2023.10.12

日常に心温まるコーヒーを。京都での暮らしの一部になるお店「WIFE&HUSBAND」

CHECK IN

京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。

鴨川から歩いてちょうど100歩のところにある小さなお店。扉を開けると、体に染み渡るようなホッとするコーヒーの香りとご夫婦のあたたかい笑顔が迎えてくれました。食を巡る第24弾は、北大路の落ち着いた住宅エリアで2015年にオープンした自家焙煎コーヒー店「WIFE&HUSBAND(ワイフアンドハズバンド)」を紹介します。毎シーズン国内外からの観光客が多い京都。ここでは、ふたりが感じた”心地よい”京都での暮らしをおすそ分けされています。

自分たちがいいなと思ったものを。

家族が増えたことをきっかけに新しい住まいを探すとき、鴨川の近くに住みたいという思いがあったと話す店主の吉田恭一さん・幾未さん。もともと亀岡市出身だという幾未さんは一度、錦市場の近くで暮らしたことがあり、次に住むなら緑が近くに感じられる場所がいいなと感じたそう。20代の暮らし方とはガラッと変えて、自分たちが心地よいと感じられる場所を探し求めていたときに出会ったのが北大路エリアでした。

前職は、紅茶専門店で働いていた恭一さん。「ゆくゆくは、カフェがしたいなという気持ちはありました。家を購入したくて探していたときにここを見つけて、どんどんやりたい気持ちが募りました」と当時を振り返ります。

自分たちがいいと思うものや好きなものを詰め込んだ空間でお客さんに喜んでもらいたいという思いでお店を始めたふたり。店内では、恭一さんこだわりの深煎りコーヒーや幾未さん考案のトーストやケーキが楽しめます。

写真提供:WIFE&HUSBAND
写真提供:WIFE&HUSBAND

「W&H」の文字が目を惹くネイビーやレッドの箱に入ったコーヒー豆は、「箱も取っておきたくなる」と自宅のお気に入りのスペースに飾っているお客さまも多いのだとか。W&Hを始めたときに作った透明感のあるすっきりとした味わいの「DAUGHTER」や、コクが深くミルクに合うどっしりとした風味の「SON」、カフェインレスの豆を使用した「MOTHER」や季節に合わせた期間限定のコーヒー豆があります。どれも物語を感じるオリジナルブレンド。メニュー表の前で、どのコーヒー豆にするか頭を悩ませるお客さまの姿も。その他シングルオリジンの豆が5種類。どれもふたりが好む深煎りで焙煎されており、酸味が少なく、透明感のある味わいです。

そして、ここには他のどこにもない体験ができる、とっておきのプランがあります。魔法瓶入りのコーヒー・小さなお菓子・マグカップ・テーブルクロスが入ったかごを持って、鴨川で過ごすピクニックプランです。アンティークのスツールやテーブルもオプションでレンタルできます。「今日は、どこにしようかな」とお気に入りの場所を見つけて、自分のためにピクニックセットを準備するのも楽しみの一つではないでしょうか。

「特に子どもが小さい頃は、しょっちゅう川に行っていましたね。何をするでもなく、目の届く範囲で遊ばせていました。ただぼーっとしているだけで気持ちがいい」とほほえみながら話すふたり。そんな京都の日常を味わってもらおうと始めたピクニックプランは、ふたりが実際に感じた鴨川で過ごす心地よさを遠方のお客さまはもちろん、京都在住のお客さまも楽しんでいるそうです。

「心地よい風が吹き抜ける季節には、たくさんのお客さまが思い思いの場所でコーヒーを楽しまれます。ピクニックから帰って来る時、行く前より笑顔になって戻って来られるのが印象的です」

写真提供:WIFE&HUSBAND
写真提供:WIFE&HUSBAND

お客さんが喜んでくれるとうれしい。

「ただ黙々とコーヒーを提供するのではなくて、コミュニケーションをとったほうが、お客さまに喜んでもらえるんじゃないかと思っていて。自分たちのアクションでお客さまが喜んでくれると、僕たちがうれしいんです」

そう話すふたりのお店は、常に笑い声が絶えません。また、地元の方や海外からの観光客も多く、店内ではいろいろな言語が飛び交っています。
常連さんと初めて来店されたお客さまが京都のおすすめの場所について話していたり、スタッフが海外からのお客さまに日本の好きな食べ物を尋ねたりしている場面をよく目にします。

「お店の扉を開けた時よりも、帰る時の方が楽しい気持ちになってもらえたらうれしいです」とお互いの目を見ながらほほえみ合うふたり。1人で訪れるお客さまも多いですが、まあるい円の中に入ったような会話が楽しめるのも、心満たされる理由の一つでしょう。

身近にある文化をちょっと深掘りしてみる。

恭一さんは、大学進学を機に京都へ。幾未さんは、生まれも育ちも京都です。京都歴が長いふたりは、身近にある京都の文化に触れ、楽しみながら過ごしてきました。京都は古い町並みや寺社仏閣が多く、季節の行事が身近に感じられることから、「この行事や習わしはなぜ始まったのかな?」と意味を調べてみることで、より深く楽しめるようになったそうです。

お正月飾りの意味について話しながら、「昔からの習わしの多くは、家族が幸せに暮らせるようにという願いが込められています。意味を調べると、駄洒落みたいなものが多いんですよ」と笑う幾未さん。前向きな気持ちで暮らすために取り入れているそうです。

「季節の移ろいを生活に取り入れることで、楽しく丁寧な暮らしができて、すごく心地いい」と話す店内には、鴨川で摘まれた野花が飾ってありました。

流行りや面白みのある刺激的なものにとらわれず、自分たちらしい質の良い日常を大切にするふたり。

コーヒーを飲んで感じたあのホッとする心地よさは、自分の日常をちょっといいものにできたという満足感からくるものだったのかもしれません。

『WIFE&HUSBAND』
住所:京都市北区小山下内河原町106-6
TEL:075-201-7324
営業時間:10:00-17:00(ピクニック15:00LO、カフェ16:30LO)
定休日:不定休
H.P:https://www.wifeandhusband.jp

執筆:鳥飼 鈴夏
編集:藤原 朋

CHECK OUT

友人とピクニックセットを借りてのんびり過ごしたり、母とカフェでトーストを食べたりと、私の大好きなお店。そんなお店とご縁をいただきW&Hで働きはじめて1年が経ちました。コーヒーを飲めるようになったきっかけは、ここのすっきりとした深煎りのコーヒーに出会ってから。まだ「コーヒーは大人の味」だと思っている方もここのコーヒーを飲めば、きっと沼にハマるはず…!

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