2025.01.24

京都移住「無」計画

これは京都で5年間の大学生活を送り、3年間で3社辞めて、現在は京都でフリーランスをしている私の京都ストーリー。

京都で過ごした自由すぎる大学時代

埼玉出身の私は、念願の1人暮らしを叶えるために京都大学に入学した。

関東では「みんな同じでなければならない」「頑張らなければならない」という圧力を感じていたが、京都では全くない。

京大ではヘルメットを被った人たちが元気に公演をしていて、その側をウサ耳を付けた正体不明の男性が通り過ぎた。自分で事業を興している人にたくさん会って、満員電車に揺られるサラリーマンにならなくても生きていけると初めて知った。鴨川のほとりでぼーっとしていると、悩みなんてどうでもよくなってきた。

京都の北山でチェーンソーを振う毎日

京大では森林科学を専攻していたが、大学の授業よりもチェーンソーで木を切る方が楽しくなってしまったため、研究室には行かず日雇い労働者として木を伐採していた。

現場は京都の北山と呼ばれている地域。市街地から車で30分ほどの距離にある。こんな山奥でも京都市内だなんて不思議だ。山が近い京都は、元山岳部員の私にとって最高の場所だった。

間伐が終わったあとは、鴨川の上流で水浴びするのがお決まりだった。京大に入って、自分がこんな活動をするとは想像していなかった。京都にいればなんだってできる。京都の包容力に感動した。

古道具販売に奔走

休学時代に古物商免許を取得し、古物商として働いていた。古物商とは、いわゆる古道具や骨董、アンティークを仕入れて売る人のことだ。知人に古物商がいたので、特別に修行させてもらった。

京都は古物商にとっては楽園だ。
定期的に蚤の市が開催されているし、古道具屋が多いので、仕入れが簡単にできる。加えて、京都には古いものを大事にする文化が根付いているし、日本土産としてアンティークを買っていく海外からの観光客もいる。つまり売り先もある。

蚤の市で対面販売したり、オンラインで売ってみたり。仕入れのために日本全国や海外を駆け回った。この時に鍛えた目利き力は一生物だ。なかなかできない貴重な体験ができた。

大学を卒業しても京都で暮らしたいーー。

そんな私に京都のある問題が突きつけられる。
京都には働ける会社が少ないのだ。
京都に住みたい人が多いのに京都移住が進まない原因は、ここにあると思う。

就職活動では京都で働けるところを探したが、食品業界ではそもそも母数が少ないし、私みたいな社会不適合者は面接にすら受からない。京都の会社は見事に撃沈した。どうしても関西を離れたくなかった私は、大阪の食品メーカーに就職した。

やっぱり京都に住みたい社会人時代

会社の規定で大阪に住んでいたものの、京都が恋しくて毎週末京都に帰っていた。京都に帰れば林業ができるし、古道具を仕入れられる。私がイキイキ活動できるのは京都しかないと思ったので、1年で会社を退職した。

2社目はWEB系スタートアップの会社。完全テレワークだったので、もちろん京都に住んだ。京都の喫茶店をめぐりながら仕事をした。京都に住めただけで幸せだったが、会社の人とソリが合わず8ヶ月で退職した。

海外放浪の後に何を血迷ったのか埼玉に戻り、3社目は東京のコンサル会社で働いた。人混み、満員電車、雑多な街並み、都会の匂いのすべてにストレスを感じた。月1の京都出張が唯一の息抜きだった。

ある日、やりたいことリストを見直していたら1番目に「京都に住む」を挙げていることに気づいた。サラリーマンとしての働き方が向いてないことに薄々気づいていたタイミングだったため、京都に戻ることを決意した。7ヶ月で会社を辞めることにし、退職日に夜行バスで京都へと向かった。

退職はしたものの、次の仕事も見つけていないし、生活防衛資金もない。これからどう生きるか決まっていない不安とワクワクが入り混じった状態で、京都に到着した。

京都に着いても予定がなかったので、とりあえず京都移住計画のオフィスが入っているQUESTIONに向かった。すると、たまたま京都移住計画の代表の田村さんがいた。少し前、東京で開催していた京都移住イベントで「京都に行く」と話しており、すぐに京都に来たことに驚いていた。

QUESTIONを出て河原町をぶらぶらしていたが、そろそろ今夜の宿を確保しなくてはならない。

京都の知人たちに連絡すると、突然の連絡にもかかわらず「家に泊まりなよ」「ご飯食べて行きなよ」と言ってくれる。私は京都の人の優しさに何度も救われている。

京都には知人がたくさんいるし、山に行けば食料があるし、神社で水を汲めるし、公園のベンチがある。京都なら生存できると確信した。

京都で自由人として生活する

自分の理想的な働き方をすべて叶えてくれる会社はないと分かったので、自分で稼いでいくことにした。現在は京都で暮らしながら、個人事業とアルバイトで生計を立てている。

個人事業は、主に執筆と海外企業のAI開発業務をしている。最近やっと会社員時代並みの収入が入るようになってきた。その他には庭仕事や古物商をしていて、なんとYoutubeにも手を出し始めた。

アルバイトは、知人の会社や大学時代のバイト先など複数個をかけもちしている。大学時代からの知り合いのため、言わなくても私の特性を理解してくれていて居心地がよい。京町家が職場の会社もあって、京都らしくて気に入っている。

不安定なフリーランス生活で大丈夫なのか?と思われそうだが、食べ物と住む場所さえあれば生きていけると思っているので、あまり不安は感じていない。

それ以上に、私は京都の空気を吸えているだけで幸福度100点だ。「京都で古民家に住みたい」という夢に向かって邁進する日常が幸せだったりする。

海外移住しようとしていたことも

京都に異様な愛着を持っている私だが、つい最近まで「海外移住しよう」と思っていた。

日本の将来に危機感を抱いていたため、キャリアブレイク期間に東南アジア、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパに移住の下見に行った。

しかし、どの都市よりも京都が魅力的だと思ったので、しばらくは京都に住むことに決めた。色んな国を旅した中ではイギリスが特に気に入ったので、10年後には京都とイギリスを行き来する予定。

京都が魅力的な理由

なぜ京都はそんなに私を魅了するのか、理由を2つ考えてみた。

理由① 街のサイズがちょうどよく、徒歩と自転車でどこでも行けるから

京都市はまちがコンパクトにまとまっているため、自転車があればどこでも行くことができる。

私は関東出身なので関東で例えると、
・長野の山麓で鳥のさえずりで起床し、
・自転車で渋谷に向かってショッピングをして、
・徒歩で表参道のおしゃれなカフェでお茶をして、
・夕方までには長野の家に到着

という1日が自転車で完結するイメージだ。観光も、買い物も、自然もすべて京都市内で。しかもどこも関東ほど混雑していない。

「オーバーツーリズムで人が多そう」と思う方もいるかもしれないが、京都は観光地、繁華街、住宅地が割とくっきりと分かれているため、日常生活で観光客と混ざり合うことはあまりない。

そして、道が東西南北にまっすぐ伸びているので、地名や場所を覚えやすいのも特徴だ。街のサイズがコンパクトで全体像を把握しやすい、そして地図を覚えやすいことが過ごしやすさに直結していると思う。

理由② いろんな文化が混じり合うカオスを、時代を経た落ち着きが包み込んでいるから

京都にはいろんな文化が混ざり合っている。日本の伝統文化はもちろん、各国の文化も入ってきているし、京都に住んでいる人も様々だ。地元の人に加えて学生、移住者、外国からの観光客などが混じり合っている。

こんなカオス状態になって忙しないかと思いきや、色んな属性の人がいて逆に居心地の良さを感じる。これが時代を経て磨かれてきた京都の包容力なのだと思う。

最後に

「京都に住んでみたい」
その想いがあるのならば、今すぐ新幹線に乗り込んで京都に来てみてほしい。京都移住に計画なんていらない。京都はどんな人でも受け入れてくれる懐の広さと多様性がある。文化、自然、人、お店など気に入るところがきっとある。

京都でお待ちしております。

東大&京大卒の双子トコトコ

会社を退職しては海外逃避を繰り返し、人生のレールから外れようと決意。現在は京都で個人事業とアルバイトをする傍ら、東大&京大卒の双子noteで勉強方法や自由な生き方を発信中。https://note.com/agri_twins/

色んなものに手を出すマルチポテンシャライト。将来の夢は京都とイギリスの二拠点生活。

執筆:東大&京大卒の双子トコトコ
編集:北川 由依

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