2024.06.13

今年もこの季節がやってきた!夏の京都に涼を奏でる、夏季限定ユニット「中村風鈴店」

CHECK IN

京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。

夏の京都はとにかく暑い。

旅人も住人も口を揃えるなか、チリンチリンという爽やかな音色と共に、灼熱の京都に涼を運んでくれるのが「中村風鈴店」です。

提供:中村風鈴店

レトロな乳母車にパラソルをさし、いくつもの風鈴を吊るしながらまちを闊歩する姿は、まるで物語から抜け出したよう。

京都移住計画メンバーの中でもファンが多い中村風鈴店。今年の売り歩きもスタート間近となった5月某日、心を弾ませながらおふたりの元を訪ねました。

お互いの持ち味と遊び心を、風鈴に込めて

提供:中村風鈴店

中村風鈴店は、陶芸家の中田誠(なかた・まこと)さんと、木版画家の藤村洋介(ふじむら・ようすけ)さんのユニットです。それぞれが作家活動を行うかたわら、夏季限定・売り歩きスタイルで活動をはじめ、今年で19年目を迎えます。

中田さん

今から20年ほど前、僕の自宅兼アトリエの一室を彼に使ってもらうことになったんです。お互い常連だったカフェのスタッフさんの紹介で知り合ったのですが、初めて会ったときから意気投合して、ね。

藤村さん

そうそう。五条のスタバで5時間くらい話し込んで(笑)。当時、大きな作品をつくるためのスペースが必要だったので、アトリエを使わせてもらえることになって助かりました。

中田さん

制作の合間に雑談したり、作品を見せてもらったりするなかで、彼の才能をもっと広く知ってほしいと思うようになりました。それで一緒になにかできないかと考えた結果、風鈴屋が良いのではと。

風鈴本体は中田さんが、短冊は藤村さんが手がける。売り歩きでは、ひとつひとつ異なる風鈴の音色を聴き比べ、約20~30種類の短冊を組み合わせることで世界にひとつのMY風鈴を購入できる

藤村さん

そうそう。1年目は僕らが出会ったカフェの店先で、2年目は祇園祭で手売りしました。

中田さん

でも、元々は作家としての宣伝目的で始めたことなので、京都のいろんな場所を歩いて回りたかったんですよね。それで、あるとき出店したイベント先で、建物のオーナーのおばあちゃんにそのことを話したら、「こんなんあるよ」って蔵から古びた乳母車を出してきてくれたんです。それを譲り受け、色々改造して、現在の売り歩きスタイルが実現しました。

通販が当たり前の時代でも、「売り歩き」にこだわりたい

売り歩きは、おふたりが普段から懇意にしている飲食店などの店先に数時間滞在し、また別の場所へと移動するスタイルです。出没場所や日程は、手づくりの「売り歩きMAP」で確認できます。

藤村さん

ちょうど今年の売り歩きMAPが完成したところです。出来立てホヤホヤです!

中田さん

おー!昭和感たっぷりでめっちゃ渋いな(笑)。良いやん!

風鈴目当てに、決まった日時、決まった場所に足を運ぶ。それは、ネット通販が当たり前になった現代においてはかなりアナログな方法です。長年、「売り歩き」を貫くのはなぜでしょうか。

提供:中村風鈴店

藤村さん

売り歩きの良いところは、お客さんの反応を生で見られることです。お客さんも、風鈴の音色や手触りの違い、短冊のデザインをあれこれ悩みながら選ぶのを楽しんでもらえたら嬉しいですね。中村風鈴店を始めた当初は、「京都の夏の風物詩になれたら……」という想いがありました。おかげさまで、この季節を心待ちにしてくださる方も増えて嬉しいです。

中田さん

先ほどもお話したように、個々の活動を宣伝するために始めたことなので、オンラインだと本末転倒になってしまうんですよね。それに、オンライン販売が主流の時代だからこそ、それに逆行したアナログなやり方も面白がってもらえたら嬉しいです。そうやって、京都に足を運ぶ人が増えたら良いなと思います。

人が繋がり、新しいものが生まれる。京都暮らしの面白さ

兵庫県出身のおふたりは、大学進学と同時に京都に移住し20年以上になるそうです。京都での暮らしや、作家活動をする上での京都の魅力を、どのように感じているのでしょうか。

中田さん

住みやすいまちですよね。僕のように、大学で京都に来てそのまま住み続けている人も多いんじゃないかな。元々お寺が好きだったので、移住したての頃はよくお寺に行っていましたね。カフェブームの時には色んなお店に行きましたし、そこから繋がったご縁もたくさんあります。あとは、パッと家を出たら、鴨川など綺麗に整備された自然環境があるのも京都の魅力かな。

藤村さん

みなさん優しいですよね。昔は行きつけのカフェのマスターに恋愛相談とかもして、それが実って結婚もしましたし。僕たちの出会いもカフェのスタッフさんの紹介ですし。人の縁の繋がりやすさを感じる根本には、やさしさがあるのだと思います。

中田さん

作家活動の面でいうと、京都には陶芸に必要な材料や研究施設が充実しているので、環境的にも恵まれていると思います。インスピレーションを受けるような刺激も多いですしね。

藤村さん

創作意欲を掻き立てられる刺激が多いと感じます。実際に、風鈴の短冊でも京都五山送り火や人力車をモチーフにしたものが生まれました。

風鈴の音を鳴らすために吊るされた小さなおもりを舌(ぜつ)と呼ぶ。よくみると、錨(いかり)マークがあしらわれているのが分かる

藤村さん

錨マークは神戸のシンボルでもありますが、それを京都タワー風にアレンジして舌に入れています。「神戸出身のふたりが京都に錨をおろす」っていうメッセージを込めました。

中田さん

恥ずかしいから僕はよう言わんのですけどね(笑)。そんな細かいデザインの遊びも、ぜひ見てみてください。

来年で20周年。中村風鈴店にピリオドを打ち、個々の創作活動へ

来年で活動20周年を迎える中村風鈴店。その節目に、おふたりはある決断をされたそうです

中田さん

個々の作家活動に専念するため、来年20周年の節目で中村風鈴店を終えようと思っています。ラストイヤーとなる来年の夏には、これまで出会ったお客さんやお店の皆さんに感謝を伝えられるイベントをしようと考えています。

藤村さん

まずは今年の売り歩き(&呑み歩き)で、皆さんにお会いできるのが楽しみです。今年も京都の暑い夏を、一緒に楽しみましょう!

『中村風鈴店』
中田誠さん https://www.instagram.com/macop2/
藤村洋介さん https://www.instagram.com/yosukefujimura.kyoto/
今どこダイヤル 090-4286-4804(雨天時の問い合わせなどはこちらへ)

執筆:佐藤 ちえみ
編集:北川 由依

CHECK OUT

わたしの夏の記憶には、いつも中村風鈴店がありました。
お気に入りの風鈴を初めて買ったあの夏。短冊選びに時間がかかり、友人に怒られたあの夏。不注意で落として割ってしまい、2代目を買いに走ったあの夏。乳母車の前で、知り合いとばったりあったあの夏。

そんな夏の風物詩も、来年で見納め。ファンとしては寂しいですが、毎年家で飾るたびに大切な記憶を思い出すのでしょう。
今年の売り歩きももうすぐ始まります。皆さんも「売り歩きMAP」をたよりに、お気に入りの風鈴を見つけてみてくださいね。

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