2019.09.11

これからの生き方・働き方を考えるシェアスペース。社会をよくする循環を育む『学び場 とびら』

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

「場を巡る」第5弾は、京都・四条烏丸にある『学び場 とびらをご紹介します。オフィスビルの13階をリノベーションし、2018年4月に、コフィーリングスペース(Co Feeling Space)としてオープンしました。仕事をする人もいれば、イベントを開催する人もいて、ゆっくりくつろぐ人もいる。使い手によって使い方が変化するような、自由度の高い場所になっています。

運営している中田 俊(なかだ しゅん)さんに、このスペースをつくったきっかけや、オープンしてからのことを伺いました。

感じ合うことを大切にする「コフィーリングスペース」

『学び場 とびら(以下、とびら)』は、対話することを大切にしている会員制の「コフィーリングスペース」。この場所で、仕事をしている人や、イベントを開催している人はいるけれど、明確に「コワーキングスペース」や「レンタルスペース」という名前を打ち出しているわけではありません。

「コフィーリングスペース」とは、その名の通り “感じ合う場” という意味をもっており、中田さんをはじめ『とびら』に集まる人たちでつくった新しい言葉です。

中田さん(以下、中田):「社会に対していい取り組みをする会社を増やしたい」「人が学び合い・理解し合える関係性を育みたい」と思ったときに、どのような場をつくったらそれらが実現するのかを考えました。子どもから大人まで、世代も国籍も超えて多様な人たちが混ざり合う場所をつくりたくて。

中田さんは『とびら』をつくるにあたり、 “どうすれば、世の中におもしろい変化が起こるだろう?” と繰り返し考えたそう。京都移住計画で求人記事を掲載している『ウエダ本社(※1)』さんと、約半年ほどかけて、この場のコンセプトメイキングをしていきました。

▲壁塗りワークショップの様子(写真提供:中田さん)

中田:リノベーションは『KUMIKI PROJECT(※2)』さんと一緒に企画を考え、場所をつくるところからさまざまな人たちに関わってもらうことにしました。この場を一緒につくっていくことで、“気軽に足を運べる空間” ということを感じてもらいたいと思っていて。

2017年3月に、3日間のD.I.Tワークショップを行い、2018年4月にオープンを迎えた『とびら』。

中田:「人が混ざり合う場所にしたいんだったら、靴を脱いだ方がいいんじゃない?」と誰かが提案してくれて、フラットスペースに芝生のような絨毯を敷きました。また、空間だけでなく、使う道具もなるべく自分たちでつくりたいと思い、知り合いの木工家さんに木の椅子をつくるワークショップを開催してもらったんです。

▲木工家・高橋さんと開催した椅子づくりワークショップの様子(写真提供:中田さん)

ワークショップには、中田さんのお子さんも参加。カンナを使って木を削るという経験は、はじめてのことだったそう。

中田:当時3歳だった彼も「木」を見たことはあると思うのですが、きちんと認識して「木」に触れたのは、あの時がはじめてだったと思います。家に帰ると、自宅の家具を触りながら「あの時の木と感触が違う」と話していました。『とびら』でも大切にしている “本物に触れる” という体験を通して、ものを見る目を養うことの大切さを感じた瞬間でしたね。

(※1)ウエダ本社
1938年文具卸として創業。その後、事務機器の販売事業でその名を広め、現在はリノベーション事業や空間プロデュース事業を行なっている。京都移住計画にて求人記事を掲載中。

(※2)KUMIKI PROJECT
「ともにつくること」それは、人と場の可能性をひろげ、よりよい未来をつくる力になる。KUMIKI PROJECTは「D.I.T」(Do It Together)をコンセプトに、お店、オフィス、公共空間などをともにつくる空間づくりのワークショップを企画開催しています。(HPより一部抜粋)

「どうぞご自由に」のスタンスで、使い手とともに育む場

ワークショップでつくった椅子と、味わいのある木工家・高橋さんの机。

このような場所を運営するのは、今回がはじめての中田さん。

中田:やってみないと何が起こるかわからないので、まずはルールをつくらずに『とびら』をオープンしました。会員さんや利用者さんが、思い思いの時間を過ごしていくうちに、新たなコミュニケーションが生まれ、自然におもしろい変化が起こっていったんです。

それは、運営側のみなさんにとってもうれしい変化でした。

『とびら』のある1日の様子。(写真提供:中田さん)

『とびら』は、一番はじめに来た人が電気やクーラーのスイッチを押すことになっています。

中田:場を運営するにあたって、はじめは「管理人を置かないといけないのでは?」と話していたのですが、子育て中のスタッフもいるので、管理をしようとすると運営側にしわ寄せがきてしまう。しばらく考えたうえで、“管理する” という考え方を辞めました。サービスを提供する側と提供される側という関係ではなく、「どうぞご自由に」のスタンスの方が、この場所らしい気がしたんです。

新たな出会いが、可能性の『とびら』を開いていく

『とびら』を運営する中田さんたちの本業は、同じビルの6Fにある税理士事務所です。

中田:税理士事務所には、いろいろな中小企業の方が来られます。お客さんからは、税金のこと以上に仕事の相談をされることもあります。それぞれ事業の分野は違うけれど、感じている課題感が似ていることに気づき、みんなで協力すれば解決できるのでは?と思ったのも、『とびら』をつくろうと思ったきっかけのひとつですね。

中田:それから、ある社員が話してくれた「子どもが生まれたら、子どもと一緒に働きたい!」というひと言も大きかったと思います。事務所に連れて来ることはできたと思いますが、大きさもここの半分くらいで無機質なスペースなので、お子さんにとって居心地のいい場所とは言えません。『とびら』のような空間ができれば、一緒に働く社員にとってもいい環境になるだろうなと思い、1年くらい構想を練っていました。

「この場に集まってくる人たちのことは想像もできなかったけれど、当初描きたかった場所になってきた」と、中田さんのお話は続きます。

仕事をしたり、近所のサラリーマンが休憩に来たり、育児休暇中の方が学びに来たりと、多様な人たちが自然と集まる空間になっている『とびら』。社会が目まぐるしく変化していくなかで、目の前の人たちと学び合い、感じ合い、お互いを理解することが、世界をよりよくしていくための一歩なのかもしれません。

これからの生き方や働き方を考えてみたい方、社会に対していい取り組みをしていきたいと考えている方はぜひ、『とびら』に足を運んでみてはいかがでしょうか。この場所には、今日も心地のいい時間が流れています。

学び場 とびら
住所:京都市下京区室町通綾小路上る鶏鉾町480番地 オフィス四条烏丸ビル13階
MAIL:
yumebito2015@gmail.com

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