2024.05.31

サブをメインに。ネバり強く納豆を極めた先に見えたものとは

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京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。

第36弾にご登場いただくのは、納豆マガジン編集長の村上竜一(むらかみ りゅういち)さん。周囲からは、納豆に絡めて「ネバくん」と呼ばれているのだそう。2021年2月、納豆にフォーカスを当てた新感覚カルチャー誌「納豆マガジン」を発酵(発行)。2023年7月には京都市下京区にセレクトショップ「利口.」をオープンしました。

ほかにも、納豆イベントの企画や出店で全国を飛び回りながら、納豆アパレルブランド「ネバネバビーン」の運営、納豆グッズの制作、モデルなど多方面に活躍しています。現在は、2024年7月10日に行われる納豆食べ比べイベント「N-1グランプリ」の本選に向けて、予選を毎月開催中!

納豆をメインに活動するに至った経緯や、これからの展望について話を伺いました。

面白いことで、納豆を極めていく

ーー「納豆」をメインに活動するに至った経緯を教えてください。

実は納豆が特別好きだったわけではないのですが、納豆巻きを食べることは好きなんですよね。よくお寿司屋さんで納豆巻きを注文するんですけど、ある日、「納豆巻きってメインじゃなくてサブだ」と気づいて。「サブをメインにしたら面白いんじゃないか」「やり始めたら有名になれるんじゃないか」と思ったのがきっかけで、納豆をメインに活動を始めました。

例えば、スパイスカレーだったら、すでに全国にたくさんのお店があって、多くの人が独自のスパイスカレーを極めていますよね。僕はすでに有名なものにはあまり興味がなくて。まだ誰も極めていないような、納豆のようにサブキャラな存在を極めてみたいと思ったんです。

ーー「納豆」を極めるために、どんなことから始めたのですか。

当時は関西のファッション誌「カジカジ」で編集者をしていたこともあって、時間が限られていたので、まずは納豆イベントを行うことから始めました。イベントの内容は、僕が作った納豆巻きを振る舞うというもの。ただ作るのではなく、納豆巻きに合う食材、例えばキムチや大葉、ネギなどを選んで、「どのトッピングが納豆に合うのか?」を考えながらやっていました。

イベントの初回は自分の家で。友人数人を呼んだホームパーティーのような形からスタートして、それを続けるうちに、仕事仲間から場所を提供してもらったり、古着屋さんで納豆イベントを開催したり、どんどん楽しくなっていきましたね。

ーー古着屋さんで納豆イベント!面白い試みですね。

おそらく日本で初めて古着屋さんで納豆イベントを開催したと思います。今思い出しても笑えるほど、古着屋さんで納豆巻きを作るというのは楽しかったですね。もちろん最初は、イベントでお金を稼げたらいいなと思っていましたが、続けるうちに「面白いからやりたい」「納豆で楽しいことがしたい」と思うようになって。

納豆アパレルブランド「ネバネバビーン」も、もともと服が好きだったというのもあるけど、納豆と服を組み合わせたら面白いのではないかと思って、納豆イベントと同じタイミングで始めました。

写真提供:ネバネバビーン

村上さんを救った「納豆マガジン」

ーー「納豆マガジン」を発酵することになった経緯を教えてください。

コロナ禍でイベント開催ができなくなってしまって。それがきっかけで、Instagramに納豆レビューをするようになりました。1日1投稿をマイルールにして、ひたすら納豆を食べるっていう。毎日いろいろな納豆を食べるうちに、「納豆には種類がたくさんあって、一つひとつ味が全然違う」ということに気づいて、納豆の面白さに魅了されていきました。

同じ頃、会社を退職することに。お金はないけど、時間はある。でも”何か”をしないといけないという焦りもあって、納豆をあらゆる角度で紹介する「納豆マガジン」を作ることにしました。もし”何か”をやるとしても、自分の成果物として見せるものがあった方がいいと思ったんですね。

ーー「納豆マガジン」を発酵後、どんな変化を感じましたか。

Instagramで納豆レビューをしていたときには感じられなかった、大きな反響がありました。最初は「納豆」をメインに活動することに対して、バカにしていた人もいたんですけど、「納豆マガジン」を発酵することで周りの態度も変わりましたね。

本を読んだ人から「次はいつ発酵されるの」と連絡が来たり、僕に会いに来てくれる人がいたり。僕の知らないところで「納豆マガジン」が広がっているのをひしひしと感じています。

もちろん、僕の中での変化もあって。今までやってきたことの”まとめ”として「納豆マガジン」を出版することで、自分の経験値が上がったような気がします。納豆をメインに活動するモチベーションにも繋がっていますね。

全国を飛び回る生活から、京都に拠点を作る

ーーセレクトショップ「利口.」をオープンした経緯を教えてください。

2022年から2023年にかけて、全国の納豆イベントを飛び回っていました。毎週どこかに行っているという状況で、結構大変だったんですよね。交通費もバカにならないし、そのルーティンに飽きていた自分もいました。

イベントにこだわるのではなく、違う形もいいかなと思って、「納豆を売るためのお店がほしい」というふわっとした軽い気持ちで、お店を持つことに決めたんです。

店内で販売している納豆。このときは「N-1グランプリ」宮城編のラインナップ

ーーどうして京都にお店を構えたのですか。

彼女が京都に住んでいるというのもありますが、仲良くさせてもらっている京納豆の藤原食品さんのお手伝いもしたかったので、京都を選びました。僕は大学からずっと神戸に住んでいたのですが、あまり縁のない京都でお店を開くことに面白さを感じたんですよね。

ーー「利口.」ではどんな商品を取り扱っていますか。

納豆のほか、ネバネバビーンの商品やいろいろな企業とコラボした納豆グッズ、古道具、アーティストの作品などを取り扱っています。プロダクト系の大学に通っていたので、そのときにお世話になった先輩の商品なども置いていますね。当初は納豆だけを取り扱うお店にする予定だったのですが、自分が納豆に飽きたら怖いので(笑)。

最近は、来店するお客さんの傾向に合わせて商品をセレクトしています。今はそれがすごく楽しくて。でも、楽しいだけでは売上には繋がらないので、「どんな商品を、どれくらい取り扱うか」を考えながら、日常的にアンテナを張っています。

納豆を世界に。村上さんのこれから

ーー最後に、これからの展望を教えてください。

これからも、自分の面白いと思うことを信じて発信し続けていきたいですね。進んでいった先に壁はあるかもしれませんが、納豆のように粘り強くいけたらなと。

これからやってみたいのは、海外に活動を広げること。お店を始めてから、京都という場所柄、海外の人と接する機会が多いのですが、納豆を知らない人も多いんですよね。日本人にとっては、安くて健康にいい、しかも美味しいというイメージがありますが、海外の人には全く馴染みがない。つまり、納豆を使って面白いことができる可能性に満ちているということです。

具体的なことはまだ決めていませんが、海外で納豆イベントをしたり、ネバネバビーンのポップアップをしたり、やってみたいことはたくさん考えています。年内にでも、何かしら形にできたらいいなと思っています。

執筆:むなかたりょうこ
編集:藤原 朋

CHECK OUT

納豆が大好きな筆者、もちろん「納豆マガジン」の登場には度肝を抜かれました!まさか、納豆にスポットライトを当てた、納豆好きにはたまらない本がこの世に存在するなんて。
そんな「納豆マガジン」の編集長、ネバくんのお話を伺って感じたのは、フットワークの軽さ。やってみようと思ったことにはアレヨッと挑戦する姿勢に、私も強く背中を押されました。納豆が世界に羽ばたくそのときを、今から楽しみにしています!

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