まちへの愛をビールに込めて 与謝野町『かけはしブルーイング』

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京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。

美しい朱色。口に入れるとモルトの甘み。その後に苦味が追いかけてくる。もう一口。さっき飲んだときより、苦味が増していい感じ。どうしてこんなに美味しいクラフトビールができたのだろう。この美味しさの秘密が知りたくて、与謝野町を訪ねました。

「まちづくり」からはじまったビールづくり

食を巡る第14弾は、与謝野町「かけはしブルーイング」をご紹介します。お話を伺ったのは、代表の濱田祐太さん。かけはしブルーイングの母体となるのは、「株式会社ローカルフラッグ」。持続可能な地域の発展を目指し、与謝野町をはじめとする丹後地域のまちづくりに取り組む会社です。そもそも、最初からビール作りを目指していたわけではなかったそう。

右が濱田さん。左はローカルフラッグ社員の梅田さん。

「会社を立ち上げた2019年7月頃、地域資源を使って何か事業ができないかと考えていたんです。与謝野の海、阿蘇海(あそかい)では牡蠣が大量繁殖し、景観悪化や悪臭の原因となっています。その問題を解決するためにも、牡蠣の殻を使って何かできないだろうかと考えたことが出発点です」

自身の思いや考えを話すうちに、ビールの濾過や水の水質調整に牡蠣殻が使えるという情報を得た濱田さん。さらに与謝野町で、ビールの原料となるホップの栽培に取り組む方々とつながり、与謝野町の資源を活かしたビールを作ることに決めました。

そのうちの一人が、与謝野町在住で日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキさん。なんと藤原さん、与謝野町でホップ栽培をはじめた第一人者。2015年には100キログラム程度だったホップ収穫量も、今では年間約2トンが収穫されるようになり、町の看板となる産業として成り立つまでになりました。

「まずはOEMで醸造をはじめようと思っていたので、委託醸造できる醸造所を探し始めました。フレッシュホップのビールを作っている経験があるか、牡蠣殻を使えるか、安定した生産を行える規模の工場なのか。そういった点をクリアしている醸造所を見つけたくて。藤原さんにもたくさんご尽力いただき、『いわて蔵ビール』にお願いすることが決まりました」

その間、与謝野町でビールづくりをしたいという濱田さんの熱意に惹かれた仲間が、全国各地から集まってきました。ビジネス、広報、財務と、それぞれのスキルを活かし、かけはしブルーイングに関わってくれています。その中でパッケージ等のデザインを担当しているのが、山根大樹さん。山根さんはデザインだけでなく、ビールのレシピ製作にも携わり、ゆくゆくは醸造家としてかけはしブルーイングのビールを手がけるそう。

かけはしブルーイングに携わるメンバー。

与謝野に産業を生み出したい

山根さんのレシピ案を元に、メンバーみんなで試行錯誤する日々。目指すのは、与謝野町のホップを最大限に活かしたおいしいビール。しかも、おいしいビールを目指すだけではなく、安定した品質を生み出すことに妥協しませんでした。

「僕たちが目指すのは、まちに産業をつくることです。雇用を生み出し、若い人が働きたいと思う仕事をつくるためには、一定の安定生産が大事なんです。2023年には年間18万本以上は、醸造・販売できる工場を与謝野町に建てることを目標にしています」

そのためにこだわったのは、ホップの成分分析。ホップは、苦味、香りなどを決めるビールにとってとても重要な材料。かけはしブルーイングでは、目指す味から逆算してホップの量を決めるため、ホップに含まれる酸や水分量の数値を把握する必要があります。また、与謝野町内で生産されたフレッシュホップを使用。良い状態のホップだけを手摘みするため、安定した品質のホップを使うことができます。

ASOBIの名前に込められた思い

こうした想いが形となり、生まれたのが『ASOBI』です。ラベルには、天橋立、丹後ちりめん、元伊勢籠神社の五色の玉など、丹後地域の風景が描かれています。メンバーの遊び心がいっぱいつまったラベルに仕上がりました。

「実は販売直前まで、商品名が決まらなかったんです。それまでは「かけはしエール」にするつもりでしたが、ピンとこなくて。考えた末に、僕たちのまちの「阿蘇海」をきれいにして、みんなで遊べるようにしたいという希望と、飲んだ次の日も「遊びにいく」ようなワクワク感を迎えられるようにと思いを込めて、『ASOBI』という名前にしました」

製品が完成し、2020年10月にクラウドファウンディングを利用して販売をスタート。なんと販売開始から、3時間で目標に到達。最終的には520名が購入し、約350万円の売上を達成しました。

お客様とともに育てるビール

初めて仕込んだビールは完売となりましたが、味を決め打ちすることなく、さらにおいしさを向上する努力を続けています。

「アンケートで、甘みが強いなどの意見をもらっているので、その声を元にモルトの種類を変える、ホップの比率を変えるなど改良を行っています。ASOBIはフィードバックを繰り返し、変わっていくビールです。僕たちは、お客様と一緒にビールづくりをしていきたいんです」

「地元ですてきな取り組みをしてくれてうれしい」と、まちの人から応援の声も。アンケート以外にも、お客様や地元の人も深く関わっていける取り組みを実施していきたいと濱田さんは話します。

ホップの株開きから収獲までを体験出来るプログラム「ホップレンジャー」の運営にも関わり、7月には与謝野ホップを使用した様々なビールが楽しめる「ホップ収穫祭」を開催予定。さらに株式を発行するクラファンの実施や、会員に向けたサービスなどを構想中です。

最後にASOBIのおすすめの飲み方を聞くと、「おうちで丹後バルセットとのペアリングが最高です!」とのこと。丹後地域のおいしい海の幸の缶詰と一緒にASOBIをペアリングして味わう、至福のひととき。気になる方はぜひ、WEBサイトから注文してくださいね。

「ファンの皆さんと一緒にビールづくり、会社づくりをしていきたい」と語る濱田さん。目指すのは、地の利を生かした与謝野スタイルのクラフトビール。地域を代表するブランドになっていけるように、日々邁進しています。

ファンの声で進化を遂げる『ASOBI』。次に飲む時は、どんな味わいに変化しているのでしょうか。楽しみでなりません。

『かけはしブルーイング』
TEL: 050-5373-5587
HP:https://kakehashi.beer/
facebook:https://www.facebook.com/kakehahashi.brew
※現在は通販・イベント販売のみ

与謝野ホップレンジャー/https://yosano-kankou.net/hoprangers/

お知らせ

2021年4月12日〜24日までQUESTION(京都信用金庫)で開催される「丹後FES」に、「かけはしブルーイング」が登場します!丹後のおいしいものが大集合しますので、お近くの方は、ぜひお立ち寄りください。

https://tangofes.bishokuclub.kyoto/

記事の作成に関わってくれたクリエイター

  • written&photo by
    ミカミ ユカリ

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