2021.09.14

生産・流通・消費の仕組みをアップデート。オーガニック野菜のより良い循環を考える2日間【受付終了】

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本記事でご紹介する「京都ローカルプロジェクト旅(以下、プロ旅)」は、UIターン後、京都府内でさまざまなプロジェクトやビジネスを立ち上げている地域プレイヤーの元を訪ね、取り組みの内容やUIターンの背景・今後の展望などをお伺いし、地域との新たな関わり方を見つけていくためのプログラムです。京都府・京都府農業会議とともに京都移住計画(株式会社ツナグム)が企画・運営しています。

流通からオーガニック野菜の地産地消を促す「369商店」とは

“Eat Local, Live Organic”をコンセプトに、2014年から移動販売形式の八百屋としてオーガニック野菜の販売事業をはじめた「369(みろく)商店」。

京都府中北部エリアを中心に、丹精込めて育てられたオーガニック野菜を農家から直接仕入れ、京都市内外の個人宅や飲食店へ届けています。現在、野菜の仕入れ先は30軒ほどあり、馴染みのある野菜から聞き慣れない名前のものまで、季節ごとにさまざまな野菜を取り扱っています。

集荷の際には、野菜だけでなくそれぞれの農家とコミュニケーションを取りながら、野菜づくりのこだわりやおいしい食べ方などの情報も仕入れています。同時に、配達先からいただく感想やコメントを、農家にフィードバックするのも役割の一つです。

「369商店」を主宰するのは、2010年に南丹市へ移り住んだ鈴木健太郎(すずき けんたろう)さん。創業時から顔が見える関係性を育み、小さな経済が循環していく仕組みづくりを心がけてきました。

「2010年に家族と南丹市へ移り住んだのですが、近所の農家からいただいたオーガニック野菜が本当においしかったんですよね。そのときに感じた『めっちゃうまい!』というシンプルな驚きや感動をそのままお客さんに伝えたくて、自分が集荷・配達できる範囲の小さなビジネスを立ち上げました。最近は、京都府下に新規就農したUIターンの若手農家がたくさんいるので、野菜とともにみんなのこだわりや想いも届けられたらと思っています」(鈴木さん)

369商店の予約フォーム。購入希望者はこちらで事前予約を行います。

創業してからの7年間、鈴木さんは「どうすればオーガニック野菜の地産地消が進むのか?」という一つの問いと向き合ってきました。

「自分自身が農業をする選択肢もあったとは思いますが、地域の農家と話すうちにオーガニック農業や流通の課題を知り、生産と消費の流れを良くしていくことに興味が湧きました。これだけおいしい野菜をつくれる人がいるなら、僕はそれを伝える役割を担えたらと。取り組みながら見えてきた新たな課題もありますが、地域で育てられたオーガニック野菜を、近隣の方が購入できる場所や機会をもっと増やしていけたらと思っています」(鈴木さん) 

南丹市へ移住後、里山保全のNPOや林業、農業の手伝いなど、仕事や地域の人たちとの関わりを通して「持続可能な地域づくり」を考えはじめた鈴木さん。田舎の魅力や自然資源の豊かさを感じる一方で、地域を取り巻く課題や違和感にも気づきます。

「369商店が取り組んでいる地産地消の課題は、野菜だけに限った話ではありません。例えば、生活と密接な住居や家具なども、近隣で伐採されたものではなく外国から輸入された安価な木材でつくられているケースが多いです。自然が身近な環境で暮らしていると、目の前にある資源が循環していないことに違和感を感じますし、流通しないことで管理が行き届かず、山が荒れていく現状も目の当たりにします。そういった全体的な社会の課題について、流通分野からできるアプローチをもっと考えたいですね」(鈴木さん)

“Eat Local, Live Organic”を実践したくなる生産と消費の仕組みをつくりたい

個人事業ではじめたビジネスをスケールするイメージはないと話す一方で、鈴木さんひとりで配達できる軒数に上限が近づき、今後の方向性を考えるタイミングに差しかかりました。

「移動販売形式の展開例として、取り扱う商材を増やして宅配サービスを拡張する方法や、ネットショップの開設、ニーズがある都市部で店舗をつくるなど、いくつかのパターンが考えられるのですが、どれもしっくりきていなくて。アルバイトの方にもお世話になっているのですが、ずっと属人的にやってきた部分もありますし、これまで369商店として培ってきたオリジナリティをどのように発揮していけるのか、ぼく自身も考えているところです」(鈴木さん)

京都市内のカフェ「Veg Out」で「食の安全」をテーマに開催されたイベント。(写真提供:369商店)

「以前、京都市内で開催されたイベントでオーガニック農業や流通における課題を話す機会があったのですが、とてもいい場だったんです。参加してくださった方々の熱量も高く、反響が大きくて。オーガニック農業における生産から流通、消費に至るまでのサイクルの課題について、さまざまな立場の方と考えるコミュニティがあることの重要性を感じました。ぼく自身は、生産と消費のあいだにある既存の流通の仕組みをアップデートしていきたいと思っています」(鈴木さん)

鈴木さんが、369商店と並行しながら力を入れているのは、「京都オーガニックアクション(Kyoto Organic Action・通称KOA)」というプラットフォームづくりです。

KOAは、京都市内にある八百屋12軒と、京都府下のオーガニック農家30〜40軒ほどで構成され、栽培技術の向上や店舗運営に関する講習会の開催、個別に行っていた集荷・物流を共有するなど、オーガニック野菜を取り巻く課題やビジネス展開をともに考える組織体として運営されています。

「KOAのはじまりは、2017年に開催した『百姓一喜(ひゃくしょういっき)』という飲み会でした。普段、369商店としてさまざまな農家や八百屋と出会う機会があるのですが、個性豊かで熱量にあふれている人たちが京都府下にこれだけいるにもかかわらず、横同士のつながりが薄かったんですよね。30人ほど集まればいいな……と思っていたのですが、当日を迎えるとはじめましての方も含めて農家、八百屋、料理人など70人ほど集まり、翌年は100人以上の方が参加してくれました」(鈴木さん)

百姓一喜に参加した八百屋4軒で、「まずは自分たちでできることをやってみよう!」と共同物流の仕組みづくりをスタート。その後、京都府の助成金を活用しながら、京都縦貫自動車道沿いに集荷ポイントをつくり「KOA便」として週に4回、2tトラックを走らせています。

「百姓一喜を通して、これだけの人たちが『オーガニック野菜』や『循環型社会』について熱い想いをもっていることを知り、場の熱量に勇気をもらいました。KOAの運営体制を整えていくなかで、今後は一般の方々も交えたオープンソースなコミュニティをつくりたいと思っています。ゆくゆくは、畑を訪ねるツアーなども開催していきたいですね」(鈴木さん)

サステナブルな循環や流通、ネットワークをつくるためにKOAが参考にしている取り組みは、国内で進められてきた有機農業運動、JA(農業協同組合)や市場などの既存の流通インフラ、欧米を中心に進んでいる地域支援型農業(CSA)など多岐に渡ります。

「生産者が安心して生産活動ができるよう、栽培技術をマニュアル化して資材を提供し、収穫された野菜を買い取るところまで一貫して行っているJAの仕組みはとてもよくできています。一方で、ぼくたちが現行の農業について課題を感じているのは、SDGs(持続可能な開発目標)が提唱されるなかで、大量生産のために農薬や化学肥料を使用することや、フードマイレージ(※1)といった、環境面との整合性なんですよね。地域が農業従事者の高齢化や耕作放棄地の問題を抱えるなかで、環境や次世代のことを考えた営農スタイルにどう切り替えていけるのか、業界全体としても転換点を迎えていると思います」(鈴木さん)

(※1)フードマイレージとは・・・食料の生産地から消費者の食卓に並ぶまでの輸送にかかった「重さ×距離」で表される指標のこと。(農林水産省資料参照)

生産から消費に至るまで、より良い循環を考える2日間

369商店のは「弥勒(みろく)菩薩」からきているそう。

スーパーマーケットの野菜コーナーを訪れると、国内だけにとどまらず世界各国から野菜が流通していることを実感します。季節や気候に左右されることなく、一年を通してほしい野菜が手に入るようになった背景には、物流システムの改善や品種改良など、個人や企業の並々ならぬ努力があったことを理解しながらも、鈴木さんは循環型社会へのシフトを後押ししたいと考えています。

「人口が増え、大量生産・大量消費が前提の時代であればそれで良かったのかもしれません。ですが、毎日畑を訪れていると、農業が環境に与える影響の大きさも意識せざるを得ないです。消費者のみなさんにも、農家一人ひとりが環境や安全のことを考え、それぞれこだわりをもって野菜づくりに励んでいることを知ってほしいです。まずは畑を訪れていただいて、彼ら・彼女らの熱意とともに地産地消・流通の可能性を考えていけると嬉しいですね」(鈴木さん)

\こんなプログラムを予定しています/
1日目
・オリエンテーション(生産~流通~消費の流れを知る)
・オーガニック農家のもとで農作業体験
2日目
・KOAの取り組みを知る
・援農のプログラムを考える
・八百屋の見学
・振り返り

「今回のプログラムでは、2日間を通して生産から消費に至るまでのプロセスを知っていただき、それぞれの立場から生産・流通・消費に対してどのような関わり方やプログラム、情報があるとより良い循環がつくれるかを一緒に考えられたら嬉しいです」(鈴木さん)

開催日程2021年10月23日(土)- 24日(日)
参加費一般の方:5000円
学生の方:3000円
※現地での食費・宿泊費等は別途自己負担となります。
定員5名
申込フォーム受付終了
申込〆切2021年10月12日(火)23:59
その他〈注意事項〉
・申込多数など状況によっては抽選とさせていただく場合があります。
・募集定員も限られているため、参加確定後のキャンセルはご遠慮ください。
・手洗い・消毒・マスクの着用など新型コロナウイルス感染拡大防止対策にご協力下さい。
(当日、体調不良などの場合は参加をお控えいただく場合がございます。)
・新型コロナウイルスの状況などにて、開催の可否を判断させていただく場合があります。

369商店 Facebookページ:https://www.facebook.com/369vegeful/
369商店 note:https://note.com/369vegeful/
京都オーガニックアクション Facebookページ:https://www.facebook.com/KyotoOrganicAction/

本プログラムで訪れる「南丹市」について

「日本一の田舎をめざす美山エリア、ちょうどいい田舎の日吉エリア、都市近郊の利便性を持つ園部・八木エリアなど、さまざまな顔を持つ南丹市。京都市や大阪市から程よい距離にあり、市民のまちづくり活動が盛んです。
南丹市定住促進サイト「なんくら」:http://www.nancla.jp/

ローカルプロジェクトを学ぶ旅〈オンライン説明会〉

《開催概要》
北は丹後、南は相楽まで、京都府各地に目的を持ち移住され活動されている方々と供に、各地の活動テーマのプロジェクトを2日間体感し、地域との関わりを学ぶプログラムを開催します。受入いただく4名それぞれの多様な活動や想いを知ってもらい、このプログラムでどんな体験や関わりがつくれるのか知って頂くべく、交流と説明を行うオンラインでのPRイベントを、2回に分けて開催します。

\こんな方にオススメです!/
・地域と関わりやつながりをつくりたい
・自分に合う働き方やライフスタイルを考えたい
・ゲストの活動や地域プロジェクトに興味がある方
・京都の地域が好きな方、ゆかりがある方
・ゆくゆくは移住やUターンを考えられている方

■日時
9月28日(火)19:15~21:00
※途中入室・退出も可能です。事前申し込みの際にご連絡ください。
■会場
オンラインZoom(事前申込制)
■イベント詳細&参加申込み
京都移住計画Peatixよりお申込みください。
https://kyotolocal-event0928.peatix.com/
■ゲスト紹介
・鈴木 健太郎さん 移動八百屋369商店店主/京都オーガニックアクション代表
・笠井 大輝さん 株式会社RE-SOCIAL/やまとある工房
■企画・運営
株式会社ツナグム(京都移住計画)
担当:藤本・並河 info@tunagum.com

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