2025.11.13

偶発的な出会いを生み、コミュニティを育む。KRP×ATOMicaが目指すその先の未来

イノベーションの種は、時に偶発的な出会いから生まれます。しかし、その出会いはどのようにして育まれるのでしょうか。

「京都からの新ビジネス・新産業創出に貢献する」をミッションに掲げる京都リサーチパーク(通称:KRP)は、出会いや挑戦の機会を提供するため、年間260件以上のイベント・プログラムを開催しています。

2025年3月からは、入居企業同士の交流をさらに深め、地区内外のイノベーション創出へとつなげていくために、ソーシャルコワーキングスタートアップ・株式会社ATOMicaと連携し、イベントスペース「たまり場」にコミュニティマネージャーの常駐をスタートしました。

今回は、京都リサーチパーク株式会社(以下、KRP)イノベーションデザイン部の斉藤悠馬さん、株式会社ATOMicaの嵐田創太さん、新福剣士さんの3人が、この半年間の取り組みを振り返りながら、イノベーションを生み出す出会いやコミュニティのあり方、今後の展望について語り合います。

多様なアプローチで、人と人の出会いを創出

2025年4月にKRPに入社し、イベントスペース「たまり場」のイベント企画・運営に携わっている斉藤さんと、同年2月にATOMicaに入社し、3月からコミュニティマネージャーとして「たまり場」に常駐している嵐田さん。ほぼ同時期から「たまり場」に関わっている2人ですが、どういった経緯で今の会社に入社したのでしょうか。

斉藤

大学卒業後、農業技術職の公務員として6年ほど働いていました。最後の1年間はイベント関連の部署に配属され、産学公連携イベントの企画に携わる中で、人と人、組織と組織のつながりに大きな可能性を感じて。そんなときにKRPを知り、「集交創」という社是に共感して入社を決めました。

斉藤 悠馬

京都リサーチパーク株式会社 イノベーションデザイン部
1995年生まれ。京都府立大学を卒業後、農業専門の公務員としてキャリアをスタート。生産者の栽培面・経営面などの伴走支援を行う普及指導員や、土・肥料に関する研究を行う研究員、農林水産分野での産学公連携を目指すイベント企画・運営など、約6年間様々な立場から農業振興に携わったのち、2025年4月に京都リサーチパーク株式会社に入社。多様な人が集うスペース「たまり場」「GOCONC」のイベント企画・運営のほか、起業家支援プログラム「COM-PJ」、産学連携のきっかけづくりを目指す「ふれデミックカフェ」などを主に担当。

嵐田

社会人のスタートは、監査法人で会計士として働いていたんです。その頃、たまたま参加したコミュニティで、コミュニティマネージャーという職業を知り、「なんだ、この面白い仕事は!」と興味を持って。ベンチャー企業に転職して、営業の仕事をしながら副業でオンラインコミュニティのコミュニティマネージャーを始めました。コミュニティづくりにすごくやりがいを感じて、本業にしたいと考えていた頃にATOMicaに出会い、入社しました。京都へ移住する際は、京都移住計画で住まい探しをお手伝いしてもらいましたね。

嵐田 創太

株式会社ATOMica
1999年生まれ。学生時代には、まちづくりやチームビルディングを学ぶ。コロナ禍に公認会計士論文式試験に合格し、大手監査法人へ入所。金融機関の会計監査に携わる。
その後、旅をテーマにしたコミュニティに参加したことをきっかけに、コミュニティマネージャーという仕事の存在を知り、この道を志すようになる。転職後は営業活動に取り組みながら、並行してコミュニティ運営にも関わり続け、2025年2月に株式会社ATOMicaへ入社。現在は京都リサーチパークの「たまり場」に常駐し、イベント企画・運営を行うとともに、人と人との出会いから「頼り頼られる関係性」を育むコミュニティづくりに取り組んでいる。

新福さんは「たまり場」をはじめ、ATOMicaが関わる複数の拠点でコミュニティづくりに携わっています。各地のお祭りに参加しながらの世界一周、「うんこミュージアム」の企画運営といった多彩な経験を経て、フリーランスでコーチングやコワーキング運営を行う中でATOMicaに出会いました。

新福

東京のある拠点でコミュニティマネージャーをしていたときに、その拠点の運営に関わっていたのがATOMicaでした。場所だけを提供しているのではなく、コミュニティづくりにしっかりと取り組んでいるATOMicaに魅力を感じて、「自分は今までこういった仕事をしてきたので、何かお役に立てると思います!」とプレゼンしたんです。そこで「複数拠点に携わるポジションがあるからやってみないか」と勧められて、約2年前にジョインしました。現在は京都と九州の拠点に関わっています。

新福 剣士

株式会社ATOMica
1994年生まれ。鹿児島県出身。大学時代に(株)TABIPPO主催の世界一周コンテストで優勝。世界一周航空券と、(株)アカツキのスポンサードを獲得し世界のお祭りを巡る旅を実施。帰国後はうんこミュージアムの運営企画に従事し、リアルエンタメに関わる。エンタメの中にも存在するコミュニケーションに可能性を感じ、東京都のコワーキングスペースの責任者を務める。ひょんな出会いからATOMicaと繋がりジョイン。ヒトとヒトの繋がりから生まれるミラクルが大好きです。

KRPの母体である大阪ガス株式会社とATOMicaは、地域共生社会の実現や地域やコミュニティの活性化に向けて新たな価値創造をともに目指すために、2024年7月に資本提携を締結しました。また、ATOMica×Daigasグループの協業の一環として、2025年3月から「たまり場」へのコミュニティマネージャーの常駐がスタートしました。

新福

この連携におけるミッションは、入居企業同士の交流を深め、地区内外のイノベーション創出につなげていくことです。イノベーションが生まれるプロセスは、抽象度が高くて言語化しきれない部分が大きいため、どうしてもイノベーション創出という成果だけにフォーカスされがちです。でも、人と人が出会い、コミュニティの輪郭が形成されていかないと、その先の何かは生まれない。KRPの皆さんと話し合う中で、これまでビジネス寄りのイベントが多かったので、もっと交流自体が目的になるような、ライトなイベントも増やしていったらどうかという一つの方向性が決まりました。

斉藤

協業やイノベーションを生み出していくという目標はありますが、そこにばかりフォーカスしていても難しい。まずは、KRPにどんな人たちがいるのか、入居者同士がお互いを知るところからスタートしないと、目標への階段を上っていけないんじゃないかと、プロジェクトチーム内で話し合いましたね。そこで、ビジネスに関係なく、趣味や好きなことをテーマに交流できるイベントを開催して、コミュニティの入口をつくっていくところから始めようと考えました。

参加者が自分ごととして関わるイベントを

KRPとATOMicaの連携によるイベントは、これまで月5~6本のペースで開催してきました。ボードゲーム、マンガ、お笑い、万博など、テーマは多岐にわたります。

嵐田

初めに手ごたえを感じたのは、2025年5月に開催した「ほろ酔い企画部」というイベント。みんなでお酒を飲みながら、「たまり場」や地区内でやってみたいことを考えてアイデア出しをするという内容でした。それまでのイベントは、登壇者が何かを提供するスタイルが多かったですが、「ほろ酔い企画部」では全員がフラットな関係で一緒に作り上げることができました。

斉藤

それまではATOMicaさんが提案してくれた企画をもとにイベントを行う形でしたが、「ほろ酔い企画部」は僕と嵐田さんが2人で一から考えた初めての企画だったんですよね。参加者同士は初対面でもすごく盛り上がったし、このときのメンバーは今もよく「たまり場」に遊びに来てくれますね。

新福

当日は僕も参加しましたが、いい意味で「余白だらけ」のイベントでしたね。余白を残すのは、主催者にとっては勇気のいる行為だと思いますが、そのチャレンジが良い形で実を結んだと思います。

2025年5月の「ほろ酔い企画部」。ホワイトボードを囲んで、お酒を片手にゆるっとアイデア出しを行った

もう一つ、斉藤さんが印象に残っているものとして挙げてくれたのは、8月に開催された人事・総務担当者が集まるイベント。「違う会社で同じ職種に携わる人と話してみたい」という声をもとに企画したそうです。

斉藤

このイベントでは、トークテーマも参加者みんなで話し合って決めました。例えば「採用」など、人事担当者なら誰もが悩んでいるテーマについて話すことで、一人ひとりが主人公になって、お互いの考えをシェアできる場になっていたと思います。「ほろ酔い企画部」もそうですが、参加者が自分ごととして考えられるように設計できたイベントは、満足度が高いと感じましたね。終了後の名刺交換の時間もめちゃくちゃ長くなって、みんな全然帰らない(笑)。それがすごくうれしかったです。

嵐田さんは、6月に開催したヨガイベントも印象的だったと話します。こちらも「KRPでヨガをやってほしい」という入居者の声から生まれた企画です。

2025年6月に開催された「首肩すっきり!リラックスヨガ」。「たまり場」がまるでヨガスタジオのような雰囲気に

嵐田

実はずっと、女性のイベント参加者が少ないという課題があって、「どうしたら来てもらえるんだろう」と頭を悩ませていて。ヨガをやろうと決めて、マットも買い揃えたものの、本当に人が来るのかなと心配していたんです。でも、実際にやってみると定員いっぱいで、しかも14人中12人が女性。その後は、ヨガの参加者がお友達を連れて来てくれることもあって、他のイベントでも女性の比率が増えていきました。

斉藤

人事総務のイベントも、女性が多かったですよね。最近はミーティングの場でも「どうやって女性に来てもらおうか」という議題自体が出なくなった気がします。

ビジネスに限らず、やわらかなテーマで多種多様なイベントを行うことで、新しく訪れる人たちが増え、「たまり場」の雰囲気も変わりつつある様子が伝わってきます。

日々の会話から生まれたマッチング事例も

これまで話題に上がった夜のイベントだけでなく、嵐田さんによる「コーヒーサービス」や、中庭での「ランチ会」「ストレッチ整体DAY」など、お昼の時間帯にも小さなイベントを開催しています。また、日々の「たまり場」でのやり取りも、大切なコミュニケーションの一つです。

嵐田

コーヒーを淹れて飲んでもらっている間に少しおしゃべりしたり、ランチタイムにみんなで集まって話したり。イベント以外でも、ふらっと立ち寄ってくれた人と休憩がてらシャッフルボードで遊ぶこともあります。やりたいことを自由に書けるホワイトボードを設置しているので、「実はこんなことをやりたいんだよね」というお話を聞いたときは書き込んでもらっています。

週に数回、嵐田さんがドリップコーヒーを淹れる「Coffee Time」を開催
プロフィール帳を置き、利用する人に記入してもらっている。懐かしさから手に取る方も多く、出身地や趣味から繋がることもある

そんな日々の何気ない会話が、入居者同士のマッチングにつながる事例も。「たまり場」での出会いをきっかけに、4月にはデザインをテーマにしたイベントが開催されました。

嵐田

あるイベントで、KRPに入居したばかりのWebデザイナーさんとお会いしたときに、「デザイン系のイベントがしたい」というお話を聞いていたんです。後日、別のイベントで知り合った方が「たまり場」に遊びに来て、「今、社内でデザインのイベント企画を頼まれているんですが、どうしたらいいか困っているんですよ」とおっしゃって。「そういえば!」と思ってすぐに2人をつないだら、たちまちイベントが実現しました。

新福

ATOMicaは「あらゆる願いに寄り添い、人と人を結び続ける。」をビジョンに掲げ、「WISH=願い」と「KNOT=出会い」を大切にしています。「たまり場」でのマッチング事例にも、現場での日々のコミュニケーションはもちろん、ATOMicaのこれまでの経験則が生かされているのかなと思います。

このように嵐田さんが起点となるケースだけでなく、入居者同士のつながりも自然に広がりつつあるそうです。

嵐田

最近は、地区内を歩いていると知っている人に出会う場面がとても多いんです。たまたまその話をしたら、「実は私もそうなんですよ」と言ってくださった人がいて。「たまり場」のイベントに参加してから、地区内で知り合いに会って「この間はどうも」と話す機会が増えたと聞いて、自分だけでなくいろんなところに波及しているんだなと、すごくうれしかったです。

斉藤

先日開催した「KRPフェス」のマルシェ会場でも、以前「たまり場」のイベントに参加された方が「イベントで知り合った人たちと、また会えるかなと思って来ました」と足を運んでくれていました。1回参加して終わりじゃなくて、その後の関係性もできているんだなと実感しました。

共創から生まれる大きな可能性を信じて

3人のお話から、半年間という短い期間でもすでに多くの成果が現れているのがよくわかりますが、この半年を通して見えてきた新たな課題もあるのでしょうか。

斉藤

「たまり場」があるKRP東地区と比べると、西地区ではこの場所の存在がまだまだ認知されていないと感じます。今も入居企業へのメールマガジンの配信やチラシのポスティングなどを行っていますが、どうやってリーチを広げていくのかは今後の課題ですね。そのためにコーヒーサービスの西地区での展開も計画中です。

もう一つ、「たまり場」で人を集めて接点を作ることはできていますが、ここからどうやってコミュニティを形成していくのか、という課題もあります。次のステップに進めるために、どこまで関与できるか?すべきか?など、コミュニティへの関わり方の解像度をもっと上げていく必要があると思っています。

新福

「たまり場」の認知向上のために、アプローチ方法は増やしていく必要がありますね。「ここに来たくなる人」は確実に増えていると思うので、その先をどうデザインしていくのか、という課題もあります。コミュニティ形成、イノベーション創出といったミッションはもちろんありますが、それだけではない新しい世界線も目指せるのではないかと思っていて。

このプロジェクトに関わっている人たちは、本当に「人」に興味関心のあるメンバーばかり。今すでにあるミッションを超えた、新しい「何か」をクリエイティブできるチームだと感じています。その「何か」をみんなでつくりたい。これは課題というか、うれしい悩みですね。

「たまり場」に携わるKRPとATOMicaのメンバーについて、新福さんが「委託・受託だけの関係性ではなく、共創できている感覚がすごくある」と話すと、「一緒に悩んで、一緒に喜び合える、フラットな関係。楽しく仕事ができています」と大きく頷く斉藤さん。そんな一体感のあるチームから、この先どんなものが生み出されていくのか、ワクワクした気持ちになります。

最後に、今後の展望と、「たまり場」を訪れたことのない人へのメッセージをお願いすると、3人はこんなふうに答えてくれました。

嵐田

「たまり場」をやりたいことが叶う場所にしていきたいですね。今は僕たちがイベントを主催していますが、入居者の皆さんが主催者になって、やりたいことを実現してほしいです。先日は唎酒師の資格を持つ方が主催する日本酒イベントを開催しました。そうやってコミュニティの起点となる主催者をもっと増やしていきたいです。初めて訪れる方も、いつでも気軽に僕に声を掛けてください!

斉藤

「たまり場」は、入居者同士はもちろん、地区外の人との出会いの場でもあります。偶発的な出会いから何かが生まれる場所にしていきたいと思いますので、興味のある方はどなたでも遊びに来てください。

新福

理由は特になくていいので、ぜひいろんな方に来てほしいですね。「来ました!」だけでOKです。KRPは510組織6,000人が集う「まち」であり、可能性は無限大。全国各地に約50拠点を展開しているというATOMicaの強みも生かして、全国から「WISH」を集めて実現していきたいです。

ATOMicaとの連携によって、KRPという「まち」に新しい風が吹き、着実に変化が起きていることが実感できた今回の取材。偶発的な出会いから、人と人のつながりが生まれ、コミュニティが育まれたその先には、どんな未来が待っているのでしょうか。興味を持った人は、ぜひ「たまり場」に足を運んでみてください。

執筆:藤原 朋
撮影:中田 絢子
編集:北川 由依

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