場をめぐる03

学森舎

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京都・三条京阪から徒歩5分の場所に、町屋を利用したアカデミックスペース「学森舎(がくしんしゃ)」はあります。家主である植田元気さんの自宅1階を「住み開き」として解放し、2階はシェアハウス・ギャラリーとして利用されています。2011年のオープンから様々なイベントを実施されている植田さんに、学森舎という場について、お話をお聞きしました。

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いろんな人と出会って話せて、ご飯を食べてお酒が飲める
そんな有機的な場を作りたい。

― まず、「学森舎」がスタートするきっかけを教えて下さい。

この町屋は元々僕の自宅で、初めは1人で住んでました。当時は大阪の役所で公務員として働いていたのですが、丁度ゲストハウスとかシェアハウスが流行り出した頃で。僕自身、海外を旅しながらゲストハウスに入り浸っていたような時期があったので、学校や職場・家みたいに無機質な場とは違うスペースで、様々な人と出会えて話せて、ご飯が食べられてお酒が飲める、そういう有機的な場を作れないかなって思うようになったんです。

とはいえ公務員は副業が出来ないので、カフェやゲストハウスは難しい。どうしようかと考えた結果、別に店をやらんでも、自分でこの町屋をそういう場にしてしまえばいいやんかって思って。家の前に『ご自由にお入り下さい』って看板だけ出しといたら、誰か入って来るんちゃうかなって、玄関をバーン開けて1ヶ月くらいやってみたんです。

初めのうちはあんまり人が来なかったんですけど、京都には大学生が多いし、学術的な話すネタがあってその後に飲み会をすれば、結構人が集まって来るんじゃないかなって思って、そこから「学問」をテーマにイベントを始めたのがきっかけですね。

「学森舎」という名前は、この最初に決めたテーマと、色んな生き物が住み多様なものが育まれる「森」のイメージから来ていて、多様な人たちが集まって学べる家にしたいな、いろんな人に来てほしいなっていう想いを込めてつけました。

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『住み開き』によって偶発的に生まれる繋がりと新たな発想。
その秘訣は『無目的性』

― 実際にイベントを始めてみてどうでしたか。

実際に始めてみると、初めて出会う人同士で広がる輪があり、好き放題騒いでく人がいたり、イベント後にそのまま寝ていく人もいたりして(笑)、様々な人が入り乱れるカオスな空間になっていきました。2011年~2012年くらいの時期って、『住み開き』をする動きが、日本全国で同時多発的に起きてたんですよね。住み開きって簡単に言うと、「自分のプライベートな空間を誰でも入って来れるようにパブリックに開く」という意味なのですが、これが学森舎のキーワードにもなっています。
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この住み開きというものから、人との交流や新しいことが生まれて、様々なことが起きるという話なんですが、ここ最近は学問的なイベントって実はそんなにやってなくて。初めのうちは人を集める目的でテーマを設定していろんなイベントをしていたんですが、最近はむしろ、あまり目的を持ったらあかんなという考え方をしてます。

目的って、達成するとそこで終わってしまう。達成できなくてもしんどい。設定しようと思うこともしんどい。「目的を持たないといけない」ということ自体、こうした場にはそぐわないなって思うようになってきました。テーマを決めてしまうと、そのテーマが好きな人しか来いひんかったりするじゃないですか。目的の部分を明確にしてしまうと、偶然の繋がりとか新しい発想が生まれにくいんですよ。だから、こういった場での大切なことって、無目的性なんちゃうかなと思います。

目的を限定せずにフワッと人が集まって、みんなが肩の力抜いた状態でねっころびながら、「自分こんなん興味あんねん。」「俺も興味ある。」なんてグダグダ言ってるうちに、「じゃこんなんやろか!」「それおもろいやん!」ってなって。そういう無茶苦茶な提案の中から、今まで無かったような新しいものが生まれていく。「『目的が無い』という目的」こそ、必要やなと。

イベントも今では、何らかのコンテンツみたいなものは用意しつつ、場の流れに身を任せる柔軟性やいい加減さみたいなもんを大事にしてます。お客さんに手伝ってもらったりとか(笑)。計画性がないって怒られる時もあるけど、それはそれでええかなって。

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― 学森舎に来る人は、どんなことを求めてこの場を訪れているのでしょうか。

新たに人と出会う場所を求めて来る人もいますし、誰かに連れられて遊びにきたっていう人もいます。寂しいからっていうのもありますね。若い人や学生が多いですが、30・40歳を超えている方や、京都には留学生も多いので、外国人も来ます。

ここでは、人と喋ることが一つの娯楽になってます。人っておもろいんですよ。いろんな人と会うと、偶発的な繋がりがたくさん出来て、ほんまにいろんなことが起きるんです。人と喋ることで、今まで自分が考えて無かったことにたどり着く可能性が高くなる。考えてもなかったことが起こったり、それまで知らなかったところに連れて行ってもらえたり。そうしたことが全部新鮮なんやと思います。偶然的な出会いが連続的に起こる方が人生って楽しくて。絶対そっちの方がわくわく感があると思うし、自分もそういう場を作りたいっていうことだと思います。

京都って、伝統的なものから最先端なものまで、いろんなものが入り乱れてつくられているとこじゃないですか。京都全体でボヤっとしてるというか。地元の人がいて、観光客がいて、外国人もたくさんいるし、何より学生が多いから暇な人も多い。文化を文化として掘り下げるのって、時間がないとできないと思うんですよ。そういう町に学森舎みたいな場を作るのっていうのは、凄く調和が取れてるなぁって。

京都には町屋がたくさんあるっていうのもいいですね。他府県だと、マンションを住み開きにしてる所があるんだけど、マンション系の建物ってこういう場を作るのに向いてるとは思っていなくて。町屋は、住むこと・働くこと・食べること、いろんな機能を備えていて、初めからパブリックスペースとプライベートスペースが混在しているような構造になっているんです。玄関を開けとけたり、用途によって襖をはずせたりと、いろんな工夫ができる。そういう町屋が本来持っている構造と、住開きの趣旨みたいなものがぴったり合っていると思います。

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学森舎から目指す、新しい暮らし方・働き方。

― 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

学森舎のようなスペースがもっと増えて欲しいと思っています。友人の家に遊びに行く時みたいに気軽にフラっと立ち寄れて、その場でイベントに参加することも宿泊することもできて、いつの間にかそこにいるみんなと友達になっている。そんなスペースが日本にはまだまだ少ないです。だから、全国に増えて欲しい。

それから僕はここをきっかけに、新しい暮らし方・働き方や大きなうねりに繋げていきたいと思っています。学森舎を始めてもう3年程が経つのですが、学森舎での活動が本格的になってきた頃、ここで何とかやっていけるように収益をあげて仕事にできひんかなって思って、見切り発車で公務員の仕事を辞めちゃったんです。

最初のうちは、ここでやったイベントをとにかく継続していくってことしか考えていませんでしたが(笑)具体的なビジョンも全くなくて、2階の居住スペースやギャラリーを有料で貸し出したり、現在も行っている公務員試験の講師として働いたりして。でも、一昨年あたりから、ここの場所そのものを収入にするよりは、ここに来た人をきっかけに何か新しい「アイデア」が生まれて、そのアイデアが仕事になっていく方がおもろいなって思うようになりました。

そんな風に考えていた年の10月に、学森舎に以前来てくれたお客さんが別のシェアハウスで開催したホームパーティがありました。そしたら、そこで出会った一級建築士の人と、近くに空いていたテナントで不動産と建築をテーマにした事務所をつくろうという話になって、本当に開いちゃったんです。その後も、こうした人とのご縁から少しずつ仕事が生まれていって。

こんな風に、家をベースにしながら生活を無理に削らず、仕事とプライベートがグレーで混ざっているような生き方も選択肢としてあっていいよ、ということを僕自身が体現していきたいですね。就職活動をして会社に務めるという働き方以外に、自力で仕事を探してきたり出会った人と仕事を創ったりして、生活と仕事が一致しているような働き方が出来る社会になって欲しいです。それを僕が先駆けて、ここの場でやっていきたいと思っています。

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◆取材後記
今回は、学森舎の植田元気さんを取材させていただきました。お話の中で、「目的が無いという事が目的」という言葉が特に印象に残っています。目的やテーマを決めずに様々な分野の人が集まることで、おもしろい化学反応が起こり、新しいアイデアが生まれるというのは、とても新鮮な考え方でした。年末のお忙しい中、快く取材を受けて下さった植田さん、本当にありがとうございました。

◆リンク
・学森舎 facebook:  https://www.facebook.com/gakusinsya
・住所:〒606-8366 京都市左京区超勝寺門前町89

【取材・写真】 京都移住計画学生ライターインターン   西野 愛菜
【編集】飯島 千咲

 

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