現地視察&交流会 in 丹後レポート 地域で叶えたい夢がある。地域おこし協力隊の未来を見据えて

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みなさんは、「地域おこし協力隊」をご存知でしょうか?

地域で小商いがしたい。これまでの経験を活かして、ローカルビジネスに挑戦したい。自分の手で作物を育てて、地域の新しい特産物を生み出したい。これらのような意欲ある人たちと地域をつなぐ「架け橋」となる制度です。

地域おこし協力隊はローカルエリアに与える影響が大きく、これから地域で活動したい人にとってのロールモデルとしても注目されています。

右奥が今回のツアーを企画した京都移住計画の藤本 和志さん。

藤本:地域おこし協力隊は、京都移住計画がこれから深く関わっていきたいテーマ。『京都移住コンシェルジュ事業』や『京都北部7市町連携事業』など、地域と移住者をつなぐ流れのなかで、地域おこし協力隊を通じて、ローカルビジネスや地域を豊かにする事業にも取り組んでいきたいと考えています。

そこで、まずは地域おこし協力隊の実態や活動しやすい状況を把握するために、丹後エリアで現地視察&交流会を企画。現役隊員の活動地を巡りながら、ミッション内容や地域の特徴などについて意見を交わしました。

視察&交流会には、京都府内の地域おこし協力隊11名が参加。当日の模様をお届けしつつ、交流が深まる中で浮き彫りになった「共通の課題感」と「支援の必要性」についてご紹介します。

地域おこし協力隊の活動地を巡る

2009年から始まった地域おこし協力隊。都市から地方に移住し、一定期間、地域の課題解決や新規事業の立ち上げに取り組みつつ、その地域に定住・定着を図る制度です。平成30年度には約1,000団体が募集し、約5,000人の隊員が活躍しています。

軽トラックの荷台に家を置いて走る『モバイルハウス』。京丹後市の地域おこし協力隊である稲本さんが手がけました。森林保全や山の資源を活かすため、地元の木材を使用しています。

 

陶芸家として活動している秋鹿さん(写真右)。ご夫婦で地域おこし協力隊として宮津市に移住し、旦那さんはオリーブ農家兼陶芸家として活動しています。写真は自宅兼アトリエの様子です。

現在、京都府内には50名を超える地域おこし協力隊が活動中。しかし、南北にエリアが広がっているため、「隊員同士の接点が少ないため、情報交換が十分にできていない」という課題がありました。

今回の視察&交流会は、横のつながりを育み、それぞれの活動を知るための機会。京都移住計画の藤本が企画し、現役の地域おこし協力隊である藤田 始史さん(笠置町)と関 奈央弥さん(京丹後市)の助力を得て実現しました。

地域課題と自分の夢を掛け合わせる

1泊2日の視察&交流会で訪れたのは、京丹後市の五十河地区、京丹後市の五箇地区、伊根町、宮津市の上宮津地区。現地で活躍する4名の地域おこし協力隊と活動内容や地域の特徴についてご紹介します。

中川 圭さん / 京丹後市 大宮町五箇地区

京丹後市五十河(いかが)地区。江戸時代中期に建てられた築300年の茅葺き古民家と6haの広大な敷地がある『五十河桃源郷』に暮らすのが、地域おこし協力隊の中川さん(写真右)です。

中川さんが地域おこし協力隊になったのは2018年7月。「個人的な活動と地域おこし協力隊としての活動を融合させていきたい」と語ります。

「僕がこの場所で実現したいのは、“古き良き”と“新しき良き”を融合させた、次世代の暮らし・生き方を実践する村を創ること。一人で活動していくなかで、地元の人たちと一緒にやっていきたいと思って地域おこし協力隊になりました」

2019年3月にはクラウドファンディングを実施。目標金額を上回る支援金が集まり、トイレとお風呂をつくりました。着実にファンが増えており、全国各地から毎年約100人が中川さんを訪ねています。

関 奈央弥さん / 京丹後市 峰山町五箇地区

以前は東京都内の小学校で学校栄養士として働いていた関さん。食に対する興味・関心と管理栄養士の資格を活かし、「丹後を食という視点から発信する」ために地域おこし協力隊の活動をはじめました。

日本最古の羽衣伝説の地『天女の里』や稲作発祥の地『月の輪田』など、五箇地区のスポットを案内してくれました。

「食育セミナーやファスティングサポートのほかにも、丹後の食材を使ったイベント『丹後バル』やオリジナルの缶詰製造、無農薬のお米作りにもチャレンジしています。あと、近いうちに食育の拠点をつくろうと思っていて。田んぼの近くに古民家を借りる予定です」

また、地域の協力者の人たちと一緒に、地域づくり団体『五箇プロジェクト』をスタート。プロジェクトの一環として、最近ではサイクリングツアーもはじめています。

京都移住計画でも関さんとのコラボイベントを企画。2019年9月21日に開催した『京都丹後と関わる「食」の交流会@東京』では、丹後の豊かな食材が振舞われました。

増田 一樹さん / 京丹後市伊根町

透明度の高い海、湾に沿って立ち並ぶ舟屋がシンボルの伊根町。「海の京都」を代表する場所で、増田さんは地域おこし協力隊として活動しています。

伊根町観光案内所に席を置いており、観光スポットを案内や業務が円滑に進む改善などが主な任務。また、副業として「キッチンカー」「自転車ガイド」「宿泊施設(10月開始予定)」の事業にも取り組んでいます。

「自分のミッションにこだわりはありません。どちらかといえば、地域の課題に向き合って、それをビジネスにしている感覚です。地域と上手く関係をつくりながら、幸せに生きたいなと思っています」

もともと、起業をするつもりで伊根町に移住した増田さん。事業の内容にこだわりはなく、いずれも地域や観光客からのニーズがあります。また、地域おこし協力隊の任務、伊根町観光協会と上手く絡ませているところがポイントです。

寺田 俊介さん / 宮津市 上宮津地区

宮津市の地域おこし協力隊は、自分の得意を活かして取り組む内容を決める「提案型」と、事前に任務の内容が決められている「ミッション型」に分かれているのが特徴です。

寺田さんはご夫婦で「提案型」の地域おこし協力隊としての活動を開始。活動内容はさまざまですが、主な任務は「ホンモロコ(※)の養殖」と「わさびの栽培」。地域の特産品にしようと動いています。

「僕は将来的に『地域商社』を作りたいと思って地域おこし協力隊になりました。その道筋を組み立てるときに、地域の人たちと地域のプロジェクトに取り組むことが、将来の役に立つと考えたんです」

※ホンモロコとは?
琵琶湖固有の淡水魚。小さな身体に美味しさがぎゅっと詰まっており、京料亭などでは高級魚として扱われています。寺田さんは宮津市で養殖に取り組み、ゆくゆくは地域の特産品としてブランド化を目指しています。

上宮津地区の人口は半分以上が65歳。でも、みんな地域を盛り上げたい気持ちが強く、とてもパワフルなのだそう。地域の人たちの後押しを受けながら、寺田さんは地域商社の設立と地域課題の解決を進めています。

地域おこし協力隊が抱える課題感

今回の視察&交流会には、京丹後市を中心に、宮津市・福知山市・綾部市・南丹市から11名の地域おこし協力隊が参加。自己紹介を兼ねた座談会では、食育事業からはじまり、オリーブ栽培、空き家再生、モバイルハウスなど、さまざまな活動内容が紹介されました。

座談会の後半では「地域おこし協力隊の現状と課題感」をテーマに意見交換。その中から、以下の7点を取り上げます。

捉えられ方が地域によって違う

地域おこし協力隊という肩書きは同じでも、地域側の捉え方はさまざま。そもそも住民が制度を認知しておらず、活動がしづらいという意見もありました。活動の方法や受け入れ体制も違うため、環境に馴染むまでに時間がかかってしまうケースが多く見られています。

活動内容が曖昧、行政が把握していない

募集をかけるときに「情報発信」や「加工品の開発」といったテーマは決められています。しかし、具体的な活動内容まで考えられていないことも。「地域に入ってから、実現できる条件が揃っていないことが分かった」という参加者もいました。

募集要項と実際の活動内容にズレがある

地域おこし協力隊の任期は最大3年。しかし、任期満了前に辞めてしまう隊員もいます。要因のひとつが、募集要項に書いてあった任務の内容とズレがあること。なかには、役場や観光協会の案内係ばかりで全く外に出られない(活動できない)ケースもあったようです。

活動費の捉え方が受入自治体によって違う

地域おこし協力隊には月額の給与のほかに、活動費として必要に応じた資金が支給される自治体と、そうでない自治体がありました。認められる使い道は地域によってさまざまで、事業に必要な事務費の決裁がおりない、時間がすごくかかってしまうということも。

マネタイズに困っている

任期終了後の進路について迷っている隊員がたくさんいます。起業や新規事業を考えますが、なかなか一筋縄にはいきません。せっかく地域に関わっても、結局、都市部に戻り企業に再就職するケースもあるのが現状です。

副業ができない環境

自治体や雇用形態によっては副業が禁止されていることも。しかし、任期終了後に起業や独立することを視野に入れるなら、副業できない環境は隊員の可能性を狭めてしまいます。

地域おこし協力隊同志のネットワークがない

隊員同士がつながる機会があまりなく、地域間で情報を交換をしたほうがより良い課題解決につながりやすいはず。今回の視察&交流会のように、関係を築ける体制や仕組みが求められています。

地域側と隊員側の両者が幸せになるには?

京丹後市峰山町で移住支援センター『丹後暮らし探求舎』を運営する坂田さんは、京丹後市の移住支援や街づくり、教育分野に関わりながら、前述の関さんや中川さんなど、京丹後エリアで活動している地域おこし協力隊の“相談役”も担っています。

協力隊OBでもある坂田さんも交えながら参加者同士で懇談会を開催。食事を囲みつつ、意見交換をする中で、地域おこし協力隊の課題から今後のあり方が見えてきました。

地域おこし協力隊は利用するくらいがちょうどいい

漠然と「まちづくりがしたい!」と思って、地域おこし協力隊になるのやめたほうがいい。その地域で取り組みたいことが具体的にあったり、都会から地元にUターンする手段として活用したり、活動の目的を明確してから応募すべきという意見がありました。

また、その文脈のなかで「地域おこし協力隊という名前を変えるべき」という声も。任期終了後、地域課題を解決に向けた起業を見越しているなら、例えば、「地域起業コーディネーター」という肩書きで募集するだけでも、応募する人が絞られてミスマッチを防げるかもしれません。

地域側に受け入れる土壌が整っていない

地域おこし協力隊を募集するとき、地域側の受け入れ態勢が整っていない場合が多いのだそう。地域でゼロから何かを成すには3年間は短すぎる。地域の土壌が温まった状態で地域おこし協力隊に入ってもらうほうが、スムーズに活動をはじめられるはずです。

また、地域と隊員のミスマッチを防ぐためにも、募集方法の見直しが必要という意見もありました。どのような活動内容なのか、どのような人たちが、どのような人を募集しているのか。配属先や任務内容をアピールしながら募集することで、ミスマッチが少ないし、地域に入る側も、受け入れる側も心構えができるはずです。

第3者の相談役がいない

どのように地域と関係を築けばいいのか、起業や新規事業に向けてどう動けばいいのか。地域おこし協力隊のなかには、全てが初体験の人もいるでしょう。しかし、経験や専門知識がない行政に相談するのは難しい。

そこで、地域おこし協力隊が活動する上で困ったときの窓口と、事業を進めていくときの窓口を設置すれば、任期終了前に挫折してしまう人を減らせるかもしれません。京丹後だと坂田さんのようなサポーターの存在はとても大切です。

前任の活動を引き継ぐ環境がない

地域おこし協力隊の任期終了後、3年間培ってきた事業が終わってしまうのはもったいない。むしろ、3年目でやっと軌道に乗りはじめるでしょう。そこで、活動を引き継げる環境や専用の活動マニュアルがあれば、隊員側の不安もぐっと抑えられますし、受け入れる側も対応しやすいはず。成功や失敗事例もストックし、少しずつ地域が良くなっていく環境づくりが求められています。

地域おこし協力隊は、地域のさまざまな課題解決に有効な制度。どのようにすれば最大限に活かすことができるのか、隊員にとっても受け入れ側にとっても幸せになれるのか。制度導入から10年を経た現在。改めて、見つめ直す時期が訪れています。

地域おこし協力隊を未来に活かすためにできること

藤本:1泊2日で実施された『地域おこし協力隊の現地視察&交流会 in 丹後』。活動内容をはじめ、実現を目指している目標や抱えている悩みなど、地域おこし協力隊の実態と状況について把握することができました。

参加者に共通していたのは、みんな自分の所属する地域のことが大好きだということ。暮らしの環境やローカルビジネスを盛り上げるために試行錯誤する姿を見て、京都の地域がもっとおもしろくなると感じました。そのためにも、現役の隊員が活動しやすい環境づくりはもちろん、未来の隊員が地域に入りやすい体制づくりが求められています。

現在、京都移住計画では、京都府全体の隊員ネットワーク構築やプロジェクトでの連携、隊員の採用・育成、地域ビジネスづくりといった、事業展開を模索中です。

京都移住計画が取り組む、今後のチャレンジにもご期待ください!

視察&交流会 参加者

中川 圭(なかがわ けい)さん
京丹後市 地域おこし協力隊(大宮町)
次世代の暮らし・生き方を実践する村『五十河桃源郷』を運営。

大木 史帆(おおき しほ)さん
京丹後市 地域おこし協力隊(丹後町)
地元の食材を活かした加工品づくりや古民家の拠点づくりに取り組む。

吉田 浩士(よしだ ひろし)さん
京丹後市 地域おこし協力隊(久美浜町)
観光漁業の復興を図るため、漁業活性化や『風蘭の館』の運営などを行う。

秋鹿 陽一(あいか よういち)・恵美子(えみこ)さん
宮津市 地域おこし協力隊
オリーブ栽培をしながら、ご夫婦で陶芸『AIKA CRAFT』を営む。

松村 利香(まつむら りか)さん
綾部市 地域おこし協力隊
地域の高齢者の健康寿命を延ばす、コミュニティナースとして活動中。

山内 光雅(やまうち みつまさ)さん
南丹市 地域おこし協力隊
空き家の再生などに取り組む『南丹空き家再生プロジェクト』を運営。

稲本 真也(いなもと しんや)さん
京丹後市 地域おこし協力隊(弥栄町)
山間部の木材を活用した『モバイルハウス(動画)』を考案。森林保全につなげる。

村上 幹生(むらかみ みきお)さん
大宮町 地域づくり支援員
地域の自治機能の強化や持続可能な地域づくりをサポート。

藤田 始史(ふじた もとし)さん
笠置町 地域おこし協力隊
笠置まちづくり株式会社の運営に関わる。1級建築士の資格を持つ。

関 奈央弥(せき なおや)さん
京丹後市 地域おこし協力隊(峰山町 五箇地区)
管理栄養士の資格や経験を活かし、丹後を食という視点から発信。

藤本 和志(ふじもと かずし)さん
京都移住計画/京都移住コンシェルジュ
移住支援からローカルプロジェクトづくりの企画・運営を行う

山本 英貴(やまもと ひでき)
福知山市 地域おこし協力隊
福知山ワンダーマーケットの運営をはじめ、中心市街地の魅力・情報を発信。

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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