オモロイ!が生まれる場所 人・世界・アートと繋がる、路地なかのコミュニティスペース「九条湯」

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

京都駅から南に歩くこと約15分。京都らしい、人ひとり通れるほどの狭い路地を進むと、唐破風(からはふ)の門構えが立派な「九条湯」が現れます。「今でも銭湯だと思って来る方もいるんですよ」と微笑み語るのは、管理人の猪飼直之(いかい・なおゆき)さんです。2008年に廃業した銭湯をリノベーションし、レンタルスペースや飲食営業、イベント開催などを通した、人々が集う場として蘇らせました。今回は、リノベーションによる九条湯再生の物語や、変わりゆく南区の未来について、ワクワクするようなお話を伺ってきました。

廃業した銭湯を、人々が集う場として再生

合同会社猪べ~しょんハウスの代表を務める猪飼さん。空き家再生事業や、ゲストハウスの管理などを行っています。そんな中、知り合いの方から九条湯についての相談を受けたのは2016年のことでした。

「最初は『いったいどんな銭湯なんやろう』と思いながら、この細い路地に入っていきました。そうしたら、想像を超えたすごく大きくて立派な銭湯で、びっくりしたのを覚えています」

「相続を終え、大家となったご長男は、銭湯の営業再開は考えておらず、どうしようかとても悩んでおられました。取り壊しも考えていたようですが、造りはしっかりしていたし、なんとかなるのではないかという直感はありました」

(リノベーション前の様子  提供:九条湯)

まずは、九条湯に隣接する大家さんのご自宅の建物をゲストハウスに転用しようと計画。同時に銭湯の改修も進める大掛かりなリノベーションプロジェクトが始まったそうです。

(九条湯に隣接するゲストハウス「Kyoto Kujo Inn」)

「友人のお父さんが、町家のリノベーションを多く手がけた経験があるということで、工事をお願いしました。図面も無く手探りな中、相談しながら進めてくださって本当に助かりました」

(格子状の装飾が施されたガラス窓からは、やさしい光が差し込む)
(格子状の天井は、木材にカーブをつける職人技が光る。折上格天井(おりあげごうてんじょう)という)

建築当時の宮大工による丁寧な仕事ぶりが感じられる場所は残しつつ、傷んだ箇所に手を加えながら、新たな命が吹き込まれていく九条湯。昔ながらの銭湯の雰囲気はそのままに、バーカウンターやイートインスペースを新たに取り入れた唯一無二の空間ができあがりました。

出会い、繋がることで生まれる、オモロイあれこれ

2018年にオープンし、2021年からは“コワ―ケーション”をコンセプトに掲げて運営しています。コミュニケーション+ワークの造語であるこの言葉。単に仕事や作業をするのではなく、お客様同士が交流し、何か新しいことが生まれるコミュニティハブにしていきたいという、大家さんと猪飼さん共通の想いが込められています。

実際に、九条湯での出会いをきっかけに、さまざまなイベントが企画・開催されてきました。

テーマを決めた飲み会(ガンダム好きが集まる「ガンダムバー」、妖怪好きが集まる「妖怪酒場」、サウナや銭湯について語らう「サ話会」)、フードロス野菜をお手頃価格で販売する「もったいないマルシェ」、ボードゲーム会、学生のアート作品展示会など、それらすべてに個性とアイデアが光ります。

(フードロス野菜の販売会「もったいないマルシェ」 写真提供:九条湯)
(2022年11月に行われた、学生によるアートマーケット「ARTAOTA(アータオタ)」の様子)

人のご縁がつながる先に、新しいものが生まれる。それが面白いと楽しそうに語る猪飼さん。人をつなげ、次々とアイデアを具現化していく根底には、猪飼さんの親しみやすいお人柄だけではない、Giver(与える人)としての考え方がありました。

「誰かと何かするとき、『僕ならこの人に何ができるかな』って考えて、先に自分ができることを提示するようにしています。そうすると、自然と輪が広がっていくように思います」

(京都を中心に活動するインストゥルメンタルバンド「ザッハトルテ」の演奏会 写真提供:九条湯)

「良いと思ったら、行動にうつすスピードも速いです。『こんなことやりたい』と聞いて、オモロそうやなと思ったら『いつやる?』と。このテンポ感によく驚かれます(笑)」

猪飼さんは、夢への第一歩を踏み出そうとする人の背中を押しながら、九条湯という空間を使って「あなたなら何をしますか?」と問いかけます。

変化する南区の未来に巡らせる想い

九条湯や多くのゲストハウスを運営・管理する一方、京都市南区の地域活動にも参加している猪飼さん。京都駅南の東寺道にある商店街で新たに発足した「東寺道親交会」や、廃業した町工場の再生プロジェクト「井口倉庫」のメンバーとしても活動しています。まちづくりに携わる中で、今後、京都市南区をどのようなまちにしていきたいか伺いました。

「京都駅から近いけれど、ちょっとマニアックなエリアとして認知されたら面白いですね。イメージとしては、ディープな場所を突き詰めたい人が、吸い寄せられて来るような感じ。九条湯も、その中のプラットフォームのひとつになればいいなと思っています」

「この辺りは国際色豊かで、さまざまな国籍の方が暮らしています。さらに、2023年10月に、京都駅東側に京都市立芸術大学が移転を予定していて、それに伴ってアートの要素が加わることで、世界に視野をもった若者やアーティストが集うまちになったら面白いなと思います」

(写真提供:九条湯)

地域の枠を超え、世界のコミュニティスペースとしての九条湯の役割を模索していると話す猪飼さん。同時に、地域のイノベーターを生み出し、次世代への橋渡しをしていきたいという想いがあるそうです。

「どちらかというと自分でやるよりは、他人が何かやっているのを見てるのが好きなので、たくさんの方に来ていただいて、関わっていただいて、ハマってくれたら嬉しいですね」

「まずは来てみてください。そして、我こそはというプレーヤーの方がいたら、ぜひ一緒に面白いことをやっていきましょう!」

人々が集い、日々新しい何かが生まれている九条湯。京都の人はよそ者に厳しいというイメージが強いなか、九条湯のオープンな雰囲気を体験すると、そのイメージは覆るでしょう。狭い路地の中にある広い世界を、ぜひ体感しに行ってみてください。きっと新たな出会いや、面白い何かに巡り合えるはずです。

初めて九条湯を訪れたとき、「とても京都らしい場所だな」と思いました。
それはきっと、素敵な空間はさることながら、そこに集う人の息遣いや個性を強く感じたからです。
町家が並ぶ風景や寺社仏閣だけが京都の魅力ではない。想いを持った人々が織りなす京都らしさを、ぜひ九条湯で体験してみてください。

「九条湯」
京都市南区東九条中御霊町65
営業時間:日によって異なるため、ホームページをご確認ください
ホームページ:https://kujoyu.com/rentalspace/
Twitter:https://twitter.com/kujoyu1126

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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