募集終了2020.06.04

ものづくりのまち与謝野町から世界を目指す。使い手の“心地よさ”を追求する家具づくり

京都市内から車を北へ走らせること1時間半のところにある、人口おおよそ2.1万人ほどの小さなまち「与謝野町」。


町の北東部には、日本三景として有名な天橋立を眺望できる海が広がり、周辺は美しい山々に囲まれています。豊かな土壌で育まれるお米や野菜、地元産の素材でつくられる日本酒、伝統の丹後ちりめんなど、古くからものづくりの精神が受け継がれています。

そんな与謝野町で、1946年にあつらえ家具店としてはじまった「有限会社アリアソシエイツ(以下、ARIA)」。

オーダー家具・建具の製作、セレクト家具の販売、空間デザインを手がける会社で、与謝野町・福知山市・京都市にある3つの拠点で事業を展開しています。今回はものづくりのまち与謝野町で、人々の生活と向き合い、暮らしにより添う“心地よさ” を共に追求してくれる家具職人を募集します。

暮らしにより添い、長く愛される生活道具を目指して

「いい家具は、いい生活道具であるべきだ」と、代表取締役の有吉寿和(ありよし としかず)さんは話します。

祖父の代からはじまった家業を継承するために、25歳の頃にUターン。その後、北欧デザインを中心としたセレクト家具の販売や、インテリアショップの開業、自社工場の新設、子ども向けの木工教室の企画など、さまざまなチャレンジを重ねてきました。

「代替わりをした当初、自身がセレクトした家具をお客さまへ販売するにあたり、有名デザイナーが手がけたものや、大手メーカーで取り扱っているものなど、さまざまなプロダクトを見てまわりました。そのなかで、“いい家具”とは何かを考えるようになって。市場に溢れている製品や、名作と呼ばれる作品もいいけれど、家具はどこまでも人々の暮らしに寄り添う『いい生活道具』であるべきだと思うんです」

「いい家具はアートのように美しく、見ていて飽きがこない」と有吉社長。

使う人の目線で開発された家具は、人々の生活にも嘘をつかない。

福知山市・京都市にあるインテリアショップARIAで販売する家具は、「ハンス・J・ウェグナー」や「ボーエ・モーエンセン」といった、木の特性を活かした「北欧デザイン」を牽引するデンマーク出身のデザイナーのものが多いそう。なかでも、有吉さんは職人としての経歴をもつデザイナーのプロダクトに惹かれ、時間をかけて開発された「本物」へのこだわりを、ARIAのお客さまにも届けています。

「『本物を買う』ということは、ものに込められた『思想を支える』ことにつながるんです。彼らのようなデザイナーが、時間をかけて人々の生活と向き合ってきた背景を汲み取り、使い手への思いやりや配慮が表れたデザインを後世へとつないでいくことが、より良い未来への投資になると思っています。そういった『ものづくり』を守っていく人たちに対する敬意としてお金を払う感覚に近いですね」

そうした考えの背景には、有吉社長が小売業に専念していた時代、家具がどんどん売れていく状況とは裏腹に、つくり手と使い手、そしてご自身の仕事に対して疑問をもつようになったことが関係しています。

「ひと世代前は仕入れた家具がなんでも売れる時代で、あつらえ家具店として創業した弊社も小売業に特化し、自社工場をもつ必要がなくなるほどでした。ですが、壊れたらすぐに新しい家具を買えばいいという使い手の発想も、修理の対応をしてくれないメーカーにもだんだんと違和感を感じるようになり、そもそも『誰のための家具なのか』と疑問をもつようになったんです」

「それに加えて私自身も、家業を継いだ当時は右も左もわからない状態で、お客さまのご予算や納期に収めようと必死だったこともあり、その場しのぎで家具を販売してしまった結果、クレームにつながることがありました。お客さまはもちろんのこと、お互いにとって無駄な時間をつくってしまいましたし、その分かかったコストや、ロスになってしまった家具にも申し訳なくて。そこから、ものづくりに対して『正直』な仕事をしたいと思うようになりました」

最近は、家具メーカーが提示している保証期間を過ぎると、まだ使えるにも関わらず修理ができないケースが増えているそう。一方で、有吉社長の考える「いい生活道具」を開発するには、時間もお金もかかります。それでも有吉社長は、理想の家具を追求するため、2012年に自社工場を与謝野町に構え、オーダー家具・建具の製作に力を入れはじめます。

関わる人たちに“我が家”と思ってもらえるような場所を、と名付けられた「Factory Home」。

「修理ができない家具に対する違和感や、苦い過去の経験から、お客さまだけではなく、自分たちが大切にしたくなるプロダクトを自社でつくりたいと考え、ものづくりの原点に戻ろうと2012年にオープンしたのが自社工場『Factory Home』です」

「自分たちが思う『いい家具』を売るには時間がかかります。家具を預けてくれるメーカーや、弊社が提案するオーダー家具を必要としてくれるお客さまとの信頼関係を築くことは、簡単なことではないからです。家具は決して安い買いものではありませんが、『本物』の家具だけに宿るつくり手の思想やプロダクトの背景を理解してもらうための努力が必要だと考え、自社工場の新設を決断しました」

「夏休みの木工教室」をきっかけに「職人」に興味をもつ子どもたちも。

「Factory Home」では、家具・建具の製作に加えて、地元の子どもを対象にした夏休みの木工教室を毎年開催し、今後は大人も参加できる木工ワークショップも計画しています。ただ単に木材や道具を用意するだけではなく、自社のプロダクトとして自信をもって提供できる体験内容を用意しているそう。

「与謝野町はもともと、ものづくりのまちとして発展してきました。町の人たちも日常的にいい素材に触れているので、ものを見る目が自然と養われているような気がします。そういった地域の伝統を後世にもつないでいきたい!ものづくりのおもしろさや職人のかっこよさを伝えたい!と思い、木工教室を開催しています。この企画を通して地元の魅力を知った子どもたちが、大きくなってからも与謝野町のことを思い続けてくれるような関係性が築けたら嬉しいです」

ARIAの経営理念は「ものとこころでHappyに」。

心地のいい家具は、心地のいい場所から生まれる。こうした地域との関わりひとつひとつが、ARIAの仕事をかたちづくっていきます。

「実際に手に取ることができる物質的なものだけではなく、お客さまの時間やつくり手のこだわりといった、目に見えないけれど大切にしたい“こころ”を育んでいく家具を提供したい」と、有吉社長のお話はつづきます。親から子へ受け継がれていくような、長く愛される家具はどのようにつくられていくのでしょうか。

使い手の暮らしを想像し、ゼロから生まれるオーダー家具

有吉社長は、ゼロから生まれる家具は「人類の宝」だとおっしゃいます。

ARIAのオーダー家具・建具の製作は、使い手の「暮らし」をヒアリングするところからはじまります。普段の生活リズムや家族構成を聞き、お客さまが家でどのような時間を過ごしているのか、これから家具とともにある生活のイメージについて、お話を聞きながらスタッフ自身も想像力を働かせていきます。

「それが難しさであり、仕事のおもしろさにもつながっている」と話してくれたのは、2018年10月に入社した鍵井太貴(かぎい だいき)さん。店舗スタッフを経て与謝野町にUターンした、ARIA最年少のスタッフです。


お客さまからヒアリングしたオーダー内容をもとに、家具や建具の図面を描くのが鍵井さんの仕事。現在、18件のプロジェクトを同時に進められています。

「弊社のオーダー家具の特徴は、扱う木材の種類が豊富で、使用している金具もさまざまです。家具である以上、お客さまに安心・安全を提供することは大前提ですが、構造だけではなくデザイン面からも提案できるのがARIAの強みです」

ARIAが空間デザイン・家具製作を担当した、天橋立にある創作和食のお店「310 amanohashidate」。

「空間デザインの仕事では、家具のコーディネート以外にも、建築家とタッグを組んで備え付けキッチンや洗面台、収納棚などの設計も行います。お客さまの希望するデザインに対して、強度的に製作が可能かどうかミリ単位の調整をしながら設計図を作成していきます」

鍵井さんが描く図面。学生時は、人々の暮らしに関わるデザインを幅広く学んでいたそう。

ものづくりが好きで、中学生の頃から設計やデザインに興味があった鍵井さん。実家にもARIAの家具があり、昔から馴染みのある会社でもありました。

大学では環境デザインを専攻し、主に建築物の設計図を描いていたそう。ツールの使い方は理解していたものの、はじめはテーブルの図面を引くのも大変な作業だったのだとか。

「わからないことはすぐに社内メンバーに相談しています。難しいと感じるオーダーについても、技術面は職人の大同さんがいてくれるので安心です。納品直前まで細かいところをチェックしている大同さんのていねいさやこだわりが、”ARIAらしさ”としてお客さまに届いているのだと思います」

一生懸命手がけたものが、誰かの暮らしの一部になっていく

鍵井さんが設計した図面をもとに製作を進めていくのが、職人であり工場長の大同和樹(だいどう かずき)さん。9年前に入社し「Factory Home」の立ち上げから関わる、オーダー家具をつくるにあたって欠かせない存在です。

「ARIAの強みは、オーダーを受けるところから製作・納品までの工程を自社で完結させられることです。お客さまとのあいだに工務店などが入ってしまうと、どうしても製作の一部しか担えないのですが、最初から最後まで一気通貫して関われることで、使い手となるお客さまの顔を思い浮かべながら仕事ができます。お客さまの声も直接聞くことができるので、つくり手としても嬉しいですね」

「Factory Home」には、お客さまの希望に対して細やかに対応できるよう、専用の機材が多数取り揃えられています。規格サイズに捉われることなく、一人ひとりの暮らしにフィットする家具を提案できることは、つくり手にとっても心地のいいもの。

「既製品だと扱いにくいとされている、ちょっと変わった木目や節も、オーダー家具だと“どう活かすか”という視点で考えられるのが楽しいです。何十年、何百年と使いつづけてもらえるような家具を提案するために、何歳になっても勉強の日々です」

大同さんが手がけるデザイン建具。
大同さんが手がけるデザイン建具。

大同さんのご実家はもともと建具屋だったそう。小さい頃からものづくりが好きで、建具職人としてのキャリアもあります。はじめての試みだった「デザイン建具」のように、個々で培ってきたスキルや経験をかけ合わせて、新たなものをつくり出せる環境がARIAにはあります。

今回の求人は、大同さんと一緒に働いてくれる家具職人の募集になりますが、どのような方に向いているのでしょうか。


「シンプルですが、ものづくりが好きな方に向いていると思います。こう言ってしまうと自分にとってもプレッシャーになりますが、“いいものはいい”というところにこだわって仕事ができる方だと嬉しいです。組子をあしらったデザイン建具のように、ARIAは自分たち職人も一緒に考えながら新しいことにチャレンジできる環境です。たとえ同じオーダーであっても、つくり手が変われば同じものはつくれません。だからこそ、一緒に働けるのを楽しみにしています」

何度も足を運んで、心地のいい時間を見つけてほしい

福知山店にて。

最後にお話を伺ったのは、セールスマネージャーの藤田明子(ふじた あきこ)さん。2001年に入社してからずっと、お客さまと近い立場で仕事をされてきました。

「家の中を見渡してみても、私たちの生活において『家具』は身近なものとして存在しています。だからこそ、家具を扱う私たちのことも身近に感じてもらいたいと思っていて。友だちに会いに行くような感覚でショップを訪れてもらえたら嬉しいです」

お店の雰囲気からカフェと勘違いされる方もいるのだとか。

椅子を購入しようと来店した方が、別の家具を購入するケースもあるそう。納得できるまで何度も足を運んで、ご自身が求める暮らしにフィットする家具を見つける方も少なくはないのだとか。自分にとって“心地のいい時間を見つける”ところから、家具選びははじまります。

「住む場所や年齢によってライフスタイルは異なりますし、『座る』という動作ひとつに感じる心地よさは人それぞれだと思うんです。お店に来られた方にその場で家具を販売するというよりも、家具とともにある暮らしのイメージをお聞きし、それに適したものを提案しています」

ARIAでは、“いい家具のある暮らしをもっと身近に感じてもらいたい”と、年に数回メーカーの方を招いたトークイベントなどを開催しています。ときには、イベントで出会ったお客さま同士が「家具」を通じて仲良くなることも。ものを中心に生まれる人のつながりが、巡り巡って“ARIAらしさ”につながっていくのかもしれません。

「ARIAは家族のような距離感で、人の絆をとても大切にしている会社です。毎年、忘年会はスタッフの家族も招いて開催しているんですよ。ものづくりに真っ直ぐ向き合いたい方はぜひ、私たちの仲間になってもらえたら嬉しいです」

「将来は、海外進出も視野に入れています」と熱意を語る有吉社長。国内外のアーティストやデザイナーを与謝野町に招いて、まだ世の中にない“生活道具”をつくっていきたい!と意気込みを語ってくれました。

「学生時代は、まさか自分が家業を継ぐとは思っていなかったけれど、ものづくりのまち与謝野町に『ARIA』があることは必然だったんじゃないかと思うんです。国内外からさまざまな方に足を運んでもらえるよう、新しく迎え入れる方とともに『Factory Home』をもっと魅力的な場所にしていきたいです」

使い手となるお客さまのことだけではなく、つくり手や地域の未来のことも大切にしている「有限会社アリアソシエイツ」の真っ直ぐな家具づくり。関わる人たちが長い視点をもちながら、自分たちの考える心地良さを追求していくことで、目には見えないARIAの魅力がかたちづくられているのだと感じました。

「ものづくりのまち与謝野町から世界を目指す」そのチャレンジに、あなたの夢も重ねてみませんか。

本記事はBeyond Career事業にて受注・掲載した求人記事となります。Beyond Careerについてはこちら

執筆:並河 杏奈
撮影:清水 泰人

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