2026.04.24

みんなが関わることで出来上がっていく文化複合施設「Com-ion」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

京都・岡崎の地に文化複合施設「Com-ion(コミオン)」ができたのは2025年春のこと。築110年を超える町家を改修した同施設には、朝から夜まで食事を楽しめるオールダイニング「HiTOHi(ヒトヒ)」、白川沿いの心地よさ感じるカフェ&ショップ「ほとり」、東京・日本橋や広島・瀬戸田にもあるコワーキングスペース「Soil work(ソイルワーク)」、工房を併設した清水焼のセラミックスタジオ「時の端(ときのは)」の4つの空間があります。

今回は、Com-ion立ち上げメンバーである畑育奈(はた・やすな)さんに、その魅力を伺いました。

これまでレストランやホテルの立ち上げに携わってきた畑さん。現在はカフェ&ショップ「ほとり」で働きながら、Com-ionのイベント企画・運営を行っている

「この場所はみんなが関わることで出来上がる」

路地に面した入口。施設は母屋、倉庫、離れの3棟からなる

「生きる人、生きる動詞を包む場所」というコンセプトのもと始まったCom-ion。同施設の発起人である故・宮下拓己(みやした・たくみ)さんが作った造語で、その由来はcom=“共に”、ion=“〜する”を組み合わせて、“共に〜する”という意味です。間に入る「-(ハイフン)」には、「ここに来た人がいろんな“動詞”をつけてくれたら」との思いが込められています。

一日を通して火が灯る食卓「HiTOHi(ヒトヒ)」。朝はワンプレート、昼はアラカルト&プリフィックス、夜はコース料理を提供する

畑さんと宮下さんは昔からの友人。「拓己くんは理想として、『この場所を作っていくのは僕じゃなくてみんなである』とよく言っていましたね」と畑さんは語ります。

「HiTOHi」にあるまき窯の火おこし風景をパチリ

「みんながここで食べたり、話したり、作ったりしてここに関わることで、Com-ionは出来上がっていく。『場所は作るんじゃなくて、関わっていくことで出来上がっていく』という彼の考え方は、私としてもすごくしっくりきたんです。みんなに関わってもらわないとCom-ionは出来上がらないんだと。笑顔があふれ、いろんな人が混ざる場所でありたいです」

HiTOHiの上、2Fにあるのがコワーキングスペース「Soil work」。京都市内の喧騒から離れ、作業に集中できる空間が整う
Soil workにある休憩室。伝書鳩小屋を改装してできた場所だそう

築110年を超える町家の改装に馳せた思い

構想から開業まで約4年半かかったCom-ion。規模にもよりますが、これは一般的な立ち上げに比べ、とても長い期間だそう。それにはさまざまな理由があるものの、畑さんがその1つとして挙げたのが、建物の改装工事でした。

工房とショップからなるセラミックスタジオ「時の端(ときのは)」。レストランから個人店まで料理に寄り添うような器制作を行う

Com-ionは築110年を超える旧青山家住宅を改装してできた施設。「次の100年も使えるような建物であってほしい」というオーナー・青山さんの思いもあり、建物の歪みや傾斜を補修することに重きを置いて工事は進められました。

「印象に残っているのが、『新しくするんじゃなくて、何を残すかにすごく考えを巡らせた時間だった』という拓己くんの言葉。Com-ionは意図的にいろんなところを直しきっていないんです。一番劣化の激しかった『ほとり』の壁もほとんど修復していなくて。拓己くんの言葉を借りると、『人間の顔のシワと一緒で、この建物が生きてきた証だから』。建物を綺麗にし過ぎないというのはすごく意識していたかもしれないですね」

川の流れを感じながら、柔らかい風が通る気持ちのいい空間の「ほとり」

お話を聞いていく中で面白かったのが、時代によって建物の特徴があるということ。

「同じ敷地ではありますが、母屋と離れは建てられた時代が違うんです。明治時代に作られた母屋は、大工さんの緻密な手仕事ですごく綺麗なまま残っています。一方で、短納期、低予算でたくさんの家が建った時代、昭和初期の離れは、やっぱり劣化がすごく激しくて。昔ながらの土壁で、いろんなところに傷もあったり……まぁそういう建物も私はすごく好きなんですけどね」

採光するために屋根にはガラス瓦を使用

「離れにできた『ほとり』に関して、設計を担当した京都の設計事務所・DAYさんは『気持ちのいい時間を過ごせるよう、そこに重きを置いて考え設計した』と言ってくれました。町家を改装してただ新しく生まれ変わらせるのではなく、それぞれの時代背景にまで思いを巡らせられるような、建築物としての魅力もCom-ionでは感じてもらえるかなと思います」

職人たちの手仕事に出合える場所

オープンから3ヶ月経った2025年6月にCom-ionで開催されたOPENDAY(オープンデイ)。このイベントはより多くの人にこの場所を知ってもらいたいと畑さんが企画したもので、ピザやパフェ作り、簡易金継ぎ、世界に一つだけのかるた作りなど、施設内でさまざまな体験をすることができる一日となりました。

当日は筆者も子どもたちと参加。普段から小さな子どもウエルカムなCom-ionですが、特にこの日は家族連れで楽しむ方が多く、一日を通して賑やかでやさしい雰囲気に包まれていました。

イベント当日HiTOHiで行ったワークショップの様子。スタッフさんの説明を聞きながらピザ作りに励む子どもたち

「Com-ionって、どの場所でも職人たちの姿が見えるんです。工房を併設している『時の端』では陶芸家が土を触っているのが見えますし、『HiTOHi』なら料理人が調理をする姿が見える。『ほとり』にも『Soil work』にも職人がいます。そういう文化を自分の中で咀嚼して、どんな形で表現していくのか。私にとって1つのテーマでもありますね」

HiTOHiで使われているカトラリー。解体工事で出た栗や杉の木材をリメイクしたものだそうで、同じスプーンでも一つずつ微妙に違うフォルムが愛らしい

現在は2回目のOPENDAYに向けて動き始めているそうで、大人たちに寄り添うような企画を検討中なのだとか。どんなイベントになるのか今から楽しみです。

敷地内にはidobata(イドバタ)やmizube(ミズベ)とフリースペースも。idobataにある一本松を、Soil workの窓からパチリ

立ち上げからずっと駆け抜けてきた日々を振り返りながら、「私の中では、今もまだ立ち上げ中というのが正直なところです。オープンして一年が経ちますが、もっといろんなチャレンジをしていきたいと思っています」と畑さん。最後に、Com-ionとはどんな場所か問いかけると、こう答えてくれました。

「どこかに行くときって、何か目的があって行くことが多いじゃないですか。だけどCom-ionはそうじゃない場所になったらいいなと私は思うんです。『ちょっと行ってみっか!』ぐらいで来てもらいたいし、ここに来た後にはちょっとあったかい気持ちになってもらいたいですね」

『Com-ion』
京都府京都市東山区堀池町382-1
WEB:https://com-ion.jp/

CHECK OUT

京阪三条で電車を降りると、ついCom-ionまで足を運びたくなる筆者がその魅力を一つ挙げるなら、それは「何をしなくても居心地の良い場所である」ということ。モーニングやカフェを目的に訪れることはもちろん、散歩がてらにふらっと立ち寄って、ぼーっとした時間を過ごすのもおすすめです。

執筆:佐々木 早貴
編集:藤原 朋

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