2020.12.17

世界と地域を日本語でつなげる世界から学習者が集まる「京都日本語学校」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

京都御所の西、静かな住宅街の中にある「公益財団法人京都日本語教育センター京都日本語学校」は、70年という長きにわたって、外国人に日本語を教えてきました。その卒業生の数はなんと約50カ国、約3万人にものぼります。日本に魅せられ、日本語を学びたい人がここで学んで世界に旅立って行きました。

建物の中に入ると、授業中なのか教室から楽しそうな声が聞こえてきます。教科書を音読する声、先生が何か説明している声、クラスメートと笑い合う声……そんな声を聞いていると、確かに留学生がここで学んでいることがわかります。その中の2人の留学生にお話を伺いました。

自然豊かな京都で四季折々の美しさに感動

イタリアのミラノ出身のセレナさん。建築家です。夫の転勤にともない2018年に来日。予想もしていなかったことにとても驚いたそうです。来日前の日本のイメージは遠い国。でもアニメで有名ということもあり、「驚きはすぐにワクワクに変わった」と話します。

実際に京都に来て驚いたのは自然の豊かさ。「ミラノは都会です。だから自然はあまりありません。京都は都会でありながら自然と調和しているところがすばらしい」と話してくれました。

そんなセレナさんは京都のお寺巡りが大好きなのだとか。お寺の中にある庭園を初めて見たときは感動したとセレナさん。数あるお寺の中でもお気に入りは大原の三千院。四季折々の美しさがあるところがその理由なのだそうです。

日本語の勉強を始めて2年。以前はイタリアの仕事をリモートで日本でしていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、仕事が少なくなったことを機に、本腰を入れて勉強するために日本語学校に入学。京都日本語教育センターの中級クラスで日本語を学んでいます。

クラスでは、フランス、ベトナム、タイと様々な国から来た留学生が楽しく勉強しているそう。帰国までの貴重な日々を楽しんでいきたいと笑顔で話してくれました。

ここから羽ばたく

2019年に来日した、マカオ出身のユウさん。日本の大学院への進学を目指しています。

午前中は学校で勉強して、時々午後から近くのラーメン店でアルバイトもしていました。しかし、新型コロナウイルスの影響でラーメン店は休業を余儀なくされ、現在は進学を目指して勉強に専念しているのだそう。将来は色々な国を股に掛けたビジネスマンとして活躍したいと言います。

そんなユウさんが最近凝っているものはカメラ。日本全国を旅行してその風景をカメラに収めるのが好きなのだそう。色々なところへ行ったけれど、特に、小豆島がよかったのだそうです。

京都に来た理由を聞いてみると「伝統文化が感じられるから」とユウさん。実際に京都日本語学校の授業で「いけばな」を学んだのだそう。感想は「ちょっと難しかったけど、おもしろかったです」

京都だからこそできること

「日本語を学ぶだけなら東京でも大阪でもできる。でも京都でしか学べないこともある」というのが、京都日本語学校のポリシー。ここでは、「文化芸術クラス」があります。いけばな、マンガ、着物、茶道といった日本独特の文化を通して日本語を学ぶクラスです。単に体験するだけではなく、その道の専門家を招き、実際に話を聞き、やってみることで日本語を学ぼうというクラスなのです。おもしろそうでしょう?

地域の中の日本語学校

また、専任講師である山田朱音さんは日本語学校が地域のなかにある意味についてこう話してくれました。

「京都日本語学校では以前から新町小学校との交流をはじめ、様々な場面で地域との交流を行っています。例えば、毎年2月にスピーチコンテストをするんですが、その審査員として地域の方に参加してもらったこともあります。気さくに引き受けてくださり、ここで学生たちと交流もしてくださいました。京都というとよそ者に優しくないというイメージがあるように思いますが、実際はそんなこと全然ないんです」

留学生たちは地域との交流を通して、教室の中とは違った角度で日本社会を見つめることができそうですね。

時代とともに変わる日本語学校のあり方

現在、コロナ禍により、学生数は例年の半分ほどになり、留学予定だった留学生が今、母国で足止めを食らっています。そんな留学生のために今年からオンライン授業をすることになったと山田さん。「日本語学校は社会情勢にもろに影響を受けます。でも、今回のコロナ禍が二の足を踏んでいたオンライン授業をはじめるきっかけになりました」と話してくれました。

その時代の要請を受けて、柔軟にそのニーズにこたえる日本語学校。きっとこれからもこの場所で世界と地域の架け橋であり続けつつ、新しい京都の学びの形を生み出しているのかもしれません。

執筆:若林 佐恵里

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