募集終了2020.11.24

鋳物工場を町のランドマークに。190年つづくモノづくり企業の次なる挑戦

旅行で訪れた場所を聞かれて、思い出すのは何でしょうか?
おいしかった郷土料理、歴史的な建物、美しい自然……。記憶に残る風景や出来事はさまざまありますが、きっと町のランドマークとなるような場所を挙げる人が多いはず。

今回ご紹介するのは、京都北部にある与謝野町に、誰もが訪れ、記憶に残る「町のランドマーク」となる場所をつくろうとする会社です。

与謝野といえば「ジップスクエア」と言われるランドマークをつくる

京都北部、与謝野町にある株式会社シオノ鋳工(以下、シオノ鋳工)は1830年創業。鋳型の造型スピードと品質・納期の正確さを武器に、多品種小ロットの鋳物を製造しています。
保有する金枠は100種・1000枠。多種少量生産から月産100枠の注文まで幅広く対応可能なことから、京都府内をはじめ全国各地から引き合いがあります。  

堅実なモノづくりで、創業から190年以上支持されてきたシオノ鋳工。実は2022年に向けて動いているビッグプロジェクトがあります。それが与謝野町のランドマークづくりです。

「与謝野町を訪れた人が必ず立ち寄る、町のランドマークとなる場所をつくりたいんです。工場、鋳物体験工房、カフェが一体となった新工場『ジップスクエア』をオープン予定です」

ジップは英語で「元気」、スクエアは「広場・場所」という意味があり「元気を発信したり、元気になれる場所になることを願って」名付けられました。            

そう目を輝かせながらビックプロジェクトの計画を教えてくれたのは、シオノ鋳工の7代目、代表取締役の塩野浩士(しおの・ひろし)さんです。
「子どもの頃から自然と家業を継ぐものだと思っていた」と振り返る塩野さんは、1997年にシオノ鋳工へ入社、2012年に代表取締役に就任しました。

「与謝野町は自然が豊かで食べ物も美味しく、暮らしやすい。僕はこの町が大好きなんです。だけど職業、つまり魅力ある企業がないと思われていて人口が減っている。中小企業でもこんなにかっこいいことができるんだ、ということを子どもたちに見せたいんですよ」

与謝野町の人口は2.2万人。海と山が近く、農業の盛んな地域です。

「体験工房では、自分で形を作ったオブジェや鍋を鋳物にします。完成まで2〜3日の滞在が必要になるので、その間、町を歩いたり美味しいものを食べたり、いろんな体験をしてほしいと思っているんです。旅行が終わった後も、鋳物を見たり使ったりして、与謝野町や丹後のことを思い出してもらえたらいいなって」

訪れた観光客の方々に気軽に手にとってもらえるよう「ジップスクエア」オリジナル商品も開発予定。鍋やフライパン、ダッチオーブンなどの調理器具も販売し、鋳造を身近に感じてもらいたいと考えています。

果物を包んでいたネットを鋳物にしたもの。体験工房ではこのようなオブジェも作れるようになる予定です。

働くやりがいを感じられる環境づくり

「ジップスクエア」のオープンと並行して、塩野さんが力を入れてきたことがあります。それが、社員がやりがいを感じられる環境づくりです。

「お恥ずかしい話、かつての僕は、社員は会社のために働いて当たり前だと、勘違いしていました。社長就任の数年前から、世代交代がスムーズに進むよう先代は経営のほとんどを僕に任せてくれていたのですが、その時経験したのがリーマンショックでした。」

リーマンショックの影響で受注が激減し、前年のわずか1〜2割の生産量にまで落ち込みました。注文が少ないということは、仕事がないということ。塩野さんは社員の出勤日数を調整し、自宅待機日を作りました。

「働く日が減っても給与は保証していたため、社員も納得してくれると思っていました。しかし、出勤調整の期間中に、約3分の1の社員が退職してしまいました。まさか辞めるとは想像もしていなかっので、ショックでしたね」

「この出来事があって、社員にとって給与はもちろんのこと、やりがいや会社に必要とされていると実感できる環境をつくることも大事だと、ようやく気付いたんです。社員は会社のために働くのではない。ましてや僕のために働くのではない。その人の人生のために、働いているんです」

それ以降、塩野さんは社員が働く喜びを感じられる会社をつくるため、社員自ら昇給額を幹部に提案する「昇給プレゼン」制度、花見、釣り、三輪車レースといったイベントの開催、社長と語り合う「ヒロシの部屋」など、次々とアイデアを取り入れてきました。

「南丹サンサン祭」の恒例行事、「4時間耐久三輪車レース」に、希望する社員と共に毎年出場。年によっては準優勝するほど好成績をおさめています。
季節毎にさまざまな会社イベントを実施し、親睦を深めています。

なかでも社員に好評なのが、手作り給食。若い社員がカップラーメンや菓子パンを食べていることを心配し、「社員の体と心を満たしたい」とはじめたものです。

取材に訪れた日のメニューは、手ごねハンバーグ、スパサラ、切り干し大根の炊いたん、お味噌汁、麦入りのご飯。毎日20品目を目標に、社内の厨房で手作りされている、栄養満点の昼食です。
ランチタイムに食堂を訪れると、全社員が集まり、家族で食卓を囲むように和気あいあいとご飯を頬張っていました。塩野さんも、社員のみなさんと同じテーブルを囲んで、いただきます。

「家族の幸せを願うように、僕は社員の幸せを誰よりも願っているんです。シオノ鋳工で働くことが一人ひとりが幸せにつながるよう、今後も働きやすい環境をつくりたいですね」

シオノの味で心とお腹を満たす

シオノ鋳工で活躍している、先輩たちにもお話を聞かせていただきました。

「誰が入社してきても、早くみんなと溶け込めるようにしてあげたいんです。娘や息子を見守る気持ちと同じですよ」と、とびきりあたたかな笑顔で話すのは、池本裕子(いけもと・ゆうこ)さんです。

池本さんは入社12年。社長の塩野さんと、苦楽を共にしてきたベテラン社員です。

もともとは経理のみを行っていましたが、会社規模が大きくなるにつれて担当業務も拡大。今では、仕入れ業務や福利厚生に関する手続きなども担当しています。そんな環境の変化を池本さんは、「新しい学び」と前向きに捉えスキルアップを重ねてきました。

実は池本さん、経理以外に担っている重要ポジションがあります。それがバースデースイーツづくり。シオノ鋳工では、誕生日を迎えた社員のリクエストスイーツをつくり、みんなでおやつに食べる制度があるのです。

「バースデースイーツの担当になったのは、数年前、社内イベントでスイーツをつくる機会があり、もとも料理が好きだったので立候補をしたのがきっかけです。それから昇給プレゼンで、福利厚生の充実とチーム力アップのためにバースデースイーツ制度を提案し、採用されました」

これまで給食やスイーツは、社員向けのものでした。しかし、2022年にオープンする「ジップスクエア」にはカフェを併設する予定。カフェではシオノの味を、社員のみならず地元の方や観光客にも食べてもらえるうようになります。

「今はカフェのメニューづくりも新たな仕事になりました。はじめてのことばかりで不安もありますが、みなさんに『おいしい』と喜んでいただけるように頑張りたいです」

丹後を満喫しながら技術を磨く

次に、鋳造ワーカーとして働く堀井祥平(ほりい・しょうへい)さんと、大阪府高槻市出身、仮谷明(かりたに・あきら)さんにお話をお伺いします。

左:仮谷さん、右:堀井さん

鋳造部には、鋳物の基となる木型を砂で型取り、砂型(鋳型)を作る「造型チーム」、出来上がった鋳型に溶けた鉄を流し込む「鋳込みチーム」、鋳込んだ製品を削る、磨くなどの加工を行う「鋳仕上げチーム」、錆止め塗装や最終検査をする「検査塗装チーム」と4つの部門があります。

木型を砂で型取って、鋳物を作るための砂型=鋳型を作る「造型チーム」。チームワークが大事、息をあわせ鋳型を作ります。
出来上がった鋳型に、溶けた鉄(溶湯)を流し込む「鋳込みチーム」。
製品に残ったバリやその他不要な部分を削る、切る、磨くという仕上げの工程を行う「鋳仕上げチーム」。
エアブラシを用いて下地の色の塗料、錆止め塗装、防錆油などを吹き付けたあと、出荷前の最終検査まで担当する「検査塗装チーム」。シオノ鋳工ではさまざまな産業を支える製品を生みだしています。

現在、堀井さんは「鋳込みチーム」、仮谷さんは「造型チーム」に所属しています。

「入社のきっかけは『いい会社があるよ』と知人に紹介されたから。それまで製造の仕事はしたことがありませんでしたが、次第に製品が完成した時達成感に引き込まれていきました」(堀井さん)

「僕はこれまでに鋳物に関連する仕事の経験もあり、父親も携わっていた分野なので、多少の知識はあったんです。実家のある大阪から遠すぎない場所で、畑をしながら暮らしたいと考えて、丹後への移住を検討している時にシオノ鋳工に出会いました」(仮谷さん)

仕事内容への関心はもちろんですが、それ以上にシオノ鋳工の社風に惹かれていると、二人は続けます。

「体力的には厳しい鋳造の現場ですが、仕事はすごく楽しいです。毎朝、起きると『早く会社へ行きたい』って思います。きっとそれは数々の社内イベントで、アットホームな雰囲気をつくれているから。行事があるから、仕事では直接的な関わりの少ない人とも気軽に話しやすいんです。仕事でも気軽に意見を出したり、スムーズな連携が生まれたりといった循環が生まれています」(堀井さん)

節分の日、豆まきで鬼の格好をする堀井さん。近所の子どもたちも来て、楽しそうですね。

「シオノ鋳工ではこれまでの職場と違い、自分で考え、自分で決めることが増えました。まずやってみて、いいか悪いかを考える。それを会社も認めてくれるんです。自主性を評価してくれる環境は、僕に合っていると思います」(仮谷さん)

自然豊かな環境を求めて移住した仮谷さんは、シオノ鋳工のこんな制度も嬉しいポイントの一つなのだとか。

「シオノ鋳工にはアーリータイム制度というのがあって。始業は5時50分と朝早めですが、終業で15時15分と一般の企業よりも早く終わるんです。この時間帯であれば、冬でも日が高く畑仕事も可能。郵便局や町役場の用事を済ませることもできます。なので、大阪にいた頃よりもワークライフバランスの取れた生活を送りやすくなりました」(仮谷さん)

「大阪にいた頃には、隣に誰が住んでいるかも分かりませんでした。けれど、ここではご近所さんも僕の暮らしぶりを気にかけてくれる。それが嬉しいですね。これからもワークライフバランスを大切に、丹後の暮らしを楽しみながら働きたいです」(仮谷さん)

2022年に向かって、それぞれのチャレンジ

「ジップスクエア」のオープンに向けて、一人ひとりが新しいことに挑戦するシオノ鋳工。最後に、どんな人と一緒に働きたいかを塩野さんに聞きました。

「幸せになりたいと強く願う人ですね。社員の幸せを叶えるためには、本人のモチベーションと行動が欠かせません。そのサポートを全力でやる会社だからこそ、成長したい、幸せになりたいと望む人と一緒に働きたいです」

シオノ鋳工では、「ジップスクエア」のカフェや体験工場のオープンと同時に、完成した鋳物に機械加工を施す新規事業を立ち上げる予定なのだとか。

「これまでは鋳造工程の後にある機械加工は、別会社にお願いしていました。しかし2022年から自社で機械加工を導入することによって、鋳物部品はワンストップの製作が可能になります。お客様にスムーズな発注と納期短縮が提供できますし、オリジナル商品の開発もできる。できることはぐんと広がります」

現工場では今まで通り鋳造工程を担い、新工場では機械加工を予定しています。また「ジップスクエア」に体験工房を併設するため、お客さまに鋳物製造を教えるスタッフも必要になります。

「鋳造工程を担う人、機械加工を担う人、体験工房のスタッフと、鋳造ワーカーの仕事幅も広がります。経理の池本が料理好きをいかしてカフェ担当になるように、やりたい仕事にチャレンジしてもらいやすいタイミングです。鋳造ワーカー以外にも、人事や広報、共にジップスクエアの実現に邁進してくれる企画担当もいてくれたら頼もしいですね」

「どの業務をやってみたいかは入社後に希望を出してくれたらいいので、応募時点で希望職種が定まらなくても大丈夫です。僕たちの思いに共感してくれる人がいたら、気軽に連絡をいただきたいです」

与謝野町のランドマークとなる場所をつくりたい。塩野さんが描いた夢は、今シオノ鋳工みんなの目標となり実現に向けて走り出しました。もしシオノの一員として、関わってみたいと思ったのなら、まずは気軽に連絡をしてみてください。

地元の人だけではなく、都市や地方から移住してシオノの一員になってくれる人も大歓迎です。移住に必要な「居(コミュニティ)」と「職(仕事)」、そして「住(住まい)」を用意して待っています。

※本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

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