2024年3月1日〜2日、多様な京都の魅力を知り、楽しく地域との関わりを見つけるイベント「京都ローカルフェス in TOKYO」を開催しました。1日目は、学生が経営する47都道府県地域産品セレクトショップとカフェを運営する『アナザー・ジャパン』で開催。京都北部にスポットを当て、ご当地の飲み物や食事を片手に交流しました。
興奮冷めやらぬまま、翌日、京都ローカルフェス2日目は、大手町にある三菱地所が運営するサードプレイス「3×3 Lab Future」に会場を移して実施します。
京都ローカルフェスは、京都に移住を検討する人とつながるだけでなく、ローカルで面白い仕事をしたい人や二拠点居住の候補地として京都を考えている人など、京都とさまざまな“関係”を築くことを目的に開催しています。
特に2日目は関係づくりの入口として、事業者・移住者・行政など20名以上のスタッフが豊富なコンテンツを共に準備。各市町村ではなく「ALL KYOTOで臨もう」を言葉に多くのスタッフがこの日のために協力してきました。
会場には、地域で作っている商品やリーフレット、移住や京都での仕事を相談できるブース、そして気軽にプレイヤーと交流できる「プレイヤー交流バー」を設け、さまざまな入り口から、京都のヒト・モノ・コトと繋がれるようになっています。
会場を眺めていると、行政と民間が同じ場にいることで、移住希望者がどんな仕事があるかは民間の人たちに聞き、地域の特色は行政の人たちに聞くといったスムーズな交流が生まれていました。また、「SDGsの取り組みに関心あるなら亀岡市さんと話してみては?」などと興味関心に合わせて地域を紹介するといったことがその場でできるのも、「ALL KYOTO」ならではのよさです。
他にも「今は東京に住んでいるけど、地元は丹後です」という参加者が、丹後に興味がある人に地元の魅力を説明している姿もみられ、スタッフと参加者の垣根を超えて京都の魅力を伝え合う場にもなっていました。
さらには、移住や二拠点を検討している人だけでなく、東京本社の会社が、京都支社を作ることに興味を持っている人も。民間プレイヤーが受けた相談をすぐに京都市へ紹介し、企業誘致の取り組みについて行政の具体的な支援策を知ってもらうなど、良いパスを送り合う姿が各所で見られました。
ここからは、2日目のクロストークやワークショップの内容をダイジェスト形式でお届けします。
クロストーク1「移り住み始める、地域を生かした働き方とプロジェクトづくり」
スピーカー:
ぬかとゆげ 前田 賢人さん(京丹後市)、VEJ丹後 藤原 徹也さん(京丹後市)、KYOTO TANGO お米のベビーカステラ 齋藤 日苗さん(宮津市)、FoundingBase 吉崎 秋音さん(宮津市)
進行:丹後暮らし探求舎 小林 朝子さん
クロストーク1本目は、縁もゆかりもなかった丹後地域に移住をした4名が登壇。なぜその地域に移住をしようと思ったのか、移住にともない仕事はどう変化したかを語りました。
吉崎
1人で宮津市に移住をして、はじめは友達ができないと思っていました。でも、地域の人たちが事あるごとにイベントに呼んでくれて、「おかえり」と言ってくれる。気づけば友達100人できていました(笑)。
移住する前は会社員という選択肢しかありませんでしたが、今ではいろんな働き方や暮らし方があることを知りました。移住をして、選択肢が多様になった感覚があります。
本クロストークを聞いて、漠然とイメージしていた移住がより具体的になったという人たちが多かったよう。また、スピーカーが「こういうことが不安だった!」と赤裸々に話をしてくれたことで、参加者からも安心して心配事や困り事などを共有できる空間へと会場が変化したように感じました。
クロストーク2「丹後の伝統産業や地域資源を活かした、仕事とものづくりのこれから」
スピーカー:
丹菱 糸井宏輔さん(与謝野町)、Komorevillage tango・柴田織物 関祥汰さん(与謝野町)、SAPO JAPAN 河田 恵美さん(宮津市)
進行:ローカルフラッグ 高橋 友樹さん
次に、「ものづくり」に精通した3名が登壇。糸井さんと関さんは、丹後地方特有の撚糸技術を用いた後染め絹織物「丹後ちりめん」を、河田さんは、丹後の素材を使って石けんを作っています。ものづくりにおける丹後の魅力、そして、ものづくりを通してまちをどう盛り上げていきたいかを語りました。
糸井
私は移住者ではなく、家業である丹後ちりめんを継いでいます。最近、移住者が与謝野町を盛り上げてくれているなと、とても感じます。しかし、その人たちと地元の人たちはまだ繋がりきれていない状態です。私の役割としては、移住者と地域の人たちの間に入ることだなと。そして、もっとつながりを増やし、まちを盛り上げていきたいです。
クロストーク後は、丹後ちりめんやものづくりに興味を持った人たちが、スピーカーに話しかけにいく姿が見られました。また、糸井さんと関さんは、実際に自社で制作している丹後ちりめんの服を着て来場していたため、実際に布を触りながら参加者と丹後トークに花を咲かせました。
クロストーク3「京都府の自治体と考える地域と移住でつくりたいまちの未来」
スピーカー:
移住・定住促進課 坂本 亮子さん(舞鶴市)、SDGs創生課 橋本 広明さん(亀岡市)、移住相談窓口 川邉 弘太さん(京丹波町)、総合政策室 中筋 大揮さん(京都市)
進行:ツナグム 藤本 和志
最後に、舞鶴市、亀岡市、京丹波町、京都市で働く4名が登壇。それぞれの地域の魅力はもちろん、人口減少や通学のしにくさなど地域の課題も赤裸々に語りました。
中筋
人口減少は、どの地域でも共通の課題です。移住者を取り合うのではなく、私たち自治体は「ALL KYOTO」で魅力を作っていかなければいけません。そして、移住者には、自身の暮らしややりたいことにそって、地域を選んでもらいたいなと思います。
「住むには自動車は必須ですか?」「子どもの登校が心配です」とより具体的な質問も、クロストーク後の会場で行き交いました。またその地域に住んでいた経験がある参加者たちが、実際に暮らしてみてのリアルを教え合う姿も見られました。
見て、触って、作って、丹後を知る3つのワークショップ
クロストークと並行して開催されていたワークショップでは、まず、SAPO JAPANの河田さんが講師になり、大豆油を主原料とした天然植物ワックスを使用した「ソイワックスキャンドル」を作りました。
子ども連れの参加者が多く、子どもたちからは「良い匂いがする」「はやくキャンドルに火をつけたい」などの声があがりました。「このようなイベントでは人の話ををきくばかりになって、子どもが遊べるものが少なく……。ですが京都ローカルフェスはワークショップのように子どもが楽しめるコンテンツがあって、助かりました」と話す親御さんもいました。
丹菱の糸井宏輔さんと柴田織物の関祥汰さんが講師になったワークショップでは、丹後ちりめんの商品を触りながら、どのような技術なのかを学びました。伝統産業に興味がある参加者が集まり、「伝統はどう後世につないでいくべきか」と質問したり、丹後ちりめんの緻密さに驚きの声をあげたりしていました。
最後は、鍼灸師でもある与謝野町地域コーディネーターの高橋さんによる、お灸づくりのワークショップ。お灸は、丹後で収穫したよもぎを使用しました。
すり鉢で細かくすると、よもぎの香りが部屋いっぱいに広がります。「お灸をつくる」という体験をすること自体が、滅多にないため、「お灸ってこうやってできているんですね」という感想やお灸の使い方について質問しながら、完成にたどり着いていました。
京都の食材を囲んで大交流会!
最後には交流会を実施。クロストークを聞いて、京都にゆかりのある人たちが集まって「こんなイベントを東京で開きたい」と具体的な相談を持ちかけたり、京都に訪れる日程を決めている人たちもいました。また、スタッフも互いの地域についての情報を交換し、市町村でどんな企画ができそうかを考える姿もありました。
「移住をしたい」「地域で面白い取り組みをしたい」と頭の中で描いていても、それらを実現するための一歩をつくるのは、なかなか難しいことです。東京で日々忙しく働く中で、移住先を検討し、実際に訪問するハードルは高く、「移住は数年後でいいか」と諦める人も多いのではないでしょうか。
一方で、京都ローカルフェスは気軽に一歩が踏み出せる場です。豊富なコンテンツで一つの地域だけでなく、複数の地域を同時に知り、アポイントを取らなくても、地域のリアルな声を受け取れる。「いつかできたらいいな」と思っていたことが、「よし!この後すぐにやってみよう!」と思わせてくれる場だったのではないでしょうか。
これからも京都移住計画は、「これから移住する人」や「長年京都に住んでいる人」、「京都の外から関わる人」との出会いを作り、共に京都を楽しんでいけるようなイベントやプログラムを開催していきます。京都が気になっている方は、ぜひご参加ください。
執筆:つじの ゆい
撮影:大坪 侑史
編集:北川 由依