マンガが好きなら、みんな仲間です 韓国生まれの少女が京都で研究者になるまで

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京都のおもしろい人を訪ねる「人を巡る」シリーズ。京都に移住した人の体験談や京都の企業で働く人をご紹介する連載コラム記事です。移住するに至った苦労や決め手、京都の企業ならではの魅力など、ひとりの「人」が語る物語をお届けします。

© Tezuka Productions

第27弾にご登場いただくのは、京都国際マンガミュージアム研究員のユー・スギョンさんです。2004年に韓国から留学生として来日して以来、京都でマンガの研究をしたり、京都精華大学でマンガの講義を担当されたりと、幅広く活動されています。

今回は、烏丸御池にある京都国際マンガミュージアムに伺い、日本でマンガを研究するに至った経緯や今後の展望、さらにはおすすめのマンガなどについてお話を伺いました。

動き回って人に出会うことが好き

マンガミュージアムは烏丸御池の西北角にある

ーーユーさんは現在、マンガミュージアムで研究員をされているということですが、どんなお仕事なのでしょうか。

大学院生の頃から、マンガがどこでどんなふうに楽しまれているか、マンガにはどんな表現があるか、といった研究をしています。調査で海外へ行くこともありますね。大学院を修了してからは、ミュージアムの職員として研究を続けながらイベントや展覧会の企画なども担当しています。また、京都精華大学ではマンガ家志望の学生たちに教えています。「マンガ家になりたい」と思って日本へ来たんですが、私はじっと座って作業するよりも人に会ったり、動き回ったりする方が向いているかもしれないと思って、今の道を選んだんです。

壁一面にマンガ

ーーそうなんですね。マンガミュージアムではたくさんのマンガが読めるんですよね。見どころなどを教えてもらえますか。

マンガを読むことはもちろん、ここでしかできないマンガの楽しみ方を考えつくして提案しているところが一番の見どころです。例えば、普段見ることのできない原画を展示したり、ワークショップを開催したりしています。また週末には実際にマンガ家さんにミュージアムの一角で作業してもらっています。その様子を見ながら「これは何に使うんですか?」など直に質問できるコーナーも設けています。

マンガミュージアムでできるワークショップについて説明するユーさん

大人もマンガを楽しめる場所に行ってみたい

ーー楽しそうですね。では、ユーさんがマンガを好きになったきっかけを教えてください。

自身の来歴をわかりやすく描いたイラスト

私が小学生くらいの時、韓国でも日本のアニメが放映されていたので、よく観ていました。当時はセーラームーンが人気でしたね。ただ、コミックは親に「悪い子になるから読んじゃいけない」と言われていたんです。でも、小学校4年生くらいの時から少し早い思春期が始まって、「私は悪い子になる。だからマンガを読もう」と意気込んでマンガを読み始めました。すごくおもしろくてすぐに夢中になり「私もマンガ家になりたい」と思いました。もともと文章を書いたり絵を描いたりするのが好きだったので、そんな私にマンガはぴったりフィットしたのかもしれません。日本のマンガも読むようになり、好きな作品もできて、「日本語で読んでみたい」という思いから独学で日本語を勉強するようになりました。

ーーそこから日本に来ることになったのはどうしてですか。

高校は韓国アニメーション高校に進学して、本格的にマンガ家を目指し始めました。日本の大学に進学したいと思っていたので、高校2年生の時に、語学研修で東京に来たんです。2002年でしたが、当時の韓国ではマンガは子供向けという認識で、大人がマンガを読む文化がありませんでした。ところが、日本ではサラリーマンが週刊ジャンプなどを電車の中でも読んでいて、それがすごく衝撃的だったんです。「大人もマンガを読むなんて素敵!」と思って日本で勉強したいという気持ちが強くなりました。その頃、日本でマンガが学べる4年制大学は京都精華大学だけだったので、京都に来ることになりました。2004年のことでした。

京都を舞台にしたマンガもたくさんある

マンガミュージアムは、元は小学校だった建物が利用されている

ーー京都精華大学があったから、京都に来たというわけなんですね。その頃の京都の印象はどうでしたか。

京都精華大学がある岩倉はとてものどかな場所でしょう?だから両親が「すごく勉強にいい環境だね」と喜んでいました。でも、わたしは河原町など街中に出てきたらなんでもあるのが京都のいいところだと思っていました。遊ぶ場所もたくさんあって、楽しい学生時代を過ごしました。2004年からずっと京都に住んでいて、日本で住んだことがあるのは京都だけです。

ーー京都でお気に入りの場所などはありますか。

そうですね。「喫茶フランソワ」が好きで、友達が遠くから来たら、必ずといっていいほど一緒に行きます。あとは円山公園から二寧坂あたりを歩くのが好きですね。

ーー京都を舞台にしたマンガも最近多いですよね。なにかおすすめはありますか。

まず、『古都こと -チヒロのこと-』(今井大輔著)というマンガですね。男性の視点と女性の視点が織りなす恋愛ストーリーなんですが、なんと京都精華大学が出てくるんです。もちろん名前が出てくるわけではないんですが、作者は京都精華大学の出身なので、大学をよく知っている人が読んだら、背景に描かれているのが京都精華大学だと一目でわかるんです。この作品を読むと自分の学生時代を思い出しますね。あとは『舞妓さんちのまかないさん』や『はらへりあらたの京都めし』などは京都の文化や食を紹介しているので興味深いです。

マンガの国に住む人たちを探して

お気に入りのマンガを手に笑顔のユーさん

ーーこれからやってみたいことはなんですか。

今、アフリカのマンガ調査を行なっています。というのも、日本のマンガが一番翻訳されている言語の一つにフランス語があるんですね。西アフリカにはフランス語の話者が多いので、フランス語経由でマンガを読む人が増えたようなんです。マンガフェスティバルやコスプレのイベントがあったり、日本のマンガスタイルでマンガを書いて出版している人もいるんですよ。だから、これからアフリカに行って、どのようなマンガ文化があるのかということを知りたいですね。そして、その結果を、ミュージアムの展示などを通してマンガファンとシェアしたいです。これからも、世界のマンガとマンガファンに出会うチャンスをどんどん増やしていきたいですね。

ーー今の仕事をされていくなかで大切にしていることはなんですか。

一言でいえば「仲間意識」です。マンガを愛している人はみんな仲間で、ひとつのコミュニティなんだって思っています。調査で海外に行くと言葉はわからなくてもただ好きなマンガのキャラクターの名前を言い合うだけで笑顔になってしまうんです。前にSNSで誰かが「オタクに国境はない」と投稿していたんですが、本当にそうだなと思ったんですよね。私は「マンガの国」の住人です。良い作品があればどこの作品でもいいし、マンガが好きな人がいれば言葉が通じなくても「マンガの国」の住人だと思っています。

ユー・スギョンさんおすすめの京都のマンガ

古都こと -チヒロのこと-
https://www.futabasha.co.jp/book/97845758468430000000?type=1

舞妓さんちのまかないさん
https://www.shogakukan.co.jp/books/09127562

はらへりあらたの京都めし
https://www.shodensha.co.jp/kyotomeshi/

記事の作成に関わってくれたクリエイター

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