2025.09.17

北大路で愛される「アメリカヤ楽器店」が生み出す、人と音楽が交わる時間。

CHECK IN

京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

初心者もウェルカムに受け入れてくれる、素敵な楽器屋さんが京都にあることをご存じですか?

信頼のおける音楽の専門家がいるところ。
音楽をはじめたいと思った時に、やさしく背中を押してくれるところ。

今回ご紹介するのは、今年80周年を迎える「アメリカヤ楽器店」です。

ガラス張りの入口から中をのぞいてみると、楽しそうにお話しするスタッフさんとお客さんの様子が伺えます。

地下鉄北大路駅の向かいにある、大谷大学の真横の立地。
周りは多くの人が行き交う商店街です。

大小さまざまな楽器ケースを持った方が、アメリカヤ楽器店に入っていきます。

戦後から80年つづく老舗楽器店

アメリカヤ楽器店の創業は1945年、戦後間もない時期でした。店名は、先代のお母さまが営んでいた「アメリカヤ洋装店」の名前を引き継ぎました。名前にアメリカが入っていますが、お店のデザインは英国スタイルです。

現在、北大路エリアは北区ですが、創業時は北区がまだ上京区から分区されていませんでした。その当時、北大路駅は市電の車庫だったのだとか。

お店の壁紙や置いてある家具の高級感から、まるで博物館に来ているように見入ってしまいます

お店で取り扱っているのは、バイオリンやチェロといった弦楽器や、ピアノ、アコーディオンなどです。創業当初、最初にお客さまの手元に届けた楽器は、ドイツ製のピアノ・ベヒシュタインでした。こちらの販売をきっかけに、様々な種類の楽器を取り扱うようになったのだとか。現在は、ギターや可愛い姿形のウクレレもあります。

夏にぴったりな音色のウクレレ。色や形が違っていてかわいい

アメリカヤ楽器店は歴史ある楽器店でありながら、なぜか緊張しすぎない空気感と親近感があります。そのわけを知りたくて、ここで40年働くベテランスタッフの長岡哲也(ながおか・てつや)さんにお話を伺いました。

幼稚園から始めたピアノの演奏を快く披露してくださる長岡さん

長岡さんがピアノを始めたきっかけは、なんとアメリカヤ楽器店との出会いだったとのこと。

「幼稚園の頃に、母とアメリカヤ楽器店に行きました。私が知らない間に母が注文していたようで、後日ピアノが家に届いたのです。ピアノをする気がなかった私が駄々をこねていると、母に『じゃあ、アメリカヤ楽器店にピアノを返しに行こう』と言われて、連れてこられたのがピアノ教室でした。母にうまいこと騙されたんですね(笑)」

ピアノ教室の先生との出会いがきっかけで、長岡さんはそのままピアノの道を進むことに。調律師の学校に行き、その後しばらくは、大手メーカーでピアノの調律の仕事をしていました。

「大手で働いていた時は、調律をするにしても、とにかく数をこなすことやスピードが求められます。そこに少し違和感を感じたこともあり、退職して京都へ帰ってきました」

それからはアメリカヤ楽器店でおよそ40年間、楽器の販売からメンテナンス、ときには演奏会などのイベントまで様々な取り組みをされています。

楽器を実際にさわって選ぶことを大切に

バイオリンの弓。弓の手元側から馬毛が出ているフロッグ(毛箱)には主に黒檀が用いられるのが一般的ですが、水牛の角やマンモスの牙などが用いられているものもあります

アメリカヤ楽器店が、楽器を販売する際に大切にしているのは、「実際に演奏してもらう」こと。先代の社長から引き継がれている思いだそうです。

「バイオリンなどの弦楽器を置いている店では、『楽器に手を触れないでください』という注意喚起をしているところもあります。ですが、やっぱり音を出さないと分からない。どんどん触ってもらいたいですね」

スタッフの皆さんはたくさんの知識と技術を持っていますが、とてもフレンドリーに話しかけてくれます。

編集長の北川にチェロの鳴らし方をレクチャーしてくださる長岡さん。音をきれいに鳴らすことは難しいのだとか。音が鳴ったことに舞い上がって、音楽の沼にはまってゆきます

初心者にとって、音楽の世界に第一歩を踏み出すには勇気が必要です。ですが、アメリカヤ楽器店は、その門戸をさらっと開いてくれるお店。音楽の楽しさを、一番に教えてくれます。

一人ひとりに寄り添う柔軟な対応

アメリカヤ楽器店では、楽器の販売だけでなく、弦の交換などの定期的なメンテナンスも行っています。以前、筆者もギターの弦の交換をしていただきました。
「どのような弾き心地を求めているか」などの相談に親身に乗ってくれるので、とても心強いです。

「大手のお店だと、できることとできないことの線引きがはっきりしているかもしれません。でもここでは『ちょっと融通をきかせてやってほしい』という声に可能な限り応えたい。無理を聞くというのではなく、ある程度の柔軟性を残していくのが私たちの役目だと思うんですね」

以前、移住計画のメンバーが、アメリカヤ楽器店に訪れた時には、社長の沼田さんが気さくに話しかけてくれて、「トランペットを始めたばかり」と話すと先生を紹介してくださったのだとか。

ピアノと弦楽器がメインのお店なのに、トランペットについての相談にも気軽に乗ってくれるところに、まさに柔軟性の高さが伺えます。

教室や演奏会を通じて、人と音楽をつなぐ

アメリカヤ楽器店が運営している音楽教室には、25名以上の講師がいます。スタッフの皆さんは、講師の方たちとのつながりや、教室と楽器店との連携も大切にしています。

ヴァイパーバイオリン奏者の大城先生。お店でお弟子さんにレッスンをされているところをたまたま拝見することが出来ました!

講師と生徒のつながり、講師と楽器店とのつながりを生み出す形のひとつに、月謝袋があります。

アメリカヤ楽器店が運営する音楽教室では、講師が生徒から直接月謝を受け取り、楽器店のスタッフに手渡しします。

「お月謝袋というアナログな形のやり取りは、講師の方々とのコミュニケーションをとるツールのひとつになっています。受け取るときにレッスンや生徒さんの状況を直接聞くこともできます」

音楽教室に通う生徒さんたちを主な対象に、各楽器別にそれぞれ年に一度、教室の発表会を開催しています。全ての楽器の生徒さんを合わせると250名くらいになるので、楽器ごとに分けて行っています。

コロナ禍で演奏会を行うことができなかったときは、アメリカヤ楽器店が主催の無観客ライブを行ったり、YouTubeで発信したりしていました。

音楽に携わる人を、これからも応援しつづける

京都の音楽シーンを支える役割を担ってきたアメリカヤ楽器店は、音楽を愛してきた人、これから始める人、音楽と関わるいろいろな人に対し「応援します。音楽は人の心に優しいもの」というモットーを掲げています。

「自分一人が楽器を持っただけではできないことも多いですよね。レッスンや演奏に携わるお手伝いもそうだし、メンテナンスさせていただくことも全部含めて応援ということです」

「私自身、幼少期からずっと何かしら楽器がそばにあって、音楽が鳴っていました。なので、もし音楽がなかったら、と考えたことはないんです。あるお医者さんは『音楽は人類がつくりだした最高のもののひとつじゃないか』とおっしゃっていました。お腹の中の赤ちゃんの感覚で、一番初めに発達するのは、視覚よりも聴覚だといいますから」

音楽によって癒される時間、楽器を演奏することに没頭する時間、それらは唯一無二の安らぎを与えてくれるのでしょう。

ぜひ、アメリカヤ楽器店を通じて、音楽とより仲良くなれるきっかけをつくってみてはいかかでしょうか。

「アメリカヤ楽器店」
京都府京都市北区小山上総町14-16
営業時間:10:00-19:30
定休日:無休(お盆と年末年始除く)
HP:https://www.americaya.jp/

CHECK OUT

わたしが趣味でギターを始めてすぐに、コロナ禍に突入しました。大学に登校出来なくなった時に、家での暇な時間を潤してくれたのがギターでした。毎日ギターを弾きまくっていたある日、盛大にギターの弦が切れてしまい、弦を張り替えてくれる楽器屋さんを探していたときに辿り着いたのがアメリカヤ楽器店でした。インターネットで購入した安いギターを持っていくのは少し恥ずかしい気がしましたが、そんな気持ちを吹き飛ばすかのようなスタッフさんの親切な対応に心が温かくなりました。あれから6年の月日を経ての取材でしたが、変わらぬ温かさと丁寧さにこの上ない安心を感じました。楽器ライフを楽しむ皆さん、ぜひアメリカヤ楽器店に訪れてみてくださいね!

執筆・撮影:西村 若菜
編集:藤原 朋

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