたそうです。

雨予報だったものの当日は見事に晴れ、屋内外で楽しめるイベントになった

糸井さん

4人の参加者の方たちがそれぞれの個性を生かせるチームになっていたので、すごい縁だなと思いますね。皆さんと打ち合わせを重ねる中で、僕自身もMARUTANをこれからどうしていきたいのか改めて考えるきっかけになりましたし、それを人に伝えるために言語化する経験を通して、多くの気づきを得ることができました。

松坂さん

4人が自然に一致団結していましたよね。プロボノという関わり方だったからこそ、仕事とはまた違った形でのチームワークができていた気がします。

このイベントの収益を使って、与謝野町に絵本を寄贈する計画も進んでいるとのこと。また、糸井さんはMARUTANで飲食店営業許可を取得し、ドリンクなどを提供できるように準備を進めているといいます。

糸井さん

参加者の皆さんが積極的に関わってくれましたし、今回のプログラム受け入れにチャレンジして本当に良かったです。MARUTANの活用についてはこれからも試行錯誤しながら、継続的に取り組んでいきたいですね。

それぞれに合った形で、ゆるやかな関わりが続いていく

ローカルワークステイを経て、参加者の皆さんの生き方や働き方に対する考えにはどのような変化があったのでしょうか。

松坂さん

プログラムやイベント準備などで与謝野町を訪れるうちに、このまちで自然と共生して暮らしていきたいと思うようになりました。何度も足を運んで地域の人たちとも仲良くなれたし、この土地が自分に合うかどうかじっくり考えられたのも良かったですね。ローカルワークステイに参加したことで、1人で移住先を探すよりも、もっと地域と密になれた気がします。今は移住に向けて、住まいや仕事を探しているところです。

DJ Mihoさん

私は今年6月から京都市内に完全移住し、京都の学校法人で働いています。丹後とはこれからもゆるくつながっていきたいですね。農業に関心があるので、普段は市内で暮らし、休日は丹後のようなローカルの地域で農業をする二拠点生活ができたらいいなと思っています。

「あまのはしだてテラス」からの眺め。阿蘇シーサイドパークの向こうに阿蘇海が広がる

さらに今後について尋ねると、2人は楽しそうにこう語ります。

松坂さん

私は移住を決めましたが、他の参加者の皆さんもそれぞれの形で関わりながら、ゆるやかに接点を持ち続けられたらいいなと思います。せっかく縁があって集まった4人なので、またみんなで何かできたらいいですね。個人的にはMARUTANで、昼は子どもたちが集まる寺子屋、夜はバーをしたいというアイデアもあるんです(笑)。

DJ Mihoさん

MARUTANのイベントで5年ぶりくらいにDJをして、自分はやっぱり音楽が好きなんだなと再認識したので、これからDJ活動を頑張りたいですね。実は勤務先の学校法人の学園祭でDJイベントをする計画も進んでいるんです。ローカルワークステイをきっかけに、趣味と仕事が交わっていきそうです。

DJイベントが行われた「あまのはしだてテラス」

2人の言葉を聞いて、ローカルワークステイ事務局の高橋さんは、最後にこんなふうに語ってくれました。

高橋さん

ローカルワークステイは、参加者の方たちが関係性を築いていって、自ら関わりしろに飛び込んでいくようなプログラムです。こうして事例が形になったのはすごく大きいことだなと思いますし、これからもどんどん広げていきたいですね。

UIターンや二拠点生活。副業・兼業・プロボノ。ローカルとの関わり方にはさまざまな形があります。自分がどんな生き方・働き方をかなえていきたいのかを考え、一歩踏み出してみたい人にとってのきっかけとなり、そっと背中を押してくれるようなプログラムがローカルワークステイなのでしょう。

2023年度も引き続きさまざまな企業がプログラムを準備しています。ローカルワークステイを通して、ローカルとの関わりを作り、これからの生き方・働き方を考えてみませんか。

編集:北川由依
執筆:藤原朋
撮影:清水泰人

お知らせ

京都ローカルワークステイ2023プログラム参加者募集します!

京都ローカルで働く・暮らす・関わりの種を見つけるプログラムとして、6社の企業とともに、新たな関わり方を見つけ、深めていく伴走型のプログラムです。

京都ローカルと関わるきっかけを見つけたい、経験やスキルを活かしながら地域で働く・暮らす選択肢を考えている、将来のUIターンを見据えて地域で仕事をつくりたい方におすすめです。説明会やイベントもありますので、まずはお気軽にご参加ください。

詳細:プログラムページ

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