創造する地域

移住からツギのライフスタイルが生まれる

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分野を飛び越えて活躍する多彩なクリエイターの声に耳を傾け、これからのデザインやものづくりについて考え、創造し、共有するトークイベント「クリエイティブ・テーブル」京都移住計画の田村がゲストスピーカーとしてお話させていただきました。

当日のイベントの様子やスタッフが気になった事をお届けします。

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今回のテーマは、
『創造する地域―移住からツギのライフスタイルが生まれる』。

「もの」や「こと」が生まれるとき、そこにはいくつかの「理由」や「思い」が必ず存在します。昨今、人々が「もの/こと」を求めるとき、ストーリーが不可欠な時代になってきました。

各地方にある文化・歴史・ものづくりも、地方に若者が移住し生活する中で地域の魅力を再発見し、自分たちなりの磨きをかけ伝える活動が各地で生まれてきました。

そんな背景を踏まえて、田村ともう一人のゲストの新山さんの事例を紹介しながら、地域で今後紡がれるツギのライフスタイルを探っていきました。

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福井を拠点に活躍中の「TSUGI」の新山 直広さんとともに登壇

今回のイベントは、田村の他に、福井県の鯖江市河和田地区でデザイン事務所を開き地域に寄り添ったものづくりを発信している「TSUGI」の新山直広さんが登壇されました。

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「“次”の世代である若者がものづくりや文化を“継ぎ”、新たなアイデアを“注ぐ”ことでモノ・コト・ヒトを“接ぐ”」という意味が込められた、株式会社「TSUGI」。
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そんな「TSUGI」は、福井県鯖江市を拠点とし、『“次”の時代を見据えて地域の魅力を再価値化することのできる作り手を増やすことを通して、創造的な産地をつくる』というビジョンのもとに、地域や地場産業のブランディングから、地場の技術を使った商品の企画・販売・ショップ運営までの“支える・作る・売る”を一貫して行う、デザイン会社なんだそう。

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穏やかさと面白いことに心を躍らせる少年っぽさをせ持つ新山さん。

そんな新山さんが福井県鯖江市に初めて来たのは、学生時代、アルバイトをしていた設計事務所が行うプロジェクトである、「河和田アートキャンプ」がきっかけだったんだそう。

「はじめは半分義務のような感じで参加したのですが、プロジェクトが衝撃的に面白くて。その中で林業、農業、伝統産業、教育とかを掛け合わせて、地域の未来を考えたんです。ちょうどそのころ、建築は建てることが目的じゃなくて、ソフト面のプランニングが重要じゃないかと考えはじめていて。大学を卒業するころ、その設計事務所の代表が新たに地域づくり系の会社を立ち上げる際に、誘ってくれたんです。これからの時代は、コミュニティデザインなんだっていうことを考えて飛び込みました。」

そうして訪れた最初の勤務地が、偶然にも鯖江市だったんだそう。しかし、同世代の知り合いは一人もいない、自分の能力不足で仕事はうまくいかない車の免許を持たずに来たので、移動もままならない。移住して始めの1か月で挫折をし、自分は地域づくりに全然向いていないと思ったのだという。
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それでも、越前漆器の仕事に関わる機会を得ることで、少しずつ鯖江市が“自分ごと”になっていったのだそうで、「職人さんや問屋さんを回って、業界のおかれてる状況や仕事について色々と話を聞いて回るような仕事を通じて、売り場調査に東京へ出かけたとき、たまたま入ったお店でワゴンセールのように雑に扱われている漆器を見たんですよね。ちゃんとしたものづくりをされている知り合いの職人さんが作ったものだということがわかって、『価値がきちんと伝わっていないんだ。』と悔しさのような気持ちが芽生えてて。

それから、自分に何ができるかを考えるようになったんですね。産業と生活が一体化しているこの町では、ものづくりが元気にならないと、きっと町も元気にならない。そこから関心が、コミュニティデザインからものづくりへシフトしていって。いろいろ考えた末に、作って終わりではない売るところまでデザインできるデザイナーになろうって思ったんです。そう思ったら、本気でこの町と一生寄り添っていけるって思うようになりました。

もともとは、鯖江市でコミュニティデザインなどの現場経験を積んだ後に、東京へ行くことや、ものづくりをするならデザイン事務所に一度就職して勉強をする方がいいのではないか?というようなことを考えながらも、新山さんの可能性を信じてくれる方々のおかげで、残って仕事をしていくことなったといいます。

結婚を機に奥さんが、前の会社に僕の後釜として若い人が、木工職人をやりたいという若い子が移住してきて、ひとりぼっちだった新山さんに仲間ができて、土日にパーティーができるくらい楽しくなったのだという。

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そんな心強い仲間の移住者のみんなと様々な仕事を受けていた最中、移住者の友達と開いた飲み会での会話が、「TSUGI」を結成したきっかけになったんだとか。

「それでも、みんなと飲んでいると『今は仕事が充実しているけれど、将来はどうなっているかな』って話すんです。嫁さんはイヤイヤ来たので、福井の悪口をすぐ言うし。僕はエセ福井人としてのプライドがあるので、憂いているだけじゃ一生何も変わらないから、自分らでやれることをやろうと話して。とりあえずチームをつくって面白いことをはじめようと、TSUGIを結成したんです。」

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そこから、地元のメーカーさんと二人三脚でおこなっているデザイン・ブランディング、アクセサリーブランド「Sur(サー)」という自社ブランドの企画販売と鯖江のものづくりを盛り上げていくためのポップアップストアやイベントの企画を中心に、一年目は「拠点づくり/仲間づくり」、二年目は「一緒に作る」三年目は「法人化/新体制に」というテーマでそれぞれ活動を行ってきたのだという。

「福井県って幸福度No.1なんです。幸せだし心地よいからこそ、危機感がないと思うんですよね。福井も間違いなく刻一刻と廃れていっている。ただ、希望があるんですよね。面白がれる人材が増えて、やっと役者が揃ってきた。福井はまだ完成されていないから、やれる余地がたくさんあって、ちょっと活動するだけで注目してもらえる。いま福井はチャンスの時期だと思うんですよ。面白がって自分でやりたい人には、もってこいだと思います。」と話されていました。

“ほしいものがないなら、つくる。” “他人事から自分事へ”

移住計画の田村が大切にする価値観と重なり合う話に、田村も興味深そうに話を聞いていました。

地域におこってほしい次の流れに想いを馳せる

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2人それぞれの活動の紹介の後は、田村から新山さんに、新山さんから田村にと、お互いに質問しあいました。

とくに面白かったのがこの話題。

新山さんの「移住希望者はどんな方が向いていますか?」という質問に対し、田村は

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「移住される方にはいろいろな方がいらっしゃっていいと思いますが、しいて地域に対しては、特に『担い手力』がある人に来て欲しいと思っています。地域を消費するのではなく、地域から何かを生産するような人たちです。何人増えたかではなく、その人が『何人呼べるか』を見るのが大事だと思っています。担い手力をわかりやすく言えば、あくまでイメージですけど、こうなります。

仕事があり、家があり、情報も整っていてはじめて移住ができるという人『1人力』、自分の家や仕事を探すことはもちろん、自分の家を住み開きをして人が集う場をつくる人『5人力』、地域の人の協力を得ながら、例えばマルシェなどのようなイベントを開催するような人『10人力』、地域資源を生かした小商いをつくり、さらには事業へと発展、雇用を生める人『100人力』。

こんなイメージで捉えています。次なる移住者を呼び込む力という意味では『5人力以上』の人が来てくれることが大事なのかな、と思っていますね。ただ単に数字が増えれば良いというところではなく、京都やその地域の良さを引き継いて行けるような人に集ってほしいと思います。」と語りました。

新山さんはそれに対し、

「そのイメージの中でさらに言うと、いままでの移住が『移住1.0』だとすると、1.0の時は『100人力』の人が多く、その人たちだけが取り上げられてきたこともあって、『5人力』から『10人力』の人が入ってきにくい傾向がありました。でもこれからは、移住2.0として『5人力』などの事業を安定化し拡大させていくことに意志のある人が入ってこれるような仕組みを作っていきたいですよね。」と話しました。

「これから生きていくために我々が備えるべき能力は何だと思いますか?」という新山さんからの問いかけに対し、

田村は「移住計画の運営元である株式会社 Tunagum.に込められた“つなぐ”と“うむ”という二つのキーワードに関する能力が大切になってくると思います。

スクリーンショット 2016-07-21 19.53.29日本に本来あった人と人、人と食べ物や人と家などの身近であたたかなつながりが、戦後の経済成長によって遠く機械的なつながりへと変化し、希薄化してきました。その経済成長も陰りを見せているいま、我々が今後やっていくことは、原点回帰を超えた時代に即しながら新たに豊かなつながりを結び直す力だと思います。

”シェア”という考え方や”産地直送”などすでに定着しつつあるものもありますが、人が住まなくなった古民家を約100人が資金を出し合って共有で使う「シェアビレッジ」という活動や、作った人の想いを知ることができ直接やり取りをすることもできる「食べる通信」など、今まさに、つながりの結び直しから新たな可能性が広がっているものがあります。

様々なモノやサービスがある昨今で、そのつながりを紡ぎなおすことを通して、新たな価値を生むことのできる人たちが求められていくし、この時代を愉しんで生きていける人ではないかと思います。」と語りました。

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会社名もTunagum.とTSUGIとそっくりでしたが、世代も近く、学生時代の経験からそれぞれの地域で働くことを決めた経緯や、考えていることなど何かと共通点の多い、田村と新山さん。後ろから聞いていると話す言葉や内容が似ているため、どちらが話しているのか分からなくなるほどでした。参加者のみなさんはもちろんのこと、二人そろっての登壇で新たな気づきも多かったイベントのようでした。

text:大西芽衣
photo:もろこし

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