京都ではこの2・3年の間に、事務所や会議室、作業スペースなどを共有するコワーキングスペースやシェアオフィスは増えつつある。その存在も、少しずつ広がっている。フリーランスでの働き方やノマドワーカーなどの言葉が一般にも広く知られるようになったことで、こういったスペースへも注目が集まっている。
銀行やオフィスが立ち並ぶ烏丸通を四条から北へ。ここに今回紹介するOinai Karasuma(以下:Oinai)がある。運営している建築設計事務所がリノベーションをしたというビル。クラッシックで重厚な扉を開け、エレベーターで4階へ。
「昔の小学校」をイメージしたという、板張りの廊下を進むと、スタッフの藤原さんが出迎えてくれた。木々が彩る開放的なスペースには形の違う椅子やテーブルが並びその日の気分に合わせて、自分の場所を選べる。
「つながる・あそぶ・つくる 仕事場」というコンセプトを掲げ、建築設計事務所が運営しているだけあって、スペースづくりにかけるこだわりは強い。
「空間作りは意識していて、集中したい時は、壁際に向かうような席、開放的なら中央のテーブル席とか。あと、目線が重ならないように、高さの違う椅子やテーブルをおいて、個性的な植物が空間のアクセントになってくれています。」
居心地へのこだわりは模様替えの頻度にも現れている。「空間に変化があると、気分も変わって楽しいので、半年に一回くらいはしてます。最近は安定しているかな。」「来るたびに雰囲気が変わっている」と感じる会員さんもいらっしゃるそうだ。
「(ビルに入る入口の)あのドア、重厚感があるのでビルに入るのがまず大変なんです。しかも4階なので、足を運んでもらうきっかけとなるイベント作りを心がけています。」
Oinaiの運営を担当する、藤原さんも移住者のひとり。地元福岡から、京都の芸大に進学。卒業後、一度は地元に帰るも、「仕事をするなら京都で」との思いで戻ってきた。「お店とかカフェなんかは、小さくても質が高いものがたくさんある。面白いことが転がっていて、働いていても、生活していても発見がある」という。
Oinaiという場づくりにあたって、藤原さんは会員さんとのコミュニケーションを大切にしている。「基本的なことだけど、話を聞くことは大事にしていますね。些細なことでも(話の)重なる部分をつくったり、調べてみたり…人をつなげたり、アンテナを張っておくとか、そういうことを大事にしていますね。」
「運営してる人が偉そうな顔をするのではなく、多分この空間の中にいる人で(私が)一番年下なので、みなさんが使いやすいようにと思っています。
小さなことでも何でも相談してもらえるように。例えば「仕事でこんなことあった」とか「こんな人探してるんだけど」ということを相談してもらえたり、そこから新たな企画が生まれたり、プロジェクトが始まったりする事もあります。なので日々のやりとりは大切ですね。おいないには、いろんな人がいるので、沢山の可能性が詰まっている場所。私は運営者として、それを応援する立場に居るのかなと思います。」
会員さん同士のつながりもどこか温かさを感じる。「よくあるのが、会員さんの誰かが居合わせる人に「コーヒー淹れますよ。」って声をかけてくれる。そういうのがすごくありがたくて。」
「色んな業種の人が居合わせるので、困ったときは自然と助け合える。例えば「デザインのここが困ってしまった、どうしよう」という時に、すぐそばにいるデザイナーさんに声をかけることができる。仕事の枠に関係なく、そういう温かなコミュニケーションが日常的に流れている。」
今後の取り組みとして、そうした仕事が生まれるきっかけになるようにと、会員のクリエイターさん同士の仕事の紹介や、クリエイターさんとおいないとのコラボレーションも考えているという。
取材後期
藤原さんとは初対面でのインタビューでした。お話を伺う間、常に笑顔で対応いただきました。わざわざ私達の取材のためにノートいっぱいに話す内容をまとめてくれ、嬉しさを感じました。こういったスペースには空間のセンスと、そこに携わる人柄との両方が影響するのではないかと、勉強になりました。
oinai karasuma
【facebook】https://www.facebook.com/oinaikarasuma
【WEB】http://oinai-karasuma.jp/
執筆:水口幹之