募集終了2021.06.28

暮らしの質をあげていく。人やまちの”カッコいい”をひきだす工務店

工務店業は暮らしづくり業

「弊社の良いところは、みんなが家族の悪口を言わず、家族を大事にしていること。みんなにとっての一番大事なものが“暮らし”であると気づけたことは、私にとっても、会社にとっても大きなことでした」

日本海の若狭湾に面し、海とともに歩んできた舞鶴市。戦国大名でありながら、当代きっての文化人として信長・秀吉・家康に優遇された細川幽斎が築いた田辺城跡のほど近くに、大滝工務店はあります。

2022年に創業70周年を迎える同社は、“育つ環境づくり”をコンセプトに今年3月にオフィスリノベーションを終えたばかり。本社2階の扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのが、“Be a bright star!(一人ひとりが輝く星となれ)”と書かれた組み木でできた星のモチーフ。その奥には、社員一人ひとりがハンドメイドしたという、さまざまなかたちをした星のオブジェが並んでいます。

この新たな空間のコンセプトは、“社員が育つオフィス”。3度のワークショップを実施し、日々の働き方や会社の在り方、それぞれが抱くビジョンや共有したい価値観を社員全員で話し合いました。その結果、互いに自らのスキルや経験を教え合うことのできる“交流とシェア”を目的とした場を築くという答えにたどり着きました。こうした取り組みは、社内のみではなく、お客さまとのコミュニケーションでも活かされています。働き方のみではなく、暮らし方、ひいては人々の生き方までアプローチできるのが大滝工務店の強みです。

「工務店業は暮らしづくり業だと思っています。地域の暮らしの質をあげていくのが工務店の使命です」

そう語るのは、3代目代表を務める大滝雄介さん。“ひとづくり、まちづくり”、“工務店をカッコよくする”、“中小企業の星になる”といった3つのビジョンを掲げ、“変化し続ける会社づくり”を日々体現しています。

人生一度きり、家業を継ぐ決意

中小規模の工務店としては珍しく、設計から現場施工までワンストップで完結できる社内体制が強み。木造も鉄筋コンクリート造もどちらも担える人材に恵まれ、住宅の新築・リフォーム、オフィス・店舗、社寺文化財、福祉施設、ビルやマンションなどさまざまな規模の建築を手掛けています。

また、大滝さんのもう一つの顔が、まちづくりの仕掛け人であること。舞鶴市のまちづくりを活性化するために2012年、一般社団法人「KOKIN」(コキン)を設立。商店街の空き家・空き店舗を活用したゲストハウスやチャレンジカフェ、地域商社の運営に携わり、1200坪の有休地を活用したカフェと暮らしの相談窓口「KAN,MA」(カンマ)をオープンしました。

カフェと暮らしの相談窓口「KAN,MA」

次から次に湧き出てくるアイデアの泉。当初から建築に熱を注いでいたのかと思いきや、意外にも「家業を継ぐ気はなかった」といいます。

「大学では建築コースを専攻していたのですが、大規模な美術館や商業施設の設計にあまり興味が沸かず、波に乗れていませんでした。成績も悪く、父からも継がなくていいと言われていたので、自分に建築は向いてないんじゃないかと考え、東京にある大手IT企業に就職しました」

「自分の人生を歩め」と大滝さんを応援してくれていた父。そんな父が病に倒れたのは、就職して2年目。大滝さんが24歳のときでした。

「早く戻ってきて」

仕事を終え、22時過ぎに山の手線に乗ると毎日のように母から電話がかかってきました。当時、大滝工務店の業績悪化は深刻で、銀行からのプレッシャーも強かったといいます。当初は「帰りたくない」と抵抗していましたが、考え抜くこと半年。最後の最後まで「お前の人生だから」と言ってくれていた父の言葉に促されるように、家業を継ぐことを決意しました。

幼い頃の大滝さんとお父さま

「大企業でサラリーマンをやってみて見えた部分もあったのでしょうね。“それなりの幸せ”、“まあまあ幸せ”というかね。それも良いかなと思っていたんですけど、でも、人生一度きりですし、いろいろとチャレンジするのも悪くないと思って帰ることにしました」

社内統制こそ起死回生のカギ

いざ大滝工務店の3代目に。けれど、会社は倒産寸前。利益を出してもすべて利息で持っていかれる日々。当初3年間は、社内統制もきかず、「どうしたら会社をたためるか」と考えてばかりいました。

さらに全員年上だった社員との関係も日に日に悪化。社内で孤立するまでに時間はかかりませんでした。

「金髪の大工に、“髪を染めるな”と言えば、“染めてんちゃうねん! 抜いてんねん!”と言われるし、“腰パンやめろ”と言えば、“脚短いねん!”と逆ギレされる。ガバナンスがきいてないため、誰もが好き放題。常に借金返済が頭をよぎり、私も5000円の出費でネチネチと詰めるような性格だったので、社内全体にいやな空気が漂っていました」

会議のために集まれば、必ずと言ってよいほど社長VSその他社員全員という構図に。

「何をしたいかわからん」
「そんなんじゃついてかれへん」

日々、耳にするのは社員たちからの苦言や不満。けれど、そんな会社にもターニングポイントとなる出来事が起きます。それが、30歳のときに決行した60周年記念祭でした。

当時25名いた社員全員を巻き込んで準備を始め、結果的にイベント当日は700名超の集客に成功。大きなイベントを無事完遂させ、充実感を共有したことで、それまでになかった団結力が生まれました。

60周年記念祭の様子

家族を大事にするのが会社の強み

また、大滝さんの中でもうひとつ大きな変化がありました。それは“結婚”です。

「それまでの私は、言い方は悪いですが“結婚は墓場”という考え方でした。結婚をしてしまったら足をひっぱられる。自分のアイデンティティを奪われる。働いてなんぼや、と。けれど、自分自身が結婚したことで家族に対する価値観だけではなく、社員に対する見方も変えることができたんです」

自分が結婚してみて、改めて感心したのは、自分の会社の社員たちはとにかくパートナーを大事にし、家族を大事にする人たちばかりだということ。会社をゼロから立ち上げた祖父が事あるごとに自分の家族を気遣ってくれたと、年配の社員から教わったのもその頃です。

「祖父は、その社員さんに会うたびに“娘さんどうや”“奥さん元気か”と声をかけていて、そういう声がけがいかに大切かを学びました」

その頃から社員の大滝さんに対する態度も次第に軟化。社内の雰囲気も俄然よくなり、大滝さんのいないところで社員が自分の想いを代弁してくれることも増えていきました。

強い会社にするために掲げた3つのビジョン

こうして、それまで課題となっていたガバナンスの問題が落ち着いたことから、次のステップとして「強い会社」づくりに取り組むことに。社内でワーキングチームをつくり、強さとは何かを掘り下げていった結果、現在掲げる3つのビジョンが生まれました。

施工事例
  1. ひとづくり、まちづくり
    大滝さんが立ち上げた、まちづくりチームKOKIN。フレッシュで、ユニークな発想を次々と実現していったこの一般社団法人は、次第に舞鶴で市民権を得るようになりました。それと並行して大滝工務店もまちづくりやひとづくりを得意とする会社として認知されるように。2012年に目標として掲げたまちづくりが、だんだんと本業に融合していき、ビジョンになっていきました。
  2. 工務店をカッコよくする
    工務店は3Kで、デザイン力は低いもの。そんな“かっこ悪い”イメージを払しょくするため、設計・現場・大工と3者が揃う組織改革を実現。また、作業着姿の男性が数人で押しかけて、図面と見積りだけ見せて気軽に相談しづらい、工務店のイメージも一新したく、大滝工務店は「売りつけない」セールスを心がけています。「工務店の質があがれば、地域の暮らしの質もあがる」と大滝さん。
  3. 中小企業の星になる
    地域の中で経済をまわしている中小企業。個人の暮らし、家族の暮らしを支えている経営者が成長し、健全な発展を遂げることで、本業を通して、空き家や就職、女性の活躍、多様な働き方といったさまざまな課題を解決できるのが魅力です。「これからどんな社会課題を解決していきたいとか、こんないい会社にしたいとか、高い視座で熱く語れる経営者仲間を増やしていきたいですね」

優秀な人材こそモノづくりの現場に

「一生借金の奴隷か」と会社をたたむことばかり考えていた初期から、3年で業績を持ち直し、さらに社内掌握に努めた20代。60周年記念祭、結婚、まちづくりチーム「KOKIN」の立ち上げを経験した30歳を機に社内統制がきかない、会社の給与面や待遇面、職場環境の整備に取り組めるようになるまで、10年の月日が過ぎていました。

その頃には、社員からも「いい会社だね」と声をかけてもらえるようになり、まちづくりやひとづくりまで、トータルして行う工務店として地域での認知度もアップ。次に大滝さんが着手したのが、“脱田舎の工務店”を実現するための求人です。

舞鶴は大学がないため、外に出た優秀な学生はなかなか地元に戻ってきません。戻ってきたとしても、就職するのは市役所か銀行。これが大滝さんは「悔しい」といいます。

「実力のある人たちが、大学を卒業したあとに、地方の中小企業に入ってモノづくりに携わってくれたら、もっと地域が良くなると思います。なので、近年では、求人をがんばろうと新たな取り組みをはじめました」

求人強化と並行して取り組んだのが、労働環境の整備。年間休日127日休暇、18時帰社、無駄なミーティングの廃止、社員大工の固定給化など、労働環境を改善。とはいえ、大工さんはいまも休日出勤する人が多く、そのため「週休二日制」を完全に実現するにはまだ時間がかかるといいます。一方、今年初めて新卒のクリエイティブ職を登用し、これまで大滝さんが一人で担ってきた企画広報活動を任せるようになりました。

若い人材のチャレンジや変化をよしとする社風

企画広報を強化して、社内の動きや社内発信のイベントを積極的に広めていきたい。そんな大滝さんの期待を背負い、クリエイティブ職第一号として採用されたのが、新卒の西潟梨乃さんです。入社のきっかけは、舞鶴で暮らしている友人とKAN,MAをよく訪れていたことだったそう。

「来るたびにとても心地よい空間だなぁと思っていて、どんな人がこのカフェを運営しているのだろうと気になって、弊社に問い合わせました」

大学時代は出版社でインターンをしていたという西潟さんの業務は、ホームページやインスタグラムの更新、求人サイトの原稿執筆、イベントの企画、会社案内のパンフレットや会社封筒の制作など。文章も書けば、デザインもします。

「チャレンジや変化をよしとする会社なので、若いわたしのような人材でもどんどん活躍の場を与えてもらえて、成長できるのが特徴です」と充実した様子で語ってくれました。

「舞鶴は小さな町なので、スモールコミュニティでいろいろな人とつながりやすく、いいなと思うことやこれやりたいと思うことをすぐに実現できることも魅力の一つ。自分の培ってきたものを生かしながら、これからもどんどん挑戦していきたいと思います」

一ヵ月前の自分では想像できなかった自分に出会う

その西潟さんより少し後の2020年8月に入社し、設計アシスタントとして「先輩たちにもまれています」と語るのは、東京・国立市から移住してきた田中大貴さん。大滝工務店を知るまでは舞鶴も知らなかったものの、今では自然が豊富で、小さな映画館やお店もコンパクトにまとまっていて、何よりアクティブな人たちに出会えるこの町がすっかり気に入っているそう。

「大学では、主に環境デザインを学んでいました。その中で、大きな箱をつくるというよりは、誰かとその周りの数人くらいが幸せになれるような、そんな場づくりが自分には合うと思うようになりました」と田中さん。

「弊社に応募しようと思ったきっかけは、“直観”に近いです。デザインを志す学生がよく見る求人サイトに掲載している工務店が珍しかったので、そこから興味をもつようになり調べるようになったのですが、KAN,MAやFLAT+など、こぢんまりとしながらも、地域に根差した活動をしっかりとやっている。そこが自分とマッチすると感じました」

会社の一番の魅力は、「一ヵ月前の自分では想像もできなかった、一ヵ月後の自分に出会えること」といいます。「生活環境も働く環境も、大滝工務店が生み出す場がひとをそうさせるのだと思います」とも。

会社も、地域も、どんどん変化していくこの瞬間に、その場にいられ、しっかりと関われるいうこと。それはとても刺激的で、ユニークな体験のようです。

設計・現場・大工が近い環境で働けることが魅力

最後にお話を伺ったのは、前職の中堅ゼネコンからの中途入社で、現在は現場監督を任されている柴田秀俊さん。

現場監督は、建築に関わるヒト・建物・安全面の管理を統括する仕事です。「工務店」と聞くと、一般的に木造のイメージがありますが、大滝工務店では鉄筋コンクリート造のビルやマンションも建築しており、木造と鉄筋コンクリート造では、その仕事も性質も大きく異なるそうです。

施工する木造と鉄筋コンクリート造の割合は、ちょうど半々。鉄骨の現場は、数十人が一挙に動くので、プロジェクトマネジメント力が問われます。

「学校の改修工事や老朽化した公共施設の耐震補強など市から請け負う仕事も多く、多くの命を預かっているという責任を感じます」と柴田さん。

鉄骨造(S造)で建てられた舞鶴市にあるグループホーム

一方、木造の場合は細かい作業が主となり、丁寧なモノづくりが好きなひと向きなのだそう。大滝工務店の場合は、両方を行き来できる監督育成を特徴としているので、「成長機会が多い」と語ります。

また、ほかの設計事務所や工務店と比較すると、設計と現場監督と大工がはじめから一緒に動くため、無駄なミーティングや書面のやりとりが少ないのも魅力です。一回ずつ質疑を書面に落として、その返事を待つといった時間のロスがなく、設計上はこうしたいけれど、これは実現可能かといった内容を、現場監督や大工がともに検証し、その場で調整を試みることが可能です。

「個々の発言が尊重され、自由度も高いため、結果、スピーディーかつ臨機応変に問題を解決でき、お客さまにも安心していただけます」

そして、中途採用だからこその実感が、ライフワークバランスの良さです。

「弊社に転職してからは夕方17時に帰社し、7時半に出社するため、休日は子どもと公園で遊んだり、好きなゴルフに興じたりと、プライベートを充実させることができるようになりました」と目を輝かせていました。

建築業だからという固定概念をなくす

暮らしの価値をあげていくために、より違った切り口でヒアリングや発信を行える会社にしていきたい。大滝工務店では、建築業でなくてはとか、建築業だからという固定概念はゼロに等しく、お客さまの内なる声を引き出すことのできる人材を求めています。

「工務店業を暮らしづくり業と捉えたら、いくらでも派生すると思っています。昨年は寺社関係の事業をM&Aしました。必要とする人材は、デジタルに強く、コンテンツがつくれる方や、ファシリテーション能力が高い方。地域にしかけるという観点をもって、ともに仕事を楽しめる方に応募いただけたらと思います」と大滝さん。

「大学で建築を勉強していたときは、退屈で仕方なかったのですが、工務店である弊社に入社して、もう一回建築をやることになって、そこで初めて建築ってめちゃくちゃ楽しいなと思いました。建築すげえ、建築面白いなって。でも、その反面、もったいないと思う部分も多々あって、その部分を若い力や外部からの力で変えていけたらと思っています」

自身が3代目となった頃と比べて、大滝工務店の風通しは格段によくなり、故に今回、オフィスリノベーションを行ったからといって劇的に変わったことはないように思う反面、とても象徴的な出来事があったそう。

ワークショップの様子

「わたしがUターンしたばかりの頃、“大滝工務店はどういうところですか”と質問したアンケートに対して、ある社員が“興味ないです”と書いてきたんです。私わたしはそれがとにかくショックで。いろいろと不満を書かれるのは解決したいと思えるし、解決していけますが、“興味ないです”といわれたら手の施しようがないと感じました。ところが、今回のワークショップでは、その社員が人一倍発言してくれて、しかもとても楽しそうで、それが何よりうれしくて、“変わったな”としみじみ思いました」

なんで変わったのかはまだ恥ずかしくて聞けてないのですが……と少し声のトーンを落としながらも、その表情からは安堵感と充足感が伝わってきます。Be a bright star!(一人ひとりが輝く星となれ)――大滝工務店のその想いは、確実に広まっています。

ワークショップでつくった一人ひとりが描く「星」を胸に

大滝工務店の魅力、それは“温もり”の一言に尽きると思います。家族のために地元に戻ってきた3代目の、会社を建て直すきっかけとなったのが、家族を大切にしている自社の社員のすばらしさに気づけたこと。それは創業者である祖父から脈脈と受け継がれている大滝工務店のカルチャーといえるものでした。

会社を支えてくれている社員がいきいきと働けて、その社員が一番大切にしている家族を大事にできる環境をまず整え、地域にもそうした人の集まれる空間を増やし、“温もりの輪”を広げていく。設計と現場を融合したり、デザイン性を重視したりといった改革も、すべては円滑なコミュニケーションを生み、「地域の暮らしの質を上げる」という使命感からくるもののように感じました。

人の暮らしの中の、変わらなくていいものと、変えていかなくてはならないもの。それをしっかりと見据え、若者やUIターン組を巻き込むことで、さらに発展していこうとする大滝工務店の今後がとても楽しみです。

※本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

執筆:山葵 夕子
撮影:Takeru Inoue

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