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京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。
紙に落としたインクが混じり合い、美しく、不思議な紋様を描く「アルコールインクアート」。どこかで見かけたことがある、という人もいるのではないでしょうか。第15弾は、アーティストのmikaさんをご紹介します。アルコールインクアートの第一人者として、これまで歩んできた道のりについて伺いました。
住みづらさを感じた京都のまち
ーー以前は地元、名古屋に住んでいたとお聞きしました。なぜ、京都へ移り住んだのですか?
パートナーの転勤がきっかけです。私は西洋文化が好きなので、日本の伝統的な文化にはあまり興味がなくて。「京都に住みたい!」という気持ちで移住した訳ではなかったんですよ。ただ、パートナーが外国人なので、「外国人が多く訪れる京都は住みやすいのかな」と少し期待していて。
でも、大手企業に勤めていても、なかなか家を借してもらえなかったり、行く先々で観光客に間違われたり(笑)。はじめはかなり住みづらさを感じていましたね。
ーーあまり、京都の印象は良くなかったんですね。
そうですね。でも、京都のお店や建物を見るのは面白いなと思いました。京都は街で使用できる色の種類が決まっていますよね。全国チェーンのお店でも、京都ならでは色や柄が使われている。引っ越しで街に入った瞬間に「特別な場所だ」と感じました。作品を作るうえで、刺激を受けていることはたくさんあると思います。
アルコールインクアートとの出会い
ーー「アルコールインクアート」について教えてください。
アルコールインクアートは、さまざまな色のアルコールインクを耐水紙に垂らし、混ぜ合わせながら抽象画を描くアートです。歴史は浅いですが、海外では主流になりつつある新しい技法のアートなんですよ。
ーーmikaさんはどうやって、このアートを知ったのですか?
キャンドルを扱う会社で働いていた時に、制作に使う材料としてアルコールインクを知りました。一時期、アルコールインクをステンシルのように、ポンポンと押しつけていくだけの簡単な着色技法が流行ったんです。でも簡単すぎて長くは流行らなかったので、商材が余ってしまって。それで「ほかに使える用途はないのかな」と調べてたどり着いたのが、アルコールインクアートでした。
ーーキャンドルだけでなく、アートに注目していったんですね。
SNSなどで海外の取り組みを調べるうちに、インクを紙に広げてアートを描く動画や画像がたくさん出てきたので、「私もやってみたいな」と見よう見まねでスタートしました。昔から絵を描くことは得意だったので、自分なりにアレンジして、掘り下げていった形ですね。
キャンドルを扱う会社を辞めてからは、ハンドクラフトの作家として、アルコールインクアートやキャンドルを作って販売していました。けれど、それを見ていた兄に「それじゃ面白くない」と言われたんです。
日本ではアルコールインクアートはほとんど知られていないし、私が編み出したオリジナルの技法は高い価値があるんじゃないのか、と。
そこから兄と二人三脚で活動することに決まり、2020年3月、社団法人として「アルコールインクアート協会」を立ち上げようと動き始めました。認可が下りたのは9月ですが、その間にも企業とのコラボレーションがスタートするなど、活動の幅が大きく広がるようになりました。
京都で出会ったインスピレーションの源
ーーどのような企業とコラボレーションしていますか?
秋葉原の「なでしこ寿司」では、私のアートが描かれたお皿や箸置きを使っていただいています。店主が美大出身の女性の方なので、「お寿司×アート」という提案に関心を寄せてくれて。
現在はコロナの影響で一時的にストップしていますが、なでしこ寿司と関連があるニューヨークの寿司屋とのコラボレーションも予定しています。お皿や内装などにアートを用いていただけるようなので、ぜひ実現させたいですね。
また、アルコールインクの原料メーカーである「コピック」からオファーをいただいて、ウェブセミナー動画の講師や、アルコールインクアートの紹介動画制作など、アドバイザー的な立ち位置で関わらせていただいています。今秋発売されるインクのプロデュースも担当させていただいています。
アルコールインクアート紹介動画:https://youtu.be/txKqcVorLH0
ーーアートを描くとき、インスピレーションを受けるものはありますか?
京都に住んでから、着物を扱う会社でECサイトの運営をしていました。着物や和小物をWebにアップしていく作業をするんですが、その時、和装の色合わせの面白さに気づいたんです。
着物の色合わせ、柄合わせ、帯のリバーシブルの色合い。赤や茶、金など女性の着物のエッセンスを取り入れたことで、お寿司に似合うお皿になりました。
来年京都で展示を行う予定ですが、ここでも和のテイストを取り入れた作品にしたいと考えています。
日本から海外へ!さらに広がる活躍の場
ーー最後に、今後の展望を聞かせてください。
まずはアルコールインクアートを、多くの人に知ってもらいたいです。技術的にしっかり確立し、美術やアートの教科書に載るレベルのものに仕上げたいですね。協会の技術を習得した会員さんが現在50名ほどいるので、その方たちが活躍できるフィールドが広がるようにサポートもしていきたいと思っています。
また、アルコールインク以外の画材も使って、アートに取り組んでいきたいです。材料が日本にないから、できないアートってたくさんあるんです。まだ日本に輸入されてない材料を仕入れて、新しいアートに挑戦していきたいですね。目標は、チームラボと仕事をすること!夢はますます広がるばかりです。
来年には、京都市京セラ美術館で展示を控えているmikaさん。京都、ロンドンの巡回展だそう。日本、そして世界へ羽ばたく「アルコールインクアート」。mikaさんの今後の活躍に、目が離せません!
▼一般社団法人アルコールインクアート協会サイト
https://www.alcoholinkartjapan.com/