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亀岡市は「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定されています。本記事では、より身近なSDGsの事例を知っていただくために、亀岡市内でSDGsを積極的に推進する事業者の実践事例を紹介します。
1932年に創業した株式会社京都金桝は、羽毛ふとんやカバー、ケット、敷パッドなどの寝具を製造する会社です。プライベートブランド「Able Future」をはじめとする製品づくりを通じて、安心・安全な眠りを届け、多くの人の健康を支えてきました。
近年では、羽毛ふとんのリフォームやエコテックス®認証製品の展開など、資源を大切にするものづくりにも取り組んでいます。こうした活動は、安心して使える製品づくりと、資源を無駄にしない循環型のものづくりの両立につながっています。
その背景や具体的な取り組みについて、代表取締役社長の岡田源一さんと営業本部長の中田恒治さんにお話をうかがいました。

羽毛ふとんリフォームで気づいた、消費者意識の変化
京都金桝が近年力を入れているのが「羽毛ふとんリフォーム」です。預かった個人の羽毛ふとんの羽毛を取り出し、直接洗浄・乾燥させ、新品のようなふわふわな羽毛ふとんに仕立て直すことで、廃棄物の削減につなげています。
岡田
処分されるふとんを減らせないかと考え、約3年前からリフォーム事業を始めました。一つずつふとんの状態を記録し、中身の状態を調べ、解体から洗浄、乾燥、最終仕上げまで、全て徳島の自社工場で行っています。手間はかかりますが、羽毛ふとんはご結婚などのお祝いで送られることも多い品です。お客さまからお礼のメールをいただくこともありますし、何よりお客さまの大切なふとんがよみがえる様子を見ると、この事業を始めて本当によかったと感じます。

「羽毛ふとんリフォーム」は想定以上に好評で、次年度で黒字化に成功しました。また、「消費者の意識の変化も大きい」と営業本部長の中田恒治さんは言います。
中田
2年前から資源を循環させる取り組みとして、処分されたふとんを回収し、リフォームと同じ要領で洗浄した羽毛を再度使って、リサイクルダウンとして新しいふとんの販売をする取り組みも始めました。かつては他人が使ったふとんを再利用することに抵抗を持つ人が多かったと思いますが、今は逆に「欲しい」という声が増えているんです。世の中の潮目が変わっているのを感じますね。
もう一つ、同社が力を入れているのが「大切な子どもたちと地球の未来のために」をコンセプトにしたエコテックス®認証製品です。エコテックス®認証とは、エコテックス®国際共同体が定めた国際的な安全性基準。人体に対する安心性を保証するための厳格な基準で、ふとんの生地や糸、中身のダウン、品質表示のインクに至るまで、製品に関わる全てが対象です。安全性の高い素材を選ぶことは、使う人だけでなく環境への負荷を減らす取り組みにもつながっています。
岡田
全ての素材が基準を満たしている必要があるので、日本のふとんメーカーではまだ数社しかエコテックス®認証は取得していません。当社の場合は自社製造ですので、素材の管理もしやすいなと。まだエコテックス®認証製品は少数ですが、他の製品でもエコテックス®認証の素材に徐々に切り替えていくことで、最終的には全ての製品で国際的な安全性基準を達成できればと考えています。

SDGsの取り組みは「結果的に」始まった
実は、これらの取り組みはSDGsを意識して始めたことではありません。根底にあったのは「会社を強くするにはどうしたらいいか」という考えです。
岡田
羽毛ふとんリフォームは当初他社に依頼していましたが、自社でできれば会社として強くなれると思いました。エコテックス®認証も、海外企業との商談で自社の特徴を聞かれたときにはっきり答えられず、良いものを作るだけでは通用しないと痛感したことが取得のきっかけです。会社が順風満帆だったら、挑戦はしていないと思います。
ここ数年で女性社員が増え、男女比はほぼ半分になりましたが、さかのぼれば1998年に女性社員2人が自社製品を企画。「男性が企画した製品を女性が買うのではなく、女性自身が使いたいものを作ろう」と始まった取り組みは、現在もプライベートブランド「Able Future」として続いています。これもまた、SDGsを意識した結果ではありません。
岡田
男女を気にし出すとキリがないですし、特別何かしているわけでもありませんが、少なくとも採用時には性別を考えないようにしています。素晴らしい社員に恵まれて、その中に女性もいるという感じです。制度や環境には至らない点がまだまだありますが、「人の話を聴く」が行動指針の一つでもあり、発言はしやすい会社なのではと思います。

こうした変化を受け、働く人のライフスタイルに合わせた環境づくりも進めています。福利厚生の充実が必要だと感じたことから、柔軟な働き方を支える制度として1時間単位の有給取得制度を導入。入社3年目の女性社員は、「子どもの事情で少し仕事を抜けたいときに助かっている」と語ります。
他に、寝具メーカーとしての強みを生かし、地域の防災につながる取り組みも進行中です。
中田
水などの備蓄以外に、毛布や敷きパッドの在庫を一定数持っておくようにしています。大手寝具メーカーのように被災地へ何千枚ものふとんを送る力はありませんが、せめて社員と地域の皆さまの分くらいの備蓄は用意したいと考えています。

必要とされる会社になるために
こうした取り組みを通じて、「必要とされる会社になれれば」と岡田さん。一方で営利企業として利益を追求しなくてはならず、そのバランスには葛藤もあります。そんな時の支えとなるのが、同社の行動指針でもある「損得より善悪でものを考える」という言葉です。
岡田
当社は2000年に民事再生を適用して再建した会社です。一度挫折を味わったからこそ、必要とされることの大切さを感じています。羽毛ふとんリフォームもエコテックス®認証製品も投資が必要でしたが、会社を存続させるには、SDGsに関係なく「良いと思うことに挑戦する」のが一番。 仕入先や得意先など、人とのつながりがあって初めて商売ができますので、全てが完璧とはいかずとも、「良い方向に向かっている会社」として記憶に残ればと思っています。


今後は軌道に乗った「羽毛ふとんリフォーム」とエコテックス®認証製品の取り組みをさらに強化していく予定です。
中田
リフォームの件数を増やせれば、我々が利益を上げられるだけでなく、これまで捨てていたものを循環させることができます。そして、お客さまが新しい寝具を購入するときには、意識せずとも手に取った製品全てがエコテックス®認証になっているのが理想です。
岡田
どちらもまだ始めたばかりですので、まずはしっかりと継続したいですね。そうするうちに、きっとまた違う何かが見えてくると思います。当社のSDGsの取り組みは意図的に始めたことではありません。良いと思う行動をして、それが商売につながればこれほどありがたいことはありません。会社として必要とされる存在であり続けるためにも、「損得より善悪でものを考える」という行動指針を大切にしていきたいと思います。



