募集終了2020.11.03

色へのこだわりを追求。好きを生かせる“染めの仕事”

チェック、ボーダー、ストライプ。花柄、迷彩柄、幾何学模様。普段なにげなく身に付けている洋服の柄が、どのようにしてプリントされているのかご存じですか?

今回ご紹介する「浜田染工」は、プリント服地を企画・製造する会社。主にレディースの服地を中心に、天然繊維から化学繊維まであらゆるプリントを手掛けています。

今回募集する職種は、テキスタイルの配色担当。

配色の仕事内容はもちろん、染色の手法や製造の流れについても、実際に製造現場を見せていただきながらお話を伺ってきました。

時代の移り変わりと共に変化する染色業

浜田染工の創業は1968年。創業者の浜田正鎬(はまだ・まさたか)さんが、古くから染め物が盛んな京都市右京区山ノ内で染色を始めました。

その後、京都市南区を経て現在の城陽市へ。現在は二代目である浜田智史(はまださとし)さんが代表を務めています。

父の会社を継ぐため、浜田染工に入社した浜田社長。最初の3年間は現場で基礎を学びました。

「まずは全部やれって言われて(笑)。機械はひととおり全部動かせるようになりましたし、染料の配合や調整も自分でしました。それから10年ほど営業職として働いて、2005年に代表に就任しました」

そんな浜田社長に、まずは染色についてお聞きしていきます。そもそも染色の手法としてはどんなものがあるのでしょうか。


「大きく分けると手捺染(てなっせん)、オートスクリーン、インクジェットの3つがあります。職人が手作業で染めるのが手捺染。それを機械化したものがオートスクリーンです。インクジェットは紙の印刷と同じ仕組みで布に印刷するものです」

オートスクリーン捺染機。シルクスクリーン型を用いてプリントします。
インクジェットプリンター。データ化された図柄を生地にプリントします。

創業時は手捺染を行っていた浜田染工。1980代からオートスクリーンに移行していったと言います。

「手捺染では職人さんがヘラのようなものを使って手で掻くんですけど、手作業だと1枚1枚が少しずつ違うんですよね。機械のほうが安定するし生産性も上がるので、オートスクリーンに代わっていきました。浜田染工では現在は約9割がオートスクリーン、残り1割がインクジェットを使用しています」

インクジェットはオートスクリーンにはできない新しい表現ができるほか、汚水が出ないという特徴があります。環境への配慮から、ヨーロッパではインクジェットが増えてきているそうです。「日本も今後はもっとインクジェットが増えていくと思う」と浜田社長は語ります。

海外製品とは一線を画す色へのこだわり

浜田染工ではどんな流れで製造が進められているのでしょうか。

「まずはお客さんと打合せをして、こんな柄にしたい、こんな生地に染めたい、といった要望を聞きます。それがまとまったら、型制作。オートスクリーンの場合は、シルクスクリーン型という版を作ります。この作業は社外で行っています。版ができあがったら、次は配色。社内の配色担当が色の組合せを何通りも作っていきます」

社内独自の色番号を使って色の組合せを作っていきます。

「次に、配色データに基づいてサンプルを制作し、色や柄の出方を確認。お客さんと何度も打合せをしながら最終調整をします。その後、染料の配合や色の微調整をして、捺染(なっせん)していきます」

サンプルの制作は手作業で行われています。
上の写真のような版を何枚も重ね、鮮やかな花柄が完成します。

「さらに、捺染された生地を蒸すことによって、染料を定着させます。天然繊維は100℃、10分~15分・ポリエステルは170℃、8分というふうに素材によって蒸す時間や温度が変わります」

蒸しの工程が行われる巨大なスチーマー。

その後、水洗いや仕上げ、検品といった外部での工程を経て納品されます。いくつかの工程が社外で行われるのは、京都の染色業が分業化されているからだと言います。

「京都は着物の頃から細かく分業になっていたんです。だから今もその名残で、他の地方とは違って京都だけは分業なんです」

分業だからこそ専門性が高いという特徴がある一方で、コストがかかってしまうという側面も。コストが低い中国など海外での生産も増えているなか、それでも京都で染色をしたいというクライアントはどんなことを求めているのでしょうか。

「やっぱり1番は色へのこだわり。お客さんがこの色にしてほしいと言ったら、その色に合わせようと徹底的にこだわるので、そこが喜ばれていますね。色の他にも、生地の風合いや触った感触などの品質を求めて、多少コストがかかっても京都でやりたいと言ってもらえるんだと思います」

オートスクリーン捺染機の周りで、数名のスタッフが細かなチェックや調整を行っています。

自ら考えて提案した配色が世に出る喜び

そんな浜田染工の色へのこだわりを体現する仕事のひとつが配色。ここからは配色担当の古田千咲(ふるたちさき)さんにお話をお聞きします。


 古田さんは新卒で浜田染工に入社し、配色を担当して今年で8年目。大学時代は油絵専攻で、染めに関する知識はなかったと言います。どうしてこの仕事をすることになったのでしょうか。

「学生の時、白いキャンバスの上に描くのが面白くないなと思い始めて、既製品の柄布に絵を描くという試みを始めたんです。そこから、生地自体も自分で作りたいと思うようになり、染めに興味を持ちました」

そこで、浜田染工の求人に出会った古田さん。実はそれまでは配色という仕事があることを知らなかったそうです。


「求人を見て、配色を専門にする部署があることを初めて知りました。学生時代に色をテーマとして扱っていたので、染めの勉強ができて、しかも色に関わる仕事ができたらいいなと思って応募しました」

たしかに配色の仕事は、一般的にはあまり知られていない職種かもしれません。

古田さんは日々どんなふうに仕事を進めているのでしょうか。

「たとえば、秋冬もので、この柄で、この生地で、というオーダーを元にこちらで一から配色を考えることもありますし、すべての色が指定されていて、これにきっちり合わせてくださいという場合もあります。こちらで配色を考える場合は、配色シミュレーションソフトを使って配色をします。簡単な柄だったら頭の中だけで考えることもありますね」


 初めの頃は、思い通りの色がなかなか出せなかったと笑う古田さん。

「たとえば紙でも、画面上で見るのと印刷したものでは色が微妙に違うと思うんですけど。生地の場合は特に、染めた後に蒸す、洗うという工程があるので、染めた時に色が合っていても蒸して洗ったら全然違う色になってしまうことがあるんです。だからきれいにぴったり合った時はやった!って思います」

色がぴったり合う時はもちろん、自分の提案した配色が採用された時に最もやりがいを感じると古田さんは語ります。

「自分が配色して提案したサンプルを見て、お客さんが気に入って決めてくれた時がやっぱり1番うれしいですね。お客さんと直接やりとりすることが多いのですが、たとえば一言で赤と言ってもどんな赤をイメージされているのか、春っぽいと言ってもどのくらいの春なのか、とか(笑)。できる限り詳しく共有するようにしています」

時にはなかなかOKが出ず、行き詰まってしまうことも。そんな時は、一歩引いた視点で考えることにしていると言います

「たとえば、この配色が店頭に並んでいた時に私はどう思うかな?とか、憧れの女優さんが着た時にどうかな?とか。少し引いて考えてみることを意識しています」

仕事とやりたいことを両立できる環境

浜田染工で配色の仕事をする古田さんには、もう一つの顔があります。それは、テキスタイルアーティストとしての顔。昨年、自身のブランドを立ち上げ、WEBサイトで販売も行なっています。

「絵だと家に飾っておくだけじゃないですか。もっと柔軟な表現ができたらいいなと思って。絵画とテキスタイルの中間、良いとこ取りを目指しました」

古田さんが広げて見せてくれたのは1枚の大きな生地。鮮やかな模様の中に、よく見ると人が描かれています。

「このまま1枚で飾ってもいいし、洋服として着てもいいし」と古田さん。昨年行われた展示では、シルク綿、レーヨン、帆布など7種類の素材を同じ色で染めるという試みにも挑戦したのだそう。この日古田さんが身に付けていたアロハシャツをはじめ、ハンカチやコースター、バッグ、椅子など9アイテムを展開しています。

これらのアイテムは、社内のオートスクリーンの機械を使って染めたと言います。

「こういうことをやりたいんです、と社長にプレゼンしました(笑)。ちゃんと費用はお支払いしますとお話しして。そうじゃなくても、社長はだぶんいいよって言ってくれたと思うんですけど、今後にもつなげていきたかったので、そこはきちんとしたくて」

浜田社長の許可を得て、仕事が終わった17時半以降に、社内で自ら染めてサンプル作りをしたという古田さん。自分が勤めている会社だからこそできた部分も大きいと語ります。


 「やっぱり相談しやすいのが有難かったです。この生地だったらこうしたら?とか、いろいろアドバイスももらえました」

社内の設備を使うことについて、浜田社長は「うちでやったら必要最低限の経費でできるし、やってみたらっていう感じですね。社員がやりたいことのためだったら好きに使ったら良い」と何ともおおらか。

社員が仕事以外の活動、いわば副業をすることにも抵抗はなかったのでしょうか。

「うちの仕事に全然関係ないことだったら、ちょっと抵抗があるかもしれないですけど。服づくりだったら染めの仕事が生かせる部分もあると思うし、逆に自分で服を作る経験を通して得たことが仕事にフィードバックされる可能性もありますよね。仕事をしながら自分のやりたいこともして、長く働きつづけてもらえたら良いと思っています」

今は個人の活動もしているのは古田さんだけですが、これから入社する人も含めて、今後はこういった働き方がもっと増えていけば良いと考えているそうです。

細部を追求することでクオリティを担保

最後にお話を伺うのは、インクジェットの染色を担当している西野富之(にしのとみゆき)さんです。西野さんは入社6年目。以前は織りのメーカーでデザインの仕事をしていました。

「服飾が好きというのが根本にありますね。織りと染めで分野は違いますが、興味のある服飾業界で、前職で身に付けたスキルも生かせる仕事をしたいと考え、入社を決めました」

インクジェットの機械に通すデータを作成するため、細かな修正や調整を行うのが西野さんの仕事。配色ソフトを使って、色の微調整も行います。

「データを機械に通せば自動的に色が決まるのですが、、そのままではどうしても目指す色にはならない。よりお客さんの求めている色に近づけるためには、手動で1%単位の調整が必要です。たとえば薄手の生地だと色がにじんでしまうことがあるので、生地に合わせてインク量を少し減らすとか、細かく調整しています」

機械任せではなく、人の知識や経験に基づくきめ細かな調整。こうした細部へのこだわりから、海外製品とのクオリティの差が生まれています。

現在、社内でインクジェットを担当しているのは西野さん一人。「先輩もいなかったので、失敗したら自分で調べたりメーカーに問い合わせたりして、試行錯誤しながらやってきました」と笑います。

「インクジェットの需要はかなり高まってきているので、今後はスタッフも増えていくと思います。これからは自分の技術や経験を他の人に伝えていくのが課題ですね。これ頼むわって言える後輩がほしいです(笑)。そうなったら、自分の仕事の幅ももっと広がると思います」

製造の機械化が進む中でも、そこに人の手が介在することで高いクオリティを担保していることがよくわかった今回の取材。

そんな細部へのこだわりや地道ともいえる一つひとつの仕事を支えているのは、やはり服が好き、テキスタイルが好き、という気持ちなのだと感じました。

最後に浜田社長も、「染色の知識や経験の有無にはこだわらないし、服が好きやったらそれで良い。好き、興味があるっていう気持ちが1番大事」と語ってくれました。

この記事を読んでもし関心を持ったのなら、その気持ちを大切にしてぜひチャレンジしてみてください。

※本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

執筆:藤原 朋
撮影:岡安 いつ美

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