情報テクノロジー企業として「最先端」でありながら、50年を超える「歴史」をもつ、株式会社プロット。組織の情報を守るさまざまな「セキュリティサービス」を、全国の企業や自治体に届けている会社です。
大阪と東京に本社を置くプロットですが、実は京都にも1つ、重要な拠点を持っています。それが、2015年に開設された『研究所』。そのミッションは、未来の新たなサービスの元になる、まだ「どこにもない」技術を生み出すことです。
プロットでは今回、そこで新たに活躍してくれる人を募集するといいます。京都研究所の魅力を聞くべく、現地を訪れました。

「コミュニケーションを安全にする」プロットの事業
JR丹波口駅からほど近い、インキュベーション施設「京都リサーチパーク」(以下、KRP)の一角に、プロットの京都研究所はあります。
現在、4名のスタッフが働いているのは、グリーンのカーペットが敷き詰められたゆったりの空間。これからの拡大も見越して、KRPの別室から、よりスペースの広いこちらのオフィスに引っ越してきたそうです。

まずお話を伺ったのは、常務取締役の坂田英彦(さかた・ひでひこ)さん。同社の採用を担当されており、東京本社に籍を置きながら、こうして京都にも度々足を運んでいるそうです。最初に、プロットが現在どのようなことをしているのかお聞きしました。
「『企業間コミュニケーションを安全にする』をテーマにしたセキュリティサービスが、今の主力事業です。ファイルやメールを安全にやりとりしていただくためのもので『Smooth File』『Temp Box』などのいくつかの製品があります。
直近5年間で2倍ほどの売上になっていますが、情報漏洩問題の深刻化、働き方改革やリモートワークの普及などに伴い、いろんな分野で情報セキュリティへの関心は高まっていますね。メーカーさん、鉄道会社さん、建設会社さん、金融機関さんなど、今は全国およそ3000社に導入いただいています」

最近では特に、自治体でのシェアが増加しているといいます。これは、総務省が中心となったマイナンバーへの移行がきっかけとのこと。セキュリティレベルを全国で一斉に引き上げようとする動きをプロットでは敏感に察知し、「ファイルの無害化テクノロジー」を活用した製品を生み出しました。
「従来のセキュリティ手法は、いわば『指名手配犯を探す』ものです。すでに“悪意があるもの”と認知されたウィルスにマッチングさせ、善悪の検知をしている。ただこれだと、変装したウィルスや、全く新しい攻撃は検知できません。さまざまなデータを連携するマイナンバーは、この方法ではまずいだろうと。
そこで『手荷物検査をして、武器があれば捨てさせる』ようなイメージで、入り口で全ファイルをチェックできる製品を開発しました。当時まだ海外製しかなかった技術で、最初に純国産として提供できたのは大きかったですね」

「現在は、1750くらいの自治体のなかで、300ほどで使っていただいています。教育委員会さんなどの公的機関を含めれば400以上導入されていて、日本のシェアで2位ですね。1位はまだ海外製品なのですが、より安価で安心いただけるものとして、私たちもシェアを広げています。この分野で早くNo.1を獲ることが今の目標です。
もう1つ会社として力を入れているのが、海外展開です。定期的にシンガポールなどに出展をしてきて、この1月からはベトナムに『PLOTT ASEAN』という新拠点もつくります。まずは東南アジアを中心とした開発・営業活動をしながら、Made in Japanのサービスとして、私たちの製品を世界に持っていきたいなと考えています」
「主体性」と「自己変革」が刻まれた歴史
情報テクノロジーの分野で第一線を走るプロット。一方で、セキュリティサービスを提供するようになったのは2000年代に入ってからです。どのような変革を来て、今のような企業になったのでしょうか?
「プロットの創業は1968年。『写植(写真植字)』で印刷版をつくる会社として、現在会長を務める谷川行雄(たにかわ・ゆきお)が大阪に設立しました。
印刷版をつくる技術はその後、コンピュータ制御の『電算写植』に、さらにMacを活用した組版の『DTP(DeskTop Publishing)』へと変わっていきます。谷川は『次はこの時代になる』と感じたら、いち早くそれらを導入し、会社をどんどん変化させていきました」

1990年代に入ると、『情報伝達媒体が紙からインターネットになる可能性があるのでは』と米国に進出。国内でも1999年からインターネット事業を始めました。サイトデザインからレンタルサーバ事業、システム開発などをするなかで、受託だけじゃなく「自分たちの製品を作って世の中に出したい」と思うようになったと、坂田さんは話します。
「お客さんとのやりとりに、製品開発のヒントがありました。当時、容量の大きい印刷データは、バイク便で時間とお金をかけて送っていたんです。これを『インターネットでできたらいいよね』と創業者の谷川は考え、ファイル共有サービスが生まれました。さらに、今後は『企業間コミュニケーションの安全性が重視されるはずだ』と、セキュリティ技術にフォーカスしていったんです」

「なぜここまで会社が長く続いたかと考えると、そんな風に『主体性』と『自己変革』というのを、すごく大事にしてきたからなんですよ。プロットでは、『私たちにしかできないことをしよう!』を企業理念とし、主体的に自らを変えて、自分たちにしかできないものを生み出している。働く人にも、変化に対して意欲的な方が来てくれるといいなと思います」
実際に、チャレンジの姿勢を重要視する評価基準だったり、小さなことから業務改善を提案できたりする制度もあるそうです。加えてもう1つ、同社に求める人物像として「技術を社会に役立てたい」気持ちがあることも挙げました。
「テクノロジーって、ある意味では手段でしかない。それを“何に使うのか”が、一番大事だと思うんですよ。先ほどの『ファイル無害化』技術も、なぜ他社に先駆けて実現できたかというと、世の中を見ていたからなんです。社内でもお客さんの声を共有しやすい仕組みなどを整えていますが、何より新しい技術を使って『人の役に立つ』、これがすごく重要かなと考えています」
あるものを使って、“どこにもない技術”を生む京都研究所
そうした中で、今回メンバーを募集をされる「京都研究所」。会社に流れるDNAを引き継ぎながら「定常進化でないものを求めている」とのことですが、具体的に何を示すのでしょうか。
現在プロットの製品開発や販売、顧客サポートは、大阪・東京・名古屋で基本的に行っています。それらから見ると、京都は少し特別な位置づけ。直接の“プロダクト”以上に、新製品のコアになる“技術”を開発することが目的だといいます。
実際に開発している技術、そして研究所の具体的な役割を説明いただくため、東京にいる専務取締役の菰田貴行(こもだ・たかゆき)さんにも、ウェブカメラ越しにお話を聞きました。

「京都研究所は、通常の製品開発にとらわれずに、全く新しいものを作っていく専門の部署です。まずは、実際に開発した『ファイル暗号化』の技術をご紹介しますね。
これは『File Defender』といって、プレリリースが終わった段階のものです。今後機能を強化し、本格的な販売につなげていこうと、最も力を入れています」

そういって画面に表示されたのは、「FD」のアイコンがついたデモファイル。これは、File Defenderが暗号化したドキュメントであることを示します。権限を与えられた閲覧者であれば開けますが、そうでない閲覧者は一切開くことができない仕組みです。編集やコピーなども、管理者が権限を自由に変えられるとのこと。
ユーザーごとのファイル操作ログが必ず残り、誰がいつどんな使い方をしているのか、きちんと追跡できるそうです。なぜ、これを開発したのでしょうか?
「以前から、データの漏洩リスクに課題意識を持っていました。今の時代、いろんなパートナーと一緒に仕事をすることがどんどん増えていますよね。そこでどうしても問題になるのが、情報セキュリティです。特に個人情報の扱いは非常に厳しくなっています。
当社では、ファイルを外部に受け渡せるオンラインストレージ製品を販売していますが、受け取ったデータを、パートナーがその後どう管理するかは制御できなかった。常に暗号化されたまま、やりとりや修正作業が簡単にできるものが必要だと考えて、京都チームを中心に開発したんです」

データを読み込み合う関連ファイルも一気に暗号化できるなど、“難しい”とされてきたポイントをクリアしている点が「今までにない暗号化技術」だと語る菰田さん。技術の責任者である彼から見て、こうした“全く新しいもの”の開発には何が必要なのでしょうか。
「『世の中に役に立つものをつくりたい』という気持ちかなと思いますね。開発といってもゼロから構築するのではなく、私たちは今すでにある技術を、どうすれば有効活用できるかを研究しています。技術としては確立されていても、実際にうまく使われていないものってたくさんあるんですよ。
なので、暗号以外にもAIやディープラーニングなど、セキュリティに応用できそうなあらゆるものを、時流を見ながら探しているんです。基礎知識などはあるに越したことはありませんが、それよりも『技術が好き』な人、『新しい取り組みに意欲的』な人に来ていただけると嬉しいですね」

菰田さんと同じく、坂田さんも京都研究所へ強い期待を寄せていると話します。
「今回開発してくれた暗号化の技術は、プロットを次へと飛躍させる大きな要因になるんじゃないかなと思いますね。会社としては、こうしたものを今後もどんどん生み出してほしいと考えています。『他に追いつかれてから動いても間に合わない』という危機感を、私たちは強く持っていて。常に世の中の“先”をいくために、より京都が重要な拠点になっていくと思っているんです」
「社員からみた」プロットらしさを考える
では、そんな京都研究所で働く人たちは、プロットのことを実際どう見ているのでしょうか。3名のスタッフさんにも、話を聞いてみます。
取材に入る前に、今回は「ワークスタイルトランプ」を使ったグループワークを実施しました。キーワードが書かれた52枚のカードを通じて、理想とする“働き方”と、会社の“今の姿”を考えてもらうことが狙いです。


京都移住計画の代表・田村篤史の進行のもと、最初のワークでは、それぞれが働く上で「自分が大事にするもの」のトップ10を選択してもらいました。
実はこのカード、トランプのマークに仕掛けがあります。書かれている内容に傾向があり、「黒」のものが“ワーク”重視、「赤」のカードは“ライフ”重視の項目。さらに、マークに尖りのある「スペード」「ダイヤ」はベンチャー企業に、丸みのある「クローバ」「ハート」は大手企業によく見られる仕事観となっています。

5分後、それぞれ選んだものを出し合いました。3人に共通していたカードは、『新しいことがやれる会社』。全体的には「黒」と「赤」、つまりワークとライフがほどよく混ざりながらも、やや尖ったマークの「スペード」「ダイヤ」(ベンチャー企業が重視する傾向)が多い結果となりました。
仕事と暮らしのなかに垣間見える、ベンチャー的なチャレンジ志向。個人のこだわりポイント。お互いに興味深く、選択を眺め合います。

そこから再びワーク。今度は個人の重視ポイントとは全く関係なく、プロットの“法人格”を想定し、当てはまるカードを5枚選出してもらいます。

3人の後ろで坂田さんもこっそり挑戦。さて、みなさんが考えるプロットは、どんな姿なんでしょうか…?

選ばれたカードは、下の写真のとおり。3人と坂田さん、なんと3枚も同じカードを選ばれました。この結果を踏まえて、横矢さん、若生さん、木村さんにお話を聞いてみましょう。

——坂田さんと3枚合いました。これ、役員さんと社員さんでは一致することが少ないので、実はかなりすごいんです(笑)。3人で選ぶのは大変でしたか?
若生:いえ、あんまり迷わなかったですね。割とすんなり決まりました。
木村:みんなのイメージで、これかなと。特に『歴史がある会社』は、すぐ決まった気がします。僕自身も会社に入るとき、数年でなくなる会社も多いなかで、これだけ長く続いてるのはすごいなと思いましたね。

若生:やっぱり老舗になってくると、「変えられない」部分って年々大きくなりますよね。でも、プロットは転機にちゃんと、次の時代に乗れるよう事業を変えている。「新しいことを取り入れて今があるんだな」という意味で、『時代を先行すること』と『歴史がある会社』のセットで、満場一致で選んだ感じです。
——歴史と先端と、2枚がセットであるのがポイントなんですね。
横矢:「変化する部分」と「変化しない部分」の2つの軸があるという理解をしています。事業を完全に変えているので、企業として別物なんですけど、連続性もある。中の細胞が入れ替わるイメージですね。
——変化する、つまり時代の先を行く開発をするために、日々どんなことをされているんですか?
木村:いろんなカンファレンスに行ってトレンドを追いかけたり、公開されてる技術の最新バージョンをチェックしたり。インプットの時間は結構多いですね。得た情報は、「これが気になったよ」などと社内のチャットで共有しています。
横矢:結構みんなプライベートで本を買って、自分でやってみて、いいのがあったら共有することもよくあります。最先端のことを知るのって、やっぱり楽しいので(笑)。
——“最先端”が生まれるのは、やはり東京のイメージがあります。京都にいることでのハンディはありませんか?
木村:東京本社があるので、気になる動きはそこから聞けます。日常的にやりとりしていますし、定期的に来てくれる菰田からも東京のトレンドや情報を直接聞けるので、そんなに問題はないですね。
若生:京都はIT系のイベントやセミナーも多いんです。中には、どうしても東京だけというものもありますが、そのときだけ行けばいい。自分の意欲があれば、どこでも一緒かなと思っています。
“おもしろがれる”ことが一番。スキルはあとからでも大丈夫
——『グローバルに活躍すること』も選ばれていますが、坂田さんも海外に力を入れると話されていました。京都研究所と国外の接点は増えていくんでしょうか?
若生:会社が、ASEANを中心にやろうとしているのがすごく伝わってきます。販売も製品開発もいろんな部分で広がり始めていて、すごくおもしろくなりそうだなと思いますよ。必然的に、国外との接点は増えていくだろうなと感じてます。
横矢:今一番ホットなのは、新しいベトナムの拠点です。もし現地でいい人が採用できて、日本に来て開発をやるとなったら、やはりオフィスは京都になるでしょうね。

——プロットの京都研究所で一緒に働かれる方には、どのような人が合っていると思いますか?
横矢:「探究心」というか、なにか新しいものを見つけて「これおもしろいよね」って思える人だと、いい仕事ができるんじゃないかと思います。
木村:「セルフマネジメント」ができることも大事かなと思いますね。実現させたいゴール像は見えていても、そこにどうアプローチすればいいか分からないことが多いんです。文献も少ないなかで、トライアルアンドエラーを繰り返していく仕事なので、失敗を自分で分析して「次はこの計画で行こう」って考えられることが重要ですね。

若生:研究となると、やっぱりモチベーションがないとつづかないんです。失敗するか成功するか、見えない答えを探っていくなかで、乗り越えた姿を想像して「楽しみ」と感じられる人がいいなと思います。
——募集では、プログラミング未経験の方でもOKだとお聞きしました。最先端の研究所で、本当に大丈夫なんでしょうか?
横矢:実際、僕が未経験です(笑)。今年入ったばかりですね。大学も違う分野だったんですけど、実際触れてみたら「おもしろいな」って感じて。今もすごく楽しいです。
若生:うちがやっているのは、応用研究なんです。「今ある技術」を使って新しいものを生み出す場所なので、興味を持って臨めば、技術力はいくらでもあとからついてくる。やっぱり、過程を楽しめることが一番だと思いますね。

——では最後に、みなさんが研究開発をしていて「一番楽しい」ポイントを教えてください。
横矢:僕は、動く原理や原則が分かって「なるほど!」となったときですね。
木村:いろんなテストパターンを組んで、エラーを全部解消できた瞬間です。
若生:僕はやっぱり完成して、世の中に出るときかなと思います。
——3人とも、結構違うんですね(笑)。
一同:(笑)。
横矢:でも、だからこそ分担し合えているのかもしれないです。全員興味ある場所が一緒よりも、いろんな部分に目が行き届きますからね。
——なるほど。お互いに得意分野が違うからこそ、チームで補い合えるんですね!ありがとうございました。
歴史と先端が入り混じる町と、プロットの近しさ
今回お話を聞いた社員さんは、3人とも京都以外の出身。取材のあとで「京都で働く」ことの印象を聞くと、「町の雰囲気が好き」「景観がいいし、リフレッシュしやすい」「ラフな格好で働く人も多くて安心する」などの言葉が出てきました。仕事の内容だけでなく環境としても、この場所を気に入っている様子です。
普段は東京にいる坂田さんも、新旧混在する町並みに、不思議な“親近感”を感じておられるようでした。
「昔のノウハウをもとに、新しいものを生み出していく。もちろんサイズ感は全然違いますけど、僕らも歴史を重ねるなかで、どんどん新しい時代に合わせた製品を作っている。その意味で、京都とプロットって近いのかな、なんて勝手に思っていますね」

変化のDNAを継ぎ、どこにでもある技術から「どこにもないもの」を生み出す。歴史ある町に置かれた、最先端の開発チーム——。京都研究所はまさに、世の中の“先”を行くことでいくつもの“時代”を超えてきた、同社らしい組織ともいえるでしょう。
次なる時代をつくるメンバーに求められるのは、知識でも経験でもなく、誰より「おもしろがれること」だと、みなさん口を揃えて話してくれました。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度、プロットの研究所を訪れてみてはいかがでしょうか。
photo/其田 有輝也