移住者がポジティブとネガティブの両面から素直な意見を語る連載「移住者が語る京都生活のリアル」。第2回目のテーマは、「京都での物件購入」です。
移住先である京都で、なぜ賃貸ではなく購入に踏み切ったのか。そして、物件を買ったことで暮らしにどのような変化があったのか。
経験者3人に聞いていくと、移住先で家を買うことは、暮らしの拠点を決めるだけでなく、地域との関わり方を変えるきっかけにもなることが見えてきました。
【この記事でわかること】
・なぜ移住先の京都で「家を買う」決断をしたのか
・東京と京都、家探しで見るべきポイントの違い
・物件購入で変わった、地域との関わり方
京都に移住し、物件購入に至った理由
——まずは京都に移住したきっかけを教えてください。
坂井
僕は大学時代を京都で過ごし、出身地の東京に就職で戻り、5年前に京都へ再び戻ってきました。子どもができたことをきっかけに、鴨川や大文字山といった自然に近い環境で子育てをしたいと思ったのが一番の理由ですね。京都はパートナーの地元でもあるので、戻りやすい状況でもあったと思います。

高野
僕は東京生まれですが、最初の就職先で大阪に配属されてから東京と関西を行き来していて。約8年前に初めて京都に住み、一度東京に戻ったものの、2024年11月に再び京都へ戻ってきました。
移住のきっかけは、坂井さんと同じく子どもが生まれたことです。加えて、妻が焼き菓子などを作る人で、将来はお店をやりたいと結婚前から聞いていたことも大きいですね。妻は滋賀出身なので、子育てのサポートをお願いするなら近くに住んだ方がいいし、文化やお店の家賃を考えても京都の方がいいなと。

——お二人とも子育てがきっかけで京都に移住したんですね。物件を購入したのも子育てが理由なのでしょうか?
坂井
そうですね。戻ってからは2LDKの賃貸物件に住んでいましたが、下の子が生まれて家族が増えましたし、子ども部屋を作るなら3LDK以上はいるなと。でも、賃貸だと一気に家賃が上がるし、住むエリアも限られる。
本当は持ち物を増やしたくないから物件購入は嫌だったんですけど、経済的に買っちゃった方がいいと思うようになって、一乗寺のあたりに3LDKの中古の一戸建てを買いました。学生時代から元田中で過ごしていましたし、鴨川と大文字山が好きなので、左京区を中心に探していましたね。
高野
家を買うという大きな決断への迷いはありましたが、親として子どもに資産を残すことも必要だと思いました。また妻が商売をすることを考えたら、家をある程度好きにいじれたり、世界観をつくれたりする方がいいと考えて購入に至りました。
買ったのは、平成に建てられた左京区浄土寺エリアの一戸建て。知り合いの建築士にフルリフォームしてもらい、2026年4月から住んでいます。現在妻は自宅とは別の場所で間借り営業をしていますが、いずれ自宅を増築してお菓子作り工房を作ることを計画しているので、それを加味して物件を探しました。
——一方、川口さんは物件購入がきっかけで京都移住を決めたと聞いています。お二人のように京都で暮らした経験があるわけではないんですよね?
川口
関西出身ですが、京都に住んだことはなかったですね。元々京都が好きで、約5年前にフリーランスになったとき、自宅住所を伏せたいがために軽い気持ちで「東京都目黒区在住/京都移住計画中」と名刺に書いたところ、「京都移住の進捗はどうですか?」と聞かれるようになってしまって。
そこで京都旅行ついでに物件を見てみようと、「上京区が住みやすい」というYouTube情報を信じて西陣エリアの物件を見に行ったら、一目惚れしてしまったんです。
その後、ふらっと入ったお店で隣の席の人と会話が弾んで、「この物件めっちゃええやん」「あんたが来てくれたら友達になれるわ」と言ってもらえたのも後押しになって。初日からこういう出会いがあるなら移住もいいかもしれないと思って、1週間後に物件を購入しました。
それが2025年10月初旬で、幸いにも住んでいた東京の戸建てがスムーズに売却できたことで、12月にはもう京都へ越してきてました。ただただ勢いに乗って今に至る感じですね。

——勢いとスピード感がすごいです(笑)
川口
私は生粋の「持ち家派」で、大学を卒業してすぐに物件を買って、その後も何度か売り買いをした経験がありました。住居用とはいえ、いつかは売却することを視野に入れて物件を購入してきた中、移住先が田舎すぎると資産価値が下がりやすく、思うように売れないことも懸念されるのですが、京都市はその点安心ですよね。便利だし、「京都」というブランドは何よりの強みかなと。
あと、東京の戸建ては昭和建築で冬の寒さが厳しかったので、「冬になる前に気密性が高いマンションに引っ越したい」という気持ちもあって急いでいました。私はひとり住まいなので、その先の終活を見据えるとマンションの方が片付けやすいとも考えてはいましたが、まさか京都に来るとは思っていなかったですね(笑)
東京と京都で異なる、物件購入のポイント
——物件を買うにあたって、東京と京都で何か違いはありましたか?
高野
東京は駅から物件までの距離が重要ですけど、京都はバスが豊富だし、自転車移動の人も多いので、東京ほど最寄駅の距離は気にしなくていいように思います。僕自身、最終的には金額が上がる駅近の条件を捨てて、便利なバスの路線を重視して探していました。
川口
私は移住前から年2〜3回京都に遊びに来るたび、1日4〜5万歩歩き回っていたんです。だから「京都=歩ける場所」というイメージがあって、そもそもフリーランスで通勤もないので、最寄りの今出川駅まで25分ほどかかるけれど気にならない。バス便も豊富だし、「駅近」をあきらめたことで、かえって手頃な物件を選べたなと。

川口
一方で、自分が京都を「住む場所」として見ていなかったことにも気付きました。生活を意識して歩いてみると、「古本屋が多いな」「スーパーやドラッグストアがあって住みやすそう」など、視点が変わる。京都を何度も訪れている人であっても、ぜひ「住む」という視点で歩き回ってみてほしいです。
それに、京都って張り紙で賃貸や売買の情報を出している家も多いんですよね。不動産情報サイトに掲載されていない物件との思わぬ出会いがあるので、もし気に入った街があるならとりあえず歩いてみることをおすすめします。
高野
あと、京都は特殊な物件が多いですよね。町家のほか、再建築不可の物件や家と家が密着しているテラスハウスなど、それぞれ一長一短あるのでよく調べた方がいいと思います。マンションの選択肢が少なく、古い戸建てが多い京都ならではの注意点がありますから。
例えば、長屋は構造上日当たりが悪い物件が多いんですよ。僕は下鴨の一軒家に賃貸で住んだことがあるんですけど、とにかく日が入らなくて。今の家は日光がよく入ってきて、朝気持ちが良いので、日光は人間にとって重要なのだとよくわかりました(笑)
——古い戸建てとなると、暑さや寒さへの対策など、リノベーションも必要そうですね。
坂井
うちは京都市の「京都安心すまい応援金」というリフォームに使える補助金制度を利用して、全ての窓に内窓を付けました。リフォームされた状態で売り出されていた中古物件だったので、少しでも快適になればと家の性能を上げることにベットしましたね。
高野
うちも「京都安心すまい応援金」を使いました。賃貸で一軒家に住んだとき、暑さと寒さに悩まされた経験があったので、補助金によって快適性を上げるためのリフォームに踏み込みやすくなったのは助かりましたね。
【京都で物件を見るポイント】
・駅からの所要時間だけで判断せず、バス路線を確認する
・京都ならではの古い物件の一長一短を理解する
・「観光地として好き」と「住みやすさ」は別の話。実際に街を歩こう
買った物件に住み始めて、暮らしはどう変わった?
——物件を買うことは、地域に根ざすことでもあると思います。賃貸物件から購入した物件に住み始めて、暮らしに変化はありましたか?
坂井
地域のイベントに参加する機会が増えました。賃貸の集合住宅に住んでいた時は町内会から案内が来ないので、地域で何をやっているのかが見えず、なかなか参加まで踏み込めずにいて。
一方、今は地域のお祭りにも顔を出しやすくなって、ゴールデンウィークには子ども神輿に参加し、先日は子どもが通う予定の小学校の夏祭りに遊びに行きました。
高野
帰属意識というと大袈裟ですけど、「この地域にいる自分」を意識するようになりました。数十年住む地域ですから、ご近所さんと仲良くしたいし、お店の常連にもなりたいなと思うようになりましたね。
川口
私は賃貸で住んでいないので比較はできませんが、「京都に根を下ろした人」という認識で地域に受け入れてもらえているのを感じます。移住してきたと言ったら、「〇〇行った?」「あの常連さん面白いで」と、気軽にいろいろ教えてくれる。「どうせなら仲間に入って一緒に楽しんだらええやん」と懐に入れてくれる雰囲気があって、優しさや温かさを感じています。

高野
あとは、小さい子どもがいるからこそのウェルカム感はある気がします。京都の地価が上がり、若い世代が滋賀県に出てしまっている現状がある中、 「京都で子育てしてくれてありがとう」という空気はなんとなく感じますね。
川口
移住に関しても子育て世代へのアピールが目立ちますよね。
一方で、私は「単身者も京都に来ていいんだよ」と伝えたいです。東京に愛着があるわけじゃないんだったら、京都も楽しいよって。京都の文化に特別興味がなくても、住む街として魅力に溢れているので、「住みやすい」というイメージが広まるといいなと思います。
坂井
京都には僕らみたいな移住者も多いですしね。僕は大通りから一本入った狭い路地に住んでいるんですけど、お隣さんは30年前にこっちへ越してきた人ですし、その先の2軒も数年前に家族で引っ越してきた人たちです。お祭りには地域で生まれ育った地元の人もいますが、程よく混ざり合っていて、外から人が来ることへの慣れを感じます。
川口
私は今後「なんか面白いおばちゃんがおるで」みたいな感じで地域に貢献できたらなと。東京にいたときより、ずっと楽しく生きられそうな気がしてます。
今50代ですけど、45歳を超えたあたりから仕事がルーティン化して、自分が長らく停滞している感じがあって。体力も順調に落ちてくるし、趣味の寺社巡りもそろそろ階段を登れなくなるんじゃないかと。それなら動けるうちにやりたいことをガンガンやっておかないと後悔する、と思ったことも京都移住の後押しになりました。おかげさまで、今はやりたいことを好き放題やってます(笑)
例えば、これまで培ってきた経験を生かして、自分の好きなお店や仲良くなった人に、ボランティア感覚でPRなどのアドバイスをする。それが新たなつながりを生んで、また別の何かや誰かにつながっていく。まだ移住して半年ほどですが、そんな手応えがありますね。
物件を見つけて移住するのはステップの一つではあるけれど、それがゴールではないので。その先の暮らしを楽しもうとする好奇心さえ持っていれば、どうにでも生きられる。魅力的な人であふれている京都は特におすすめの街だと思います。
お知らせ
京都移住計画では、住まい探しや物件探しのお手伝いをしています。京都で実現したい理想の暮らしをじっくりお伺いしながら、おすすめの物件をご提案します。売買物件・賃貸物件・シェアハウスなどを掲載していますので、ぜひご覧ください。
編集:北川 由依
企画・執筆:天野 夏海
撮影:小栗 あかね



