募集終了2019.07.15

京都・美山の最奥地で「仕事」や「暮らし」に出会う。芦生トライアル・ワーキングステイ

山とともに生きる暮らしを体験したい。
自分のスキルを活かして、地域と関わってみたい。
原生林や源流など、自然資源を活かした新しいプロジェクトを考えてみたい。

そんなみなさんにおすすめしたいのが、7〜8月にかけて南丹市美山町で開催される「芦生トライアル・ワーキングステイ」(以下、芦生TWS)です。この企画は、芦生での滞在を通して地域の仕事や暮らしを体験できるプログラムとなっています。

山とともに生きてきた、美山・芦生の暮らし

京都市内から車でおおよそ1時間半ほどの場所にある、人口50人あまりの小さな集落「芦生(あしう)」。美山町のなかでも最奥地に位置しており、山をひとつ越えれば若狭国や近江国、そして、京の都にも近いため、350年以上も前から人々が行き交い、この地で生活を営んできました。

集落の奥には、ブナやトチ、アシウスギなどの木々が自然植生する、西日本最大の原生的な森が4,200ヘクタールにわたって広がり、「京都大学芦生研究林」として管理されています。

京都大学芦生研究林の中にあるトロッコ道。

芦生集落には、毎年4月10日に開催される「わさび祭り」とともに春が訪れます。年明けから春にかけ、熊狩りの安全を祈願してわさびを食べずに過ごしてきた村人たちは、お祭りの日にはじめて、神様とともに山の恵みに感謝しながらわさびを口にすることができます。

わさび祭りの様子。(写真提供:芦生自然学校)

芦生の夏の風物詩「松上げ」は、300年ほど前から行われている民俗行事。運動会の玉入れのようなかたちで、高く立てられた灯籠木(とろぎ)の籠に上松明(あげまつ)を放り込みます。

「松上げ」は毎年8月24日に開催されます。(写真提供:野生復帰計画)

こういった芦生の自然や地域ならではの伝統文化を、この地に住む人々は大切に受け継いできました。ですが、住民の半数以上は65歳を超えており、集落の10年、20年先の未来を見据えた次のアクションを起こしていかなければならないタイミングに差しかかっています。

そんな芦生で地域を盛り上げようと立ち上がったのが、これからご紹介する「マル井商店」と「野生復帰計画」のみなさん。この夏、芦生TWSを企画しようと思ったきっかけや、プロジェクトへの想いを伺ってきました。

「芦生山の家」を背景に左から、今井さん、井栗さん、大滝さん、青田さん。

まずは、芦生の自然や地元の人たちと出会ってほしい

お話をお伺いしたのは、「マル井商店」の共同代表である、芦生山の家・館長の今井崇(いまい・たかし)さんと芦生自然学校・理事長の井栗秀直(いくり・ひでなお)さん、マル井商店との共同事業者である野生復帰計画・代表取締役の青田真樹(あおた・まさき)さん、コーディネーターの大滝あや(おおたき・あや)さんです。

今回のプログラムを考案したきっかけは、今から3年前にさかのぼります。

井栗さんは、これからを生きる子どもたちが、美山の豊かな自然環境やここに受け継がれてきた知恵に触れる機会をつくりたい!と「芦生自然学校」を立ち上げ、15年間子どもの自然体験活動に関わってきました。

「地域の外から人を受け入れていくことも大切だけど、芦生で暮らす自分たちが、きちんと次の世代にバントンをつないでいかないといけない」と井栗さんは考え、青田さん・大滝さんと一緒になって地元住民・来訪者のヒアリングや、地域資源を活かしたツアー実施をはじめたのがちょうど3年前のことでした。

その後、地域の方や地域内事業者の声にも耳を傾け、今、芦生集落で何をするべきかを考える機会として、今年の1月に「これからの芦生を考える会」を開き、「芦生TWS」の構想が動きはじめました。

「芦生TWS」の企画・運営責任者となった青田さん。

青田:芦生のにぎわいをつくっていくためには、地域を何度も訪れてくれる人やUIターンする人、地域資源を活かして起業する人など、人が循環することが大切です。

これまで「美山トライアル・ワーキングステイ」やエコツアーといった取り組みを行ってきました。そういったプロジェクトを重ねていくと同時に、もっと深くこの土地の “暮らし” に触れてもらうにはどうしたらいいのか、という思いを抱えていたそうです。

大滝:芦生TWSでは「美山」「田舎」「自然」といったキーワードに惹かれ、ここでの暮らしを考えてみたい人たちに、日帰りで訪れるだけでは見えづらい “生活” のことをもっと知ってもらえたらいいなと思っています。数日間過ごすことで、地域の見え方が変わってくると思うから。

大滝さんは、2016年秋に自宅となる空き家のDIYをはじめ、2018年4月に京都市から南丹市美山町へ移住しました。暮らしや子育ての環境についてはどのように感じているのでしょうか。

大滝:私は、夫(青田さん)に巻き込まれるかたちで美山に移り住みましたが、ここでの暮らしを気に入っています。昨年の夏は、子どもたちとライフジャケット1つで川を下って遊んでいたのですが、とても気持ちが良くて。滞在しながらそういった自然の近さも楽しんでもらえるといいですね。

暮らしの先にある、地域ならではの仕事

芦生TWSでは、大きく2つの仕事を体験することができます。

そのひとつが、集落内で唯一の宿泊施設「芦生山の家(以下、山の家)」の運営のお手伝い。1969年7月に完成した山の家は、山を楽しみに芦生へやってくる人たちの拠点となる場所です。

今井:私たちは、芦生という集落の魅力をひとりでも多くの方に伝えたいと、これまでたくさんのお客さんを受け入れてきました。この地に京都大学の研究林があることで、人々の交流があり、私たちのような雇用が生まれています。

芦生は土地の99%が森林。林業や炭焼きなど、山の資源を生業として生活をしてきた方がたくさんいる一方で、これからを考えたときに「山の再生なしには生きていけない」と今井館長は語ります。

今井:山の家でも、“山の産物を食べてもらう” ということを大切にしています。例えば、山菜や自分たちで育てている原木椎茸、芦生の集落内でつくられている佃煮や漬物など、季節ごとに地域の食材を楽しんでもらえるよう、工夫しながらメニューを考えているんです。

仕事として関わるのは宿泊業の一部ですが、今井さんは常に地域のにぎわいづくり、雇用づくりを考えながら運営されています。

もうひとつは、公民館で企画・運営する「川の家」のお手伝い。夏季限定オープンで、今回はじめての試みになります。

川の家での仕事は、夏の期間にオープンする「海の家」をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。たとえば、芦生を訪れる人たちに、川あそびの道具の貸し出しや飲食物の提供、農産物等の販売など、内容はさまざま。

「川の家」として活用する予定の公民館。

川の家にはほぼ毎日、青田さんと大滝さんのどちらかが滞在しているので、一緒に集落ツアーを実施したり、「日替わり店長」(※1:ページ下部・募集要項参照)の企画のサポートをしたりしながら、芦生を訪れる方と地域の交流の起点になるような場の運営を行います。

そのほかにも、森・川・地域の畑など、集落すべてが仕事場になるので、参加を希望するみなさんの興味関心などを青田さんや大滝さんに事前に伝えておくといいかもしれません。

参加をすると、どんな1日を過ごすことになるのでしょうか。

芦生集落最奥地にある井栗さん宅(離れが宿泊場所になります)。人数によっては場所が変更になる場合もあります。

大滝:芦生の朝は、鳥のさえずりで目が覚めるところからはじまります。朝食を済ませ、川の家へお越しください。

<芦生で過ごす1日のスケジュール>

  9:00 川の家へ出勤・開店準備
10:00 川の家営業開始(来訪者対応・イベント補助等)
    ※日によっては集落内にある「芦生山の家」「地域の方の家」での仕事も予定しています。
11:00 羽釜ごはんの準備(薪割り・焚付け等)
    ※昼食は、自分で炊いたごはん&朝採り野菜等を差し入れします。
    来訪者対応、川あそびの補助(安全管理等)
16:00 少しずつ閉店作業開始、翌日の準備、「ほぼ毎日芦生日記(※2)」への投稿
18:00 帰宅・自由時間 (※木曜は企画中の「源流バー」の運営補助あり)
※こちらはイメージですので、内容が変更になる場合がございます。

大滝:自炊の材料は、目の前にある畑から収穫できます。お米・調味料・炊事道具一式は備え付けのものをお使いください。そのほかにも、日本海まで魚を買いに行く場合がありますので、ぜひ一緒に来てもらえたらと思います。

お風呂やトイレもリノベーションされています。

夜は、鹿の鳴き声を味わいながら眠りにつくのだとか。はじめての方はびっくりするかもしれませんが、鹿は襲ってこないので安心して過ごせるそうです。

(※2)・・・そういった、芦生で過ごす日々の出来事を「ほぼ毎日 芦生日記」として書きとめ、みなさんの視点で発信していくところまでが今回の滞在プログラムです。

芦生集落を、未来へつないでいくために

まもなくはじまる「芦生トライアル・ワーキングステイ」。みなさんが思い描く “田舎暮らし” や “移住” のトライアルの場にしてもらえたら、と青田さんたちのお話は続きます。

青田:まずは芦生に足を運んで、ここで “過ごす” ということを体験してもらえたら嬉しいです。数日間滞在していただくなかで、地域の暮らしの輪郭が見えてくるような、地域の仕事のイメージが湧くような、そんな時間を過ごしてもらえるよう、僕たちもサポートができたらと思っています。

井栗:この地で受け継がれてきた芦生の生活は、いつ何時も山とともにありました。林業や炭焼きが盛んだった時代も、佃煮や漬物の製造販売で年商2億円を稼いだ時代も、私たちは山の恵みをいただいて生活をしてきたんです。そういった地域の資源を掘り起こして、一緒に盛り上げてくれる人と出会えたら嬉しいですね。

芦生で長く暮らしてきた井栗さん。地域を盛り上げるには「人の力があってこそ」だと語尾に力が入ります。

大滝:はじめは、普段の暮らしに比べていろいろなところでギャップを感じるかもしれないけれど、芦生に触れていくなかで培われる力があると思っています。それは「人間力」にも近くて、変化を楽しんだ先にあるもの。夏のあいだ、みなさんが来られたいタイミングで芦生を訪れ、ぜひ私たちの仲間になってもらえたら嬉しいです。

青田:田舎暮らしに興味がある人や、地域とのつながりや関係性をつくりたいと思ってくれている人たちと出会えたら嬉しいですね! 芦生の仕事を知って、暮らしに触れて、地域資源を活かした新たな企画やプロジェクトを考えるきっかけを、僕たちもつくれたらいいなと思っています。

芦生の森で見つけたヤマアジサイ。芦生では季節ごとに様々な植物に出会えます。

山とともに生きてきた集落、「芦生」。人々はこの土地で、“ここにあるもの” と真摯に向き合い、大切に守りながら暮らしを営んできました。

ここがかつて人々の交流地点だったように、再びさまざまな人たちが行き交い、にぎわう未来を描きたいという願いを込めて。

この夏、地域ならではの仕事や暮らしを体験しに芦生を訪れてみませんか? 地域とのつながりを見つけたい、地域を一緒に盛り上げたい、そんな仲間を募集しています。

※本案件は雇用を前提とした求人ではなく、短期的な仕事体験の募集記事となります。

執筆:並河 杏奈
撮影:清水 泰人

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