2020.10.26

古さもまるごと愛おしい「ただいま」と言いたくなるほど心地いい銭湯『源湯』

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京都のおもしろい場所を訪ねる「場を巡る」シリーズ。人が集いハブとなるような場や京都移住計画メンバーがよく立ち寄る場をご紹介する連載コラム記事です。一つの場から生まれるさまざまな物語をお届けします。

そろそろ寒さが身に染みてきた昨今。あったかいお湯に使って、身体の芯から温まりませんか。「場を巡る」第14弾は、大将軍の交差点からほど近い銭湯『源湯(みなもとゆ/通称:げんゆ)』をご紹介します。源湯は、京都の人気銭湯「サウナの梅湯」のゆとなみ社が運営する4つ目の銭湯として、2019年7月13日にリニューアルオープン。店長を務める鈴木 伸左衛門(しんざえもん)さんにお話をお聞きしました。

銭湯への憧れと現実

入り口に入ると出迎えてくれるのは、古い番台。創業は昭和3年。ゆとなみ社の創業者である湊三次郎さんが学生時代から通い、親しんできた縁で、元の経営者から運営を引き継いだのだそう。

「湊が前の大将の娘婿さんから『経営がきついから閉めるんや』という話を聞き、『じゃあ、もったいないので僕がやります』と引き継ぐことになったそうです。準備期間を経て、二ヶ月後の2019年7月にリニューアルオープンしました」

そう話すのは、店長の鈴木さん。ゆとなみ社が手掛けた2つ目の銭湯、大津市にある「都湯」でスタッフとして働いていましたが、源湯のリニューアルオープンと同時に、店長に就任。京都に移住しました。そもそも、どのようにして銭湯と関わるようになったのかと尋ねると、なんともユニークな答えが返ってきました。

「何件かSNSをやっている銭湯に行って、『銭湯と関わりたい人がいます』と写真とメッセージをアップしてもらってたんですよ。言いつづけてたら、何かしら結びつくんじゃないかなって」

もともとは大阪の生野区にある「源ヶ橋温泉」という銭湯に惚れ込み、関わりたいと考えていた鈴木さん。残念ながら、源ヶ橋温泉は廃業してしまいましたが、縁あってゆとなみ社と出会うことができました。しかし、源湯の店長となってからは「現実はそう甘くない」と感じることも多々、あるそうで…。

「お客さんだった時は、『レトロな佇まいがいいなぁ』と思っていたんですが、レトロ=老朽なんですよね。お年寄りが足が痛い、腰も痛いって言っているような状態で。直しても直しても、いたちごっこなんです」

銭湯の心臓部を担うボイラーも老朽化が進み、こまめなメンテナンスが必要。

また、集客も悩みのタネの1つ。源湯は大通りに面しておらず、最寄駅からもやや距離があります。そのため、SNSや口コミを頼りに集客しなければなりません。憧れと現実とのギャップ。リニューアルオープンから1年たちましたが、「まだまだしんどいな」と思うこともあるそうです。

みんなでつくる憩いの場所

それでもやってこれたのは、「源湯が好きだ」と通う常連さんやスタッフ、源湯の二階に入るテナントのお店の方々の存在はあったから。近隣の大学の学生や、常連・スタッフの紹介で少しづつお客さんが訪れるようになり、みんな「一度来たらはまってしまう」とほとんどがリピート客になってくれるそう。

その魅力の一つが、西日本最大?!の寝転びスペース。20畳ある畳に、ゴロンと寝ころべば、おばあちゃんの家のような懐かしさに包まれます。お風呂に入って、ここで晩酌をするもよし、漫画を読みながらごろごろするもよし。

一度寝転がれば、ハマってしまう寝転びスペース
訪れたお客さんが書いた「夏休みの絵日記」

銭湯と同時刻には、2階のテナントもオープン。湯上がりに、古本や古着を扱う「あきよし堂」や、香りとお茶「香茶」を扱う「Scent-mushi」を訪れることもできます。他にも月曜日限定で足つぼを受けられる「足つぼナイト」や、スタッフと縁がある農家さんからいただいたみかんを使った「青みかん風呂」などさまざまなイベントを開催しています。銭湯以外にも楽しめるコンテンツが目白押し。ここは銭湯以外も楽しめる複合施設なのです。

やっぱりこの場所が好きだから

老朽化などの苦労もあるけど、「やっぱり銭湯が好きだからやってこれた」と鈴木さん。銭湯になじみがない若い人にももっと足を運んで欲しいと話します。

「うちの自慢はやっぱり、お風呂。銭湯の佇まいに惹かれて、常連さんやスタッフが集ってくれています。年末までには、寝転びスペースの横に日本酒の飲み比べができるお店をオープンする予定です。その他にも年越しカウントダウンなど、お客さんが楽しんでいただけることをいろいろと用意しています!」

銭湯に集うお客さんとの距離を大切にし、様々な仕掛けで楽しませている源湯。古き良き京都の銭湯文化の灯を消さないように、今日も銭湯の魅力を伝えつづけています。あなたもぜひ、心と身体を休めに源湯へいってらっしゃい。一度訪れたら、きっとその魅力にはまってしまうこと間違いなしです。

『源湯』
住所:京都市上京区北町580の6
tel:080-3832-4126
定休日:火曜日
営業時間:14:00〜25:00
イベントなどの情報はTwitterにてご確認ください。
https://twitter.com/minamotoyu_kt

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