移り住むヒトのコト01

場所を選ばない会社が“京都”を選んだワケ
株式会社ロフトワーク 川上直記さん

2011年、東京から京都に支社を出したロフトワーク。クリエイターとのコラボレーション型制作や、デジタルものづくりカフェ・FabCafeなどで注目を集めている企業だ。

京都に進出した理由や、東京で働くこととの違い、京都生活での気づきなどを、同社社員の川上直記さんに聞いた。

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           ロフトワークが入居するCOCON KARASUMA

ー京都にどうして支社を出すことになったのでしょうか。

もともとロフトワークの強みは、クリエイターとオンライン上で繋がり、どこにいてもチームが作れて制作ができるという、「インターネット上でクリエイティブを流通させる仕組み」にありました。それが、2010年にOpenCUという勉強会プラットフォームをはじめたり、2012年にFabCafeをはじめたり、だんだんとリアルな場に人を集めて一緒に考える機会が増えてきたんです。

僕らも、そんな場を通じて、オンラインとリアルの両方の場所でものをつくっていく醍醐味を学んでいきました。でも、東京という限られた拠点でしかそういう場が持てないのは、面白くないかな、と。

他の地域、特に日本だと関西圏には、面白いクリエイターが沢山いるだろうという事と、もともとお付き合いのある企業が京都にあったという理由で、支社のアイデアが浮上しました。京都は、世界的にも有名な土地で、個性的な人が集まり何かが生まれそうな場所ですよね。

それで、ロフトワークは比較的フットワークが軽い会社なので、まずは行ってみよう!ということになり、ふとある朝に「社内で京都行きたい人いる?」という感じで社内公募があったんです。僕自身、もともと関西出身で、京都に住んでみたかったので、この流れに乗らないと損だなと思いました。実際、京阪神をうろうろしていても、京都は面白いひとが多いですよね。

 DSC_0945         ロフトワーク烏丸 クリエイティブディレクター・川上さん

ー面白い人というのは、なにか雰囲気が違ったりしますか。

「関西で独自の文化をつくっていくぞ」という方が多いのかもしれません。

例えば、ロフトワーク烏丸が入居しているビル「COCON KARASUMA」は面白い企業や人がいっぱいいますね。ご近所のデザイン会社さんとお話ししていても、関西で面白いことができる!っていうメラメラした想いがあり、他の入居企業さんもアグレッシブな人が多くて刺激になります。

手塚治虫先生がいた「トキワ荘」じゃないけど、ヒトモノコトが集まって、何かがぶわっと起こる感じが、この建物にはある気がします。入居企業だけでなく、COCONの近くには、クリエイティブ関係のチームがたくさん活動していて、みんな、なにかしら繋がっているようです。会ったことがなくても、京都っていう枠というか、連帯感があるというか。ぎゅーって集まっている感じがします。

京都と渋谷のオフィス間では大画面を通じて常時コミュニケーションが可能
      京都と渋谷のオフィス間では大画面を通じて常時コミュニケーションが可能

 ーつながりや枠という感覚についてもう少し聞かせてください。

東京にはもちろん、いろんなイベントやネットワークはあるのですが、京都だと、お互いの距離が縮まるのが早い感じがします。

あと、OpenCU(ロフトワーク主催のクリエイティブなイベントの場)を開催していて思うのは、東京の場合、WEB・クリエイティブ系の関係者が集まりますが、京都だと舞妓さんの着付けの方とか庭師の方なども突然やってくるんですよ。

日常的にまったく違う世界、例えば伝統文化に関わる人にも会えてしまう。というのが凄く面白くて。そういう人たちも、垣根を超えて行くことを厭わないというか、「ほな行こか!」という気軽さがあるのが素敵だなあ、と思いますね。

ー仕事や生活面の違いや、インプットやアウトプットなどは変わるのでしょうか。

仕事においては、東京の方が自分の中のスピードが加速する気はします。情報が色々と入ってくるから、そこで自分としても出していく量が増える感じ。

京都は情報を取りに行かないと入ってこないから、そういう意味では大変というか、自発的にインプットしないとアウトプットのスピードは遅くなってしまう。でもスピードが一番か?と言えばそうではなくて、こちらでは人の繋がりや「縁」を大切にするところがあって、じっくりと物事を見据えた上でよいアウトプットを生んでいっているように感じます。そしてそれぞれがユニークで面白いです。

ー東京は確かに普段の生活での刺激は多い。電車の広告も圧倒的に多いし、知らず知らずインプットされてくる情報も多い。

実は僕はすごくミーハーなので、情報が多い環境も好きですよ。でも一方で、東京だと新しい情報やイベントに乗り遅れまいというちょっとした焦りもあったりします。そしてそれぞれのクオリティが高くて、でもちょっと出来上がってると言うか固定化されているようにも感じます。

こちらでは取り組みやイベント自体もいい意味で出来上がりきっていない面白さがあり、未完だから楽しめたりするんです。当たり前ですけど、それぞれに良いところも足りないところもあって、場に合わせて自分の動き方もデザインし直せば良いのだと思います。

ロフトワークメンバーの名刺は、すべて各自の手書きロゴ入り        ロフトワークメンバーの名刺は、すべて各自の手書きロゴ入り

 ー最後に、京都でのこれからについて聞かせてください。

もっと京都のクリエイターや制作会社とのつながりを増やしたいですし、京都の企業とももっともっと深くじっくりとお付き合いをしていきたいです。そして、ロフトワーク烏丸のメンバーも増やして、OpenCUなどのイベントも積極的に開催したい。僕たちはここを「西の拠点」と考えているので、実績を増やしながら、大阪、神戸という感じで広げて西日本全体に広げられたら幸せです。

いい意味で東京との壁をなくすというか、たかだか2時間の移動距離ですし、東京で醸成したカルチャーを持ち込むのではなく、東京のいい所を吸収しつつ、京都や関西のいい所も発信していけるというのが一番重要。その活動を京都からはじめていきたいという思いも強いです。また、関東にいながら関西に戻ってきたい人が、ロフトワークに入社したい!というのもウェルカムです。僕自身そうですし、そういう流れは良いなぁと思っています。

毎年開催している、ロフトワーク合宿。チームを即席でつくって、全員でものづくりに挑戦  毎年開催している、ロフトワーク合宿。チームを即席でつくって、全員でものづくりに挑戦

ーロフトワークさんのように京都に拠点を構えた会社が活躍し、新たな雇用が生まれ、また京都発のクリエイティブへ注目が集まるのを楽しみにしています。

「何かをやろうよ!」と、りきみすぎると、苦しいですよね。結局何も生まれなかったりする。だから、僕たちは、OpenCUのイベントやちょっとした催しを通して、ロフトワークにふらっと立ち寄って、ピザでも食べてたら、良いアイデアや仕事に繋がった……みたいな、そういう場づくりを大事にしたいんです。

京都や関西地区ならではの多様なネットワークができたら、そこからきっと新しい仕事やサービスをつくることができるはず。人を紹介し合える、京都らしい感覚が、コミュニティを大事にするロフトワークの文化ともマッチしていると思います。ぜひ、これからも出会いとご縁を大事に、西のクリエイティブを盛り上げる活動をしていきたいです!

◆取材後記
ロフトワークさんが京都に支社を出すというニュースを聞いた時は、なんだか嬉しくなったのを覚えています。ひとつの立派でお洒落なオフィスで働く事よりも、働く場所を選べる事の方が、働き方や生き方の可能性が広がり、結果的に豊かな暮らしができるような気がします。そんな可能性を感じるお話を聞くことができました。

10月にはじまった新たな採用活動もとてもユニークなので、京都で働きたい方(に限らず)は是非チェックしてみてはいかがでしょうか。