CHECK IN
京都の日常を彩る食を訪ねる「食を巡る」シリーズ。京都らしい食べ物や飲み物、京都移住計画メンバーのお気に入りの一品をご紹介する連載コラム記事です。食べることは生きること、京都での暮らしに彩りを与える物語をお届けします。
食を巡る第20弾は「ササキパン本店」を紹介します。太閤秀吉のお膝元・伏見桃山の歴史ある商店街で、伝統の味を守り続けている4代目店主・佐々木浩二さんにお話を伺いました。
創業大正10年!地元で愛される老舗パン屋さん
昭和40年代に建てられた店構えがそのまま残る「ササキパン本店」。創業はさらにさかのぼって大正10年というから驚きです。当時は「金龍堂」という名前であんぱんを売っていました。
「うちはその時に手に入るもので作る、というスタイル。砂糖が手に入りにくい時代にはサッカリンという人工甘味料を使っていたこともあったようです」と佐々木さんは話します。時代の流れの中で、人々の生活に寄り添う手頃な価格をキープし続けるササキパンは、常に大衆の強い味方として地元で愛されてきました。
歴史ある商店街で幅広い人々を受け入れる
ササキパンのある納屋町商店街は、豊臣秀吉の伏見城築城と同時に城下町として誕生しました。周囲に日本酒の酒蔵や寺田屋などの観光スポットがあり、大手筋商店街、竜馬通り商店街といったほかの商店街とも隣接しているこの場所には、観光客から地元の住民まで様々な人々が訪れます。
地域密着型のパン屋でありながら、いわゆる「いちげんさん」も入りやすいササキパン。扉のない店の前に置かれたショーウィンドウ代わりの番重(ばんじゅう)には手書きのポップと袋詰めにされたパンが並び、商店街を行き交う人々の足を自然と引き止める魅力を放っています。
あんぱんにサンライズ…。「昔懐かしい」がうれしい
「店では季節に合わせた新商品なども販売していますが、基本的には昔からの味を守るようにしています。お客さんもその味を求めて来る方が圧倒的に多いですからね」
その言葉通り、ササキパンの商品は素朴で懐かしく、優しい味のものが揃っています。看板メニューはジャムパン、あんぱん、メロンパンにサンライズ。
常に家の戸棚にストックしておきたくなるような、朝食にもおやつにもぴったりのソフト系のパンがたくさん。空腹で訪れたら、思わず買いすぎてしまいそうです。
若者のハートも捉えるレトロなデザイン
「少し前までは地元の年配客が中心でしたが、最近はSNSの影響か若いお客さんがずいぶん増えました」
佐々木さんがそう話すのも納得、昭和30年に考案されたササキパンのパッケージはとにかく「映える」んです。
レトロでキッチュなデザインは文具やエコバッグのデザインとしても採用されており、グッズは店頭でも購入することが可能。SNS担当の奥様の尽力もあり、パンと併せて密かな人気を集めています。
店を訪れた際には、ぜひこちらもチェックしてみてください。
これまでも、これからも、この場所で
素朴で懐かしい雰囲気なのはパンやグッズだけではありません。お客さんからは「ぶどうパンある?」、「週末にサンドウィッチを10個取りにきたいんだけど」、「幼稚園の歓迎会で使うからロールパン全部ください」といったリクエストが次々と投げかけられ、佐々木さんも気さくに会話に応じます。
長すぎない、丁寧すぎない、それでいて温かみのある接客も、この店に受け継がれている魅力のひとつだと感じました。
「伏見桃山は商店街も元気で必要なものは何でも揃う、一度住んだら離れられない場所です。この場所で幅広い世代のお客様と向き合いながら、これからも伝統を守り続けていきたいですね」
材料や客層が時代と共に変わり続けていく中で、佐々木さんは店の主軸である味と「懐かしさ」を守りながら、これからもパン作りを続けていきます。
編集:藤原朋
執筆:大久保久美子
CHECK OUT
私がササキパンと出会ったのは、子どもが1歳になった頃。大きすぎない、甘すぎない、子どもが手に持って食べられるシンプルなパンを求めて街をさまよっていた時に、店頭の小さなロールパンが目に飛び込んできました。その優しい味わいは大人でも繰り返し食べたくなるもので、以来商店街に立ち寄るたびにごっそり買い込んでいます。個人的な推しはメープルクーヘン。買った当日に食べるとフワフワで最高です!