人と生活、仕事が密接な「営む暮らし」に出会う14日間

よさのワーキングステイ・トライアル 開始!

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▲写真提供:海の京都DMO
京都府の北部に位置する人口22,000人ほどの小さな町、与謝野町。東は天橋立が見える海が広がり、西は豊かな緑を抱える山々に囲まれています。代表的な産業には、豊かな土壌で続いてきた農業や酒造り、そして「丹後ちりめん(※1)」をはじめとする織物などがあります。
(※1)丹後ちりめん・・丹後ちりめんは経糸(たていと)に撚りのない生糸、緯糸(よこいと)に1メートルあたり3,000回前後の強い撚りをかけた生糸を交互に織り込んで生地にし、その後、精練することによって糸が収縮し、緯糸の撚りが戻ることで生地全面に細かい凸凹状の「シボ」ができる織物のこと。(参照:丹後織物工業組合HP)

現在、この町では、地場産業の魅力を見直した新たな商品の開発や “みえるまち” をコンセプトにした町全体のブランド戦略に積極的に取り組み、新たに人々の行き来が生まれています。

本日は、そんな与謝野町で地域の仕事や暮らしを14日間に渡って体験できる「よさのワーキングステイ・トライアル 2017」(以下、よさのWST)をご紹介していきたいと思います。
よさのWSTで体験できる地域の仕事は、昨年度に引き続き ①農業 ②染織 ③酒蔵。今後さらに2プログラム増える予定ですので、こちらについてはWebページをご確認ください。


(※昨年度の様子はyoutubeにアップされていますので、そちらもぜひご覧ください。)

農業プログラム受け入れ先の(有)あっぷるふぁーむさんでは、野菜、果物、米、豆、牛など、様々な品目を育てています。
牛の糞を活用した堆肥や与謝野町の有機質肥料「京の豆っこ」を使用することで農薬や化学肥料の使用軽減にも取り組んでおり、よさのWSTを通して、地域で循環する “本来の農業のあり方” を考えるきっかけになればと常務取締役の中谷さんはおっしゃいます。
また、こちらの農場で採れた作物をジュースに加工して出荷・販売するなど「農業」の分野から六次産業化へ向けて積極的にチャレンジしている企業のひとつなので、これから新規就農を検討している方にぴったりのプログラムかもしれません。


こちらは、酒蔵プログラム受け入れ先の与謝娘酒造さん。

明治20年に創業し、代々、与謝野の美味しい水を生かしてお酒を造ってこられました。与謝野町大江山の伏流水は軟水で酵母菌の発酵がおだやかなので、柔らかい味のお酒に仕上がるのだそう。
6代目となる西原司朗さんは東京農業大学で醸造を勉強。家業を継いでからは、日本酒だけでなく梅酒やスパークリングも造り始めました。また、最近では与謝野町で試験的に生産が進められているホップを使ったソフトクリームを作るなど、新しいものづくりへの好奇心あふれる方です。

昨年度のプログラムは、雪が深い冬の時期に、お酒を仕込む杜氏の仕事を体験しながら、イギリス・ウェールズから訪問したみなさんと日本酒を通じた文化交流や、地域のイベントへ参加するなど、仕事も暮らしも密度の濃い内容になりました。
参加した五島さんは “思っていたよりも100倍の経験や知識を得ることができた” とプログラムを振り返ります。

今年のよさのWSTは一体、どんな14日間になるのでしょうか。
まずは、先日のイベントでゲストとしてお越しいただいた、染織プログラム受け入れ先の柴田織物の五代目・柴田祐史(しばた ゆうじ)さんに、ご自身のこれまでや今年のプログラムについてお話を伺いました。

“織物屋さんもかっこいいよね” という町の空気感をつくりたい!柴田織物五代目の新たな挑戦。


大阪の大学を卒業後、大阪の電機メーカーに勤めていた柴田さん。
27歳のときに先代であるお父さまが体調を崩されてしまい、与謝野町にUターン。そこから家業を手伝いはじめます。

柴田織物が手がけるのは「丹後ちりめん」の中でも特殊な「縫取(ぬいとり)ちりめん」という、生地に金糸・銀糸・ウルシ糸・ラメ糸などの装飾糸を使って模様を縫い取った贅沢なちりめんで、留袖・訪問着などを中心に豪華さを演出する場面で活用されています。
柴田さんが与謝野町に戻って3年が経った頃、先代が他界し会社の経営が大きく傾いてしまいます。


▲Photoshopで夢中になって柄のデータをつくっていると、レイヤーが100を超えてしまうことも・・

その時に「縫取ちりめん」の技術を使って何かできないかと、柴田さんは上の写真のようなユニークな模様づくりに取りかかりはじめました。溝の蓋やマンホール柄、迷彩柄など様々で、次第に織物業界で注目されるようになります。

多くの伝統産業と同じように、丹後ちりめんも分業制をとっています。糸をつくるメーカーや、ジャカードのデータをつくるメーカーなど、図案、織り、染め、加工それぞれに職人やメーカーが関わっており、データや柄の権利を持っていない工場はこれまで直接お客さんの顔を見てやり取りをすることはできませんでした。
“顔が見えない関係性” が原因で利益を出しにくい構造になっているのでは? と感じた柴田さんは、自身で絵を描き、データをつくり、直接百貨店で販売するところまでの全てをひとりでやってみることに。

そうして、しっかりと利益が出る構造に組み替え、多様な流通ラインに商品を卸すことを経験してきたからこそ、よさのWSTでは「自分が持っているスキルを全てお伝えしたい」とおっしゃいます。

--自分でものづくり・販売・流通までできれば、織物で食べていけるという認識が広がるのかもしれない。

実は、柴田織物の製品はあのハリウッド映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」に登場する、舞妓風のキャラクターが着用している帯にも使われているというので驚きです。

「田舎にある家族経営の小さな工場から世界に通じる仕事をやっているのがおもしろい」と語る柴田さん。近年では世界的有名ブランドに卸している職人もおり、職人業界にも新たな風が吹きはじめています。

昨年のプログラムは、「CGSフォーマット」と呼ばれるシステムを活用しながらオリジナルのデータをつくり、織り・染めの工程を実際に行い、代官山で開催されたバイヤー向け展示販売会に参加するという内容。
タイトなスケジュールではありますが、ものづくり業界において、エンドユーザーの顔が見えることの必要性を感じてほしいという思いから、このようなプログラムに仕立てられました。
基本的には同じ流れですが、今回は日本橋で開催される「きものサローネ」へのブース出店が決まっています。新たな一歩を踏み出したい方はぜひ、応募を検討してみてください。

続いては、与謝野町の暮らしの魅力について、与謝野町地域おこし協力隊の江種里榮子(えぐさ りえこ)さんにお話を伺いました。

地域おこし協力隊として、移住者として。暮らしを通して感じる「与謝野町」の魅力とは?

京都市出身の江種さん。転職しようと思ったタイミングで、与謝野町の「地域おこし協力隊」の募集を見つけたのだそう。“これからまちで何かをつくっていこう” という地域のワクワク感に惹かれて移住を決意。
江種さんは現在、シルクや森林など与謝野町にある資源をもとに交流の場づくりや地域の仕事づくり、カフェ出店などに取り組んでいます。今年の10月で地域おこし協力隊に就任して3年度目・移住して2年目を迎えるそう。

与謝野町の魅力は何と言っても空の広さだと江種さん。100枚に及ぶイベント当日のスライドには、様々な角度から撮影した「与謝野の空」の写真がたくさんありました。
自然に囲まれているのはもちろんのことながら、特Aランク(※2)を取得したお米や新鮮な野菜、そして海鮮など山の幸・海の幸どちらも楽しめる食も豊かな地域です。

ほかにも、ひまわり畑や古代ロマンを感じられる古墳、ユニークな狛犬など、探検して見つけた地域の魅力がたくさんあるそうなので、よさのWST期間中にぜひお話を聞いてみてください!
(※2)特Aランク・・食味試験のランクは、複数産地のコシヒカリのブレンド米を基準米とし、これと試験対象産地品種を比較して基準米よりも特に良好なものを「特A」とランク付けている。(参照:日本穀物検定協会)

--何か「モノ」を通してまちを楽しんでもらう仕掛けづくりができないだろうか。

与謝野町で感じている魅力をもとに商品の構想を考えてみたり上のような絵を描いてみたりと、このまちで「地域と一緒に何かをつくりたい」という思いを就任当初からもっている江種さん。一緒に何かアイデアを考えてみるのもおもしろいかもしれませんね。

ちなみに江種さんは、与謝野町独特の話し言葉が “まろやか” で好きなのだそう。なかでも、びっくりした時に衝いて出る「まぁやぁ」という言葉と「良しとしよう」という意味をもつ「ええにしよ」という言葉がお気に入り。
「ゲ」とか「え゛」と思わず濁った音が出そうな時に不穏な感覚を含めない、柔らかく包む驚きだけの感嘆である「まぁやぁ」。また、いろいろ大変なことはあるけれど「ええにしよ」と収める物事を受け入れる懐の深さ。そんな地域だからこそ、少し不安もありますが “ここでやってみたい” という気持ちが自然と大きくなっていくんです、と締めくくられました。

柴田さん、江種さんのお話を通して、与謝野町はこれからますますおもしろい地域になっていきそうだという “期待感” が会場全体を包んでいきます。

そんな与謝野町の未来にも関わることができる「よさのワーキングステイ・トライアル 2017」。ここからは、昨年の参加者を交えたトークセッションの様子をお届けしていきます。

登壇してくれたのは、昨年柴田織物のプログラムに参加した織茂さんと松宮さん。(以下、敬称略)

-まずはじめに、お2人はなぜ参加しようと思ったのですか?

織茂:着物が好きだったので、どういう風に着物がつくられるのかを知りたかったんです。本当に「着物が好き」というだけで来たので、1日目は専門用語がいっぱい並んで難しかったです(笑)

松宮:わたしは現在、大学院で染織を学んでいます。卒業後の進路について漠然としたイメージしかなかったので、興味がある「織り」の現場を見に行こうと思い参加しました。実用品への応用等、織物のこれからを考えてみたくて。
技術を知りたい! 織りの仕事を知りたい! と思って参加したのですが・・何よりも柴田さんや地域の方々、そして参加者のキャラが濃くて(笑) そんなところも含めておもしろかったです。

-参加して気づいたことや印象に残っていることはありますか?

松宮:機械が織っているけれど、いろんなトラブルが起こることを知りました。その時「織物」に人が関わる大変さを身をもって感じたのを覚えています。

織茂:生地が織られている現場を見るのがはじめてだったので、楽しくてずっと写真を撮っていました。織物づくりは “人が関わってできる仕事” なんだと改めて感じました。

柴田:お2人が言ったように、ボタン1つで生地ができるわけではないのでほとんど手機と変わりません。同じ柄だったとしても毎回織っているものが異なるイメージです。糸の強さを見るのも「人」の仕事ですしね。

松宮:ほかにも、柄をつくっていく上で思った以上に工学的・数学的な部分を感じました。デジタルな部分、機械と人の分業、どういったプロセスで織物ができていくのかをすごく考えさせられましたし、同じものは二度とできないということがわかりました。

織茂:振り返ってみると、1日1日が本当にあっという間でしたね。9時から作業をはじめるのですが、夢中になってしまって22時を回ることもありました。ある意味強化合宿のような日々です(笑)
参加者もいろんな背景をもって集まった人たちなので、ついつい夜中の1時2時まで話が弾んでしまうことも。仕事はもちろんのことながら、人や地域との関わりを通して自分自身も成長できたのかなと思います。

-実際に体験してみた「与謝野町の暮らし」はどうでしたか?

織茂
:実際に住む人の目線になって滞在できたのがすごくよかったと思います。素敵なところはたくさんありましたが、徒歩や自転車の移動が楽しい一方で、車がないと現実的に少し大変だなと感じることがありました。滞在期間中に観光らしい観光は1日しかできなかったのですが、一度訪れたことでさらに地域のことを知りたくなりました。

松宮:わたしは「織物」がこのまちに根付いている産業なんだと感じました。例えば、家の格子が「糸屋格子」という織り屋さん独特の建築様式になっているんです。大学の中では学べないようなことを現場から学ぶことができました。それから・・地域の方が野菜がたくさんくださることにびっくりしました(笑)

-最後に「よさのワーキングステイ・トライアル 2017」への参加を検討されているみなさんにひと言お願いします!

柴田:今年は9月25日から14日間、同じように「デザイン〜販売」を体験するプログラムにしようと思っています。今回は、「きものサローネ」でブース出店を予定しているので、一般の方がお客さんです。

また、プログラムを通して人材発掘も考えています。会社の規模を大きくしていきたいタイミングでもあるので、年齢・性別関係なしに応募していただけると嬉しいです!

江種:先ほど会場にいる学生さんと話していて、地域や個人としても「よさのWST」に関われることに気がつきました。与謝野町内だけでなく、町外の方とも一緒に「与謝野町」をかたちづくっていけたらいいなと思います。

織茂:一度訪れるだけだとどうしても「いいところだったよ」で終わってしまいがちですが、わたしはこれからも四季折々の地域を見ていきたいですし、自分が感じる与謝野町の魅力を発信していきたいです。このプログラムをきっかけに「与謝野町」が気軽に訪れられる場所になったらいいなと思います。

松宮:よさのWSTには、地域の暮らしや伝統産業を “異なる視点から見ることができるおもしろさ” があると感じています。実際に訪れて地域の営みを体感することで、視野がぐっと広がるのでおすすめですよ!

「よさのワーキングステイ・トライアル 2017」募集開始しました!


与謝野町で地域の仕事や暮らしを14日間に渡って体験できる「よさのワーキングステイ・トライアル 2017」。今回もぎゅっと凝縮された濃密な時間が過ごせること間違いありません。

--その土地に長く息づいてきた地域の営み。

これまでの歴史を引き継ぎながらも新たなものを生み出そうとされている与謝野町のみなさんと一緒に、新たな一歩を踏み出してみませんか?

応募フォームはコチラです! みなさんのご応募を心よりお待ちしております。

▼染織編 紹介ページ
http://kyoto-iju.com/yosano-wst/?program=hataori

▼農業編 紹介ページ
http://kyoto-iju.com/yosano-wst/?program=nogyo

※その他のプログラムについても随時アップしていく予定です。

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