“0か100かではない”選択肢をつくろう。 関係性からはじまる新しい就職・転職のかたち

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

京都移住計画が出会ってきた企業と求職者をつなぐ機会として、2021年からはじめたプチ職業体験プログラム「はたらくを巡る」。
就職や転職前提ではなく、参加者にとっては「どんな企業なのか」、企業にとっては「どんな人なのか」を関わりの中で知るところからはじめ、対話や体験を通して関係性を深めていくプログラムです。

プログラムの皮切りとなった3月には、京都移住計画を含む京都の企業6社に受け入れ企業として参加していただきました。

はたらくを巡るの特徴の一つが、プログラムを柔軟に組めること。受入企業の課題やニーズに合わせて内容を考えるので、それぞれの企業らしさが現れたものになります。
今回もどの企業も個性豊かなプログラムになりました。受入当日は参加者とどのような時間を過ごし、受入企業にとってどんな気づきやメリットがあったのか?

座談会形式で実施した、プログラムの振り返りの様子をお届けします。進行は、京都移住計画の藤本和志が務めます。

左から大槻さん、池内さん、藤本、森さん、芳野さん、浅井さん

企業コーディネーターのみなさん
・大槻彦吾さん(株式会社ヒューマンフォーラム 人財育成部部長)
・池内琴子さん(京都信用金庫 QUESTION コミュニティマネージャー)
・浅井葉月さん(株式会社ウエダ本社 ひろげるチーム)
・芳野尚子さん(オトナリラボ 代表)
・森淑子さん(NPO法人みのりのもり劇場 事務局長)

スタッフの本音を知る機会になった(株式会社ヒューマンフォーラム)

▼実施プログラム
スタッフの個性を引き出す組織って?「ヒューマンフォーラム」で生き生きと働けるチームづくりを学ぶ1日

ーー僕は全てのプログラムに同行したのですが、ヒューマンフォーラムさんが一番、対話を重視していた印象です。今回、どのようにプログラムを組まれましたか?

大槻:参加者は働いている人のリアルな声を知りたいだろうと思い、現場スタッフと触れ合う時間をしっかり設けました。古着屋「森」とライフスタイルカフェ「mumokuteki」、そしてバックオフィス系のスタッフに声をかけて。事前打ち合わせもせずにその場から出てくるものに身を任せる形でした。

対話の様子。じっくりとお互いのことを話す時間になりました。

ーー外の人に向けて自社について話すこと自体が、刺激になっていましたね。

大槻:今回、受入れをして良かった点はまさにそこで、スタッフの視野の広がりを実感しました。普段はお客さんや社内メンバーとしか関わらないので、弊社が外からどう見られているか、どこに興味を持ってもらえているかを知れたのは、良い経験になったようです。

「mumokuteki」をはじめヒューマンフォーラムが運営する店舗見学も実施しました。

大槻:スタッフの本音を知る機会にもなりました。一人のスタッフは、以前からワーカーホリック気味で、休日に店舗へ出てきてしまうこともあったんです。でも、対話の中で「休みの日でも、仲間に会いたくなるから行ってしまうんです」と聞いて。僕は体調を心配していただけど、そのスタッフにとっては職場が癒しになっているのだと気付けました。

ーーたしかに、外の人と交わったからこそ出てきた言葉かもしれませんね。

継続的な関わりが生まれるきっかけになった(京都信用金庫 QUESITON)

▼実施プログラム
問いからはじまる地域づくり。京都信用金庫「QUESTION」のコミュニティマネージャー1日体験

ーーQUESTIONはまず館内のご案内からはじめましたよね。

池内:コミュニティマネージャーの業務の一つが、利用希望者への館内案内です。普段の仕事を知ってもらうこと、また参加者のほとんどはQUESTIONに来るのが初めてだったため、1時間ほどかけてじっくりご案内しました。

館内アテンドの様子。

池内:その後は、参加者のみなさんとブレスト会議。「どんなイベントなら参加するか」「家族で来てもらうにはどうしたらいいか」「学生にもっと利用してもらうためには何が必要?」など、日頃から考えていることに対して、客観的な意見を出してもらいましたね。
社会人2名・学生2名の参加だったので、出てくる意見もバランスがよく、参考になるものばかりでした。

毎週、館内とオンライで放送している「Qラジオ」にも出演!

ーー参加動機は「QUESTIONに行ってみたかった」という方が多かったですが、場のもつ前向きな雰囲気を体感して、間接的に気づきを得る機会になったようです。

池内:プログラム終わりの振り返りで、一人の方は「転職を決断しました」と宣言してくれましたし、学生の方は「利用したいけど、勇気が出ずに来れていない友人がいる」、と後日、高校生と大学生を連れて来館してくれました。彼は春から社会人になり福祉業界で働いていますが、今も継続してQUESITONでコーディネートしている福祉プロジェクトに携わってくれています。

ーー外の立場から見て、受入体制も参加者のニーズに応えるものになっていたと思います。現場の案内は若手の池内さんが担当し、具体的な案件相談や池内さんのフォローを上司であり副館長の津田郁太さんが担うなど、チームとして機能していましたね。

メンバーの「現場対応力」の強さを改めて感じた(株式会社ウエダ本社)

▼実施プログラム
ほしい環境は自分たちでつくる。働き方をアップデートする「ウエダ本社」の仕事を1日体験

ーーウエダ本社さんは、ありのままの仕事風景を見せていましたね。

浅井:外の人が中に入ったら、どんな化学反応が起こるのだろうと考え、できるだけいつもの仕事場に入ってもらうプログラムづくりを意識しました。
ウエダは、オフィスリニューアルの前に、「どんなオフィスがあったらいいか」「オフィスに何を求めるのか」などを社員のみなさんと考えるワークショップを開催しています。受入れ当日は、ワークショップの事前打ち合わせがあったので、参加者の方々に同席してもらいました。

浅井:また、夜はオンライン配信イベントの運営スタッフとしても動いていただいて。私たちがメンバーやクライアントとどういう風に仕事をしているのか飾ることなく、見ていただきましたね。

ーー直接、はたらくを巡るに関わっていない方も気軽に声をかけてくれていたのが印象的でした。

浅井:一部、私が抜ける時間帯があったのですが、その様子を見ていたメンバーがすかさずフォローしてくれました。ウエダの強みである現場対応力が発揮された瞬間だったと思います。

浅井さん以外のメンバーも、外から来た人に対して垣根なく接し、自然と会話が弾んでいました。

ーー実際、受け入れをしてみてどうでしたか?

浅井:きたところに対して、最上級のおもてなしをするウエダの強みを改めて実感しました。事前にお願いしなくても、気持ちよく動いてくれるメンバーの存在はありがたかったです。また、外から人が入ってくることで、会社がコワーキングスペースのように偶発的な出会いの場になる可能性を感じました。

利用者の思いを深く知ることができた(オトナリラボ)

▼実施プログラム
子どもから大人まで集う”居場所づくり”。コミュニティスペース「オトナリラボ」の仕事を1日体験

ーーオトナリラボは、前半・後半に分けてプログラムを組まれていましたね。

芳野:前半は「保護者会」をテーマに、スタッフと利用者の話を聞いてもらいました。運営からは設立の経緯や利用の流れを、利用者からは利用シーンや使ってみての感想をシェアして、両面からオトナリラボを知ってもらえる時間にしました。
利用者のリアルな声を日頃じっくり聞く機会はなので、私たち運営にとっても参考になりましたね。

子育て中の利用者やスタッフの話に耳を傾ける参加者。熱心にメモを取る姿が印象的でした。

ーー実際に、保育の様子を見学させてもらったのことで、雰囲気もよくわかりました。後半は対話がメインでしたね。

芳野:オトナリラボの利用は大きく、保育付きワークスペースの利用と親子向けイベントの参加の二つに分かれます。後半は、その二つに分かれて、スタッフとじっくり話をする時間を持ちました。

保育ルームを見学。

ーー参加者の反応はいかがでしたか?

芳野:ご参加いただいた2名は、一人が学生、もう一人が教育系NPOで働く社会人。お二人とも将来的に子育てしながら働くことを考えて、今回参加してくれました。
子育てしながら働く大変さをありのままにお伝えする中で、子どもが生まれた後の生活を想像したり、必要な準備を考えたりするきっかけになったようです。

人に伝えることで思考の棚卸しができた(NPO法人みのりのもり劇場)

▼実施プログラム
地域と市民の関わりをつくる。事業型まちづくりNPO「みのりのもり劇場」で1日体験

ーー最後は、みのりのもりです。滋賀・大阪・神奈川と各地から参加者が集まっていましたね。

森:学生2名と転職検討中の社会人の方のご参加でした。参加動機はみなさん、NPOを働く選択肢の一つとして考えたいとのことだったので、楽しいことも大変なことも赤裸々にお話しさせていただきました。

キネマ・キッチン前で、参加者のみなさんと記念撮影!

森:まず私たちが太秦商店街で運営する「キネマキッチン」に集合していただき、みのりのもりのプロジェクトをご紹介しました。その後、キッチンで提供しているランチをみんなで食べながら、楽しくおしゃべりしました。

ーーみのりのもりは、事業型NPOのためプロジェクトの数が膨大です。しかし、一つずつエピソードを交えながらご紹介いただいたので、みのりのもりがどんな仕事をしているのか伝わったように思います。

森:午後からは、活動フィールドである商店街に繰り出し、私たちが発行するフリーペーパー「右京じかん」の企画「笑顔図鑑」の取材体験をしてもらいました。これは道ゆく人にいきなり声をかけて、笑顔を撮らせてもらう企画。はじめはプレッシャーになるんじゃないかと心配しましたが、前向きに取り組んでくれて、最終的に2名の取材に成功しました。

森さんアテンドの元、商店街を散策。次々に森さんに声をかける住民の方が現れて、みのりのもりが地域密着で活動していることを窺い知れました。
笑顔図鑑に、参加者3名(右上)と参加者が取材した2名の方の写真(上段左・中央)が掲載されました!

ーー参加型プログラムは、当事者意識が増すので良いプログラムだと思いました。NPOに興味はあっても、事業のつくり方やお金の流れなどリアルな話を聞く機会は多くありません。今回リアルに語っていただいたので、NPOで働くことがどういうことが、参加者のみなさんに伝わったと思います。

森:そこはかなり意識しました。NPOといっても、霞を食って課題解決に向かっているわけではないので。みなさん私の話を真っ直ぐ受け止めてくれたようで、嬉しかったですね。私としても、みのりのもりの事業を振り返る良い時間になりました。

社内研修や部署間コミュニケーションの促進に向いていそう!?

ーーここまで各々のプログラムを振り返ってきましたが、2回目、3回目の受入れをするとしたら、どんなプログラムにしたいですか?

大隈:ウエダさんみたいに、社内会議に入ってもらうのは面白そう。ヒューマンフォーラムでは、すでに一部の会議を公開しているのですが、よりオープンにして「会議の公共性」を風土化したら形骸化した会議はなくなるかもしれません。

森:会議シェア、いいですね!

浅井:今回は1日体験でしたが、複数日のプログラムにしても面白そうです。すると、日頃のウエダをより体感してもらえますし、もっとお手伝いに留まらない関わりしろをつくれるのではないかと思います。
これは私の反省点ですが、準備段階から社内メンバーをもっと巻き込めばよかったと考えています。するとプログラム後の関わりも広がりますし、継続的に外の人が関わることで社内制度や風土が変わっていく可能性もあると感じました。

森:みのりのもりが次、はたらくを巡るを受入れるとしたら、若手や日頃発信の機会が少ないスタッフにコーディネーターを任せたいです。発信側になることで、より自社のことを理解できるようになると思うので。

芳野:それはありますね。外の人に説明をすることは、私たちにとって会社や事業を振り返り、自分たちを知るきっかけになりました。他にも、異なる部署の仕事を理解するための社内研修としても活用できそうです。

振り返りは、受入企業の一つ京都信用金庫が運営する「QUESTION」で実施しました。

京都移住計画は、魅力ある京都企業の情報発信や求人のサポートと、就職や転職などを考える方のサポートと双方の間にたつ立場として活動しています。
その中で、就職や転職をするかしないか、0か100かではない、あいだの関わり方や関係性づくりの機会をつくれないかと、「はたらくを巡る」を企画し、今回私たちも受入企業の一つとなり実験しました。

プログラムと振り返りを経て感じたのは、「企業の中に外の人を入れる機会の重要性」です。

社内メンバーにとっては、自社のことを外の人に語ったり、外の人と自社の課題や余白を一緒に考えたりすることが、新たな気づきを生み、組織の活性につながっていました。
また、外の人は、受入企業のテーマを一緒に考える中で自然と企業への興味が増し、その先にプロジェクトを一緒に始めたり、就職や転職という選択をしたりする人が生まれています。

企業の中に向き合い、中を外に開くことで、内外の交流が生まれる。そこから新しい気づきやファンが生まれ、関係性からの採用につながっていく。「はたらくを巡る」は、そんな新しい採用の形を提案するプログラムになっていけたらと思います。

内外との接点づくりや関係性から生まれる求人サービス、社内の気づきやきっかけ作りの研修に興味をお持ちの企業さんがいらっしゃれば、ぜひ一度お試しください。

▼はたらくを巡る
https://kyoto-iju.com/hataraku/program

▼Beyond career
https://beyond-career.jp

記事の作成に関わってくれたクリエイター

  • このエントリーをはてなブックマークに追加