地元へのUターンを経て、2度目の京都暮らし カフェマネージャーが想う、場所の価値と可能性

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京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。

第17弾にご登場いただくのは、コーヒースタンド「GOOD TIME COFFEE」でカフェマネージャーを務める金子春菜(かねこはるな)さんです。新潟出身の金子さんは、京都で大学生活を経験。卒業後は地元にUターン就職をしましたが、転職をし、再び京都に戻ってきました。現在の仕事や京都の魅力について、朝日が差し込む開店前の店舗で、お話を伺いました。

京都は、憧れの場所

ーー金子さんが、京都の大学を目指したきっかけはなんですか?

私は、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)のプロダクトデザイン学科に入学しました。小さな頃から雑貨が大好きだったので、大学ではものづくりを学びたいなと思っていて。せっかく一人暮らしをするなら、一度新潟以外の場所にも住んでみたいと考えていました。関西を選んだのは、本当にざっくりとした理由ですが、人情味が溢れている土地というイメージがあったから。その中でも京都は、名前の響きも格好良いし、憧れの場所でもありました。大学に合格したときは、家族も友達も「遊びに行きたい!」と、とても喜んでくれたんですよ(笑)

――実際に京都に住んでみてどうでしたか?

まず、関西弁が色々なところから聞こえてくることに感動しました(笑)テレビやマンガで見ていた「あの京都」に、今暮らしているんだなあって実感し、ふつふつと嬉しさがこみ上げてきて。新潟から京都に進学する人は珍しかったので、最初は知り合いがいなくて寂しかったけれど、幸運にもすぐに友達に恵まれました。

――大学で学んだことを教えてください。

デザインの勉強はもちろん頑張りましたし、ゼミの先生の影響で、まちづくりについても視野が広がりました。私、もともと地元にある商店街が大好きだったんです。だんだんお店が閉じていくのを見て悲しいなと思っていたので、デザインを通して町を元気にするような仕事ができたら、と考えるようになりました。

最初に働くなら、やっぱり生まれ育った故郷に貢献したい。そう思ったことが、Uターンを決めた理由です。ただ私の地元、上越市のあたりではデザイン事務所の求人が見つからなかったので、100km以上離れた新潟市で就職することに。経験を積んで一人前になったら、いつかは地元に戻りたいという意気込みもありました。

もう一度移住しよう。そう決めてから不安はなかった

――新潟にUターンをして、何か気づきはありましたか?

おこがましい言い方かもしれませんが、「新潟、やるじゃん」と感じ、嬉しくなりました。会社の皆さんも含めて、地域を元気にしたいと取り組んでいる素晴らしい方々がこんなに沢山いらっしゃるんだなって。そういう部分は、高校生の頃には気づけなかったので……。

ただ、私が頑張らなくても新潟は大丈夫なんだな、私が頑張る場所は新潟じゃなくても良いのかもしれないなと、ぼんやり思うようにもなりました。会社でも地域との関わり方を学び、未熟でありながらも一歩進んだ自分の視点で、他の町のことも見てみたいなと。

そろそろ仕事の契約が切れる頃、GOOD TIME COFFEEから「京都に戻ってきて、一緒に働きませんか」というお誘いが重なったんです。カフェを運営している「タクマデザイン」は、大学時代にインターンシップをしていた会社。どうしようかなと、真剣に進路を考えはじめました。

――新潟を離れ、京都に戻ることを決断した決め手を教えてください。

なにかひとつの強烈な理由があったわけではありません。せっかく新潟に帰ってきているわけですし、会社のことも好きだったので、すごく迷いました。新潟に居続けることと、京都に戻ることのメリットとデメリットを、それぞれいっぱい紙に書き出して……。どちらがワクワクするだろうと思ったとき、ほんの少しだけ京都の方が勝っていただけです。もう一度京都に移住しよう。そう決めてからは、不安はありませんでした。

京都に戻ってきたのが、2017年の10月。ちょうど一緒に働く先輩が産休に入るタイミングだったので、カフェマネージャーとしてすぐに独り立ちをすることになりました。

この町の地域性や温かさを、もっと発信したい

――久しぶりの京都で働いてみて、どうでしたか?

大学時代は左京区に住んでいましたが、お店があるのは下京区。町の雰囲気も違いますし、大学時代の親友は県外に就職していたので知り合いも少なく、また一から頑張っていかなきゃという大変さもありました。ただ、近所のおばあちゃんが遊びに来てくれたり、毎日のように顔を出してくれる常連さんができたり。「元気が出たよ」「リフレッシュできたよ」と、私たちのお店やコーヒーを通して、お客様の気持ちが良い方向に向かっていくのが日々嬉しくて仕方がありません。

――町のコーヒー屋さんとして親しまれているんですね。

GOOD TIME COFFEEは、嶋原商店街の中にあります。これまで、イベントにもたくさん参加させていただきました。夏の夜のビール祭りに新メニューを携えて出店したり、住民運動会でアイスコーヒーを提供したり。私も休みのときには商店街のお店を巡ったり、ご飯を食べに行ったり、色々開拓していっているんですよ。こうやって人や町と少しずつ仲良くなっていくのは、とても満たされる感じがしますね。

――お話を聞いて、嶋原商店街にも興味が湧いてきました!

ホットサンドで使う食材のほとんどは、商店街や近くのお店から仕入れています。それは決して、妥協しているわけではありません。ご近所に本当に美味しいお店が揃っているおかげで、ここでしか食べられないものが出来上がっていると思います。

ホットサンド用のだし巻きを注文すると、お店の方がいつも自転車に乗って、岡持ちで届けてくださるんですよ。きっと昔もこんな光景が見られたんじゃないかなと、この場所にいると、私が産まれていないときのことにまで思いを馳せることができるんです。

――最後に、これから頑張りたいことを教えてください。

新潟で生まれ育ち、働いた経験は、私の誇りです。その上で今は、地元に戻りたいというよりも、私が感じる地域の魅力をしっかり届けていけるように頑張りたいと考えています。

デザインの役割は、情報を整理して伝えていくこと。そしてGOOD TIME COFFEEも、町の地域性や温かさを、もっともっと発信していける場所だと思うんです。会社の方針としても、さらに地域と関わろうとしていますが、何より私自身が、この場所の可能性を強く感じています。

京都は、細い路地にも深い歴史がつまっている町。古いものを大切にしつつ、新しい出会いや価値を生み出せるような空間を、これからもつくっていきたいですね。

▼GOOD TIME COFFEE
築100年以上の京町家をリノベーションしたコーヒースタンド。
2020年10月3日で開店5周年を迎え、11月3日には東山に2号店もオープンしました。
https://goodtime.coffee/

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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